2013年03月22日発行 1273号
【未来への責任(122) 続く植民地支配の責任追及】
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2月23日「世界史の中の植民地責任―『慰安婦』問題の解決のために」、3月3日「東アジ
アに平和体制を構築するために―今問われる日本の植民地支配『清算』」に参加した。2001年ダーバン宣言以降、全世界で植民地支配が問い返され、韓国憲
法裁判所決定および大法院判決を経て日韓関係においても植民地支配責任が厳しく問われている。
前者では、東京外国語大学教授の永原陽子氏から日本以外の植民地支配問題が報告され、後者では、恵泉女学園大学教員の上村英明氏から先住民の観点を中心
に植民地支配問題が提起された。
上村氏は、いわゆる日本の「領土問題」―千島列島、独島(竹島)、尖閣諸島―について、日本の「植民地主義的拡張や帝国主義戦争に色濃く関係」するとの
認識が全く欠如していると強調する。先住民の観点からの問題の指摘は、私にとって貴重なものであった。
日本政府は「固有の領土」論を展開するが、千島列島にはアイヌ民族が居住していた。1855年日露和親条約以前は、日本政府はアイヌを「夷人」(「尊王
攘夷」のように「夷」は外国人をさす)としていたのだ。尖閣問題では、「琉球王国」を武力で廃絶し併合したことがすっぽりと抜け落ちている。琉球王国を最
終的に廃絶したのが1879年の「琉球処分」であり、日本は陸軍400名、武装警官150名を動員して王宮に軍を進め、「琉球藩」を廃止し「沖縄県」を設
置した。1885年1月尖閣の領土編入宣言以前の琉球処分こそが問題であり、先住民の観点からの解決が必要と強調された。
永原氏の講演では、植民地支配の犠牲に対する法廷闘争などが今なお諸外国で続けられていることが明らかにされた。(1)ドイツ植民地支配下のナミビアで
の「ヘレロ」「ナマ」等諸民族に対するジェノサイド的な鎮圧戦争(1904~1908年)について、2001年ニューヨークの裁判所に200人のヘレロが
集団提訴して研究が進んだ。植民地戦争下の虐殺、強制労働、性奴隷化等の実態が明らかになり、04年ドイツ政府は謝罪し「基金」を設け、事実上補償を実
施。11年には遺骨返還も行われた。(2)インドネシア独立戦争中のオランダ軍による虐殺(1947年)に対し、生き残った1人と未亡人8人が2008年
に提訴。11年には「事態の重大さに鑑み」時効規定の適用除外を認め、オランダ政府に補償を命ずる判決が出された。その年の追悼式典にオランダ大使が出席
し、事実を詳細に明らかにした謝罪と補償を行った。(3)1950年代の英支配下のケニアの土地解放運動への弾圧では、2009年5名の犠牲者が提訴。
11年に裁判所は訴訟成立と判決し、12年には補償請求権を認める判決を下した。
他にも事例はある。今なお、植民地支配は問われ続けている。ダーバン宣言に対する米英仏等の旧宗主国の妨害にもかかわらず、植民地支配責任を問う闘いは
絶えることがない。
(グングン裁判の要求実現を支援する会・御園生光治)

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