●油脂の種類【1】・・・原料による分類
それでは、その油脂にはどんなものがあるのかというと、一番代表的なものは、大豆油。
それからお馴染みなのが菜種油。菜の花に実が生り、実を絞ると菜種油が採れます。これは40%ほど油分があります。家庭でも菜種を圧搾で絞ると、いい油が出てくる。僕が小さいころは田舎の自分の家で菜の花を栽培して、菜種を採り自分の家で絞って使っていました。
それからヤシ油。高い木の上のほうにボツボツと大きい実が生ります。その実の中に果肉がありまして、これを絞るとヤシ油が出来ます。この油分は60%ほどになります。実は太陽油脂の工場でも、40年前まではヤシの実を輸入して、実際に圧搾して絞っていました。ところが35年ほど前に、フィリピンではヤシの実の輸出をしなくなり、搾油した油だけを輸出するようになりました。それ以後は、油になった状態で入ってくるので、この工場では精製といいまして、パーム油(食用)・パーム油の原油脱臭したり、脱色したりする工程からスタートします。
こんどはパーム油。ヤシの樹と似ているのですけれども、ヤシの樹よりちょっと背の低い木に生っております。たくさんの実がついた房が採れます。これは毎月採れるので、年12回採れます。大豆は年1回、多くて2回。小麦でもお米でも、二期作と言いまして、2回採ることは出来ますが、このパーム油は年12回採れるというふうになっています。今月はここに1個生って、翌月ここに1個生って、また翌月ここに1個生って…と、だんだん上に上がっていくかたちで生るわけです。毎月1個、一本の木から採っていくので年12回採れます。そうしますと単位面積当りの油脂収量は、大豆に比べて、だいたい12倍になります。最近では大豆とか菜種よりも、こういうパーム油のほうが非常に増えだしました。特に世界の食料を賄うためには、同じ土地面積で12倍採れたほうが良いという事で、この暖かい東南アジア、特にマレーシアという国では大量に栽培されています。1個1個が回りに果肉があって、中心に種があって、その中からもまた油が採れます。果肉から採ったのを、パーム油と言います。種の中にあるのは、パーム核油。どちらも約50%油が採れます。
これが、パーム油の原油です。こんな真っ赤な色をしております。この赤い色が残ったまま“パーム油”ということで売っているところもありますが、赤い物質を取って、普通の食用パーム油としても使われています。
また、ひまわり油はひまわりの種から、コーン油はとうもろこしから採ります。
植物油脂で、日本でただ1つ大量に採れるものは、米ぬか油、または米油というものになります。米ぬか(胚芽)の中から20%ほど油が採れます。
それから特徴のあるものでは、カカオ脂。チョコレートなどに使われるカカオ脂、又は、カカオバターといわれるものです。カカオの実から、またこれも50~55%ほど、油が採れます。これは他の油と違っていまして、体温と同じくらいになると溶けて、それより低いとカチカチに固まる。そうしますと、チョコレートというのは硬いですけれども、食べた瞬間にトロリとちょうど溶ける、そういう性質になります。
まとめますと、油脂には種から採れるもの、果実から採れるもの、種の核から採れるもの、胚芽から採れるもの、というのが植物油脂の種類。それから、植物以外に動物油脂もあります。牛の脂肪をヘッド、豚の脂肪をラード、それから魚を焼くとボタボタと滴り落ちる魚油、あるいは昔、鯨が日本で捕れていたときは、鯨油というのが使われておりました。そのほかに、牛乳からでる乳脂肪があります。
■植物油脂 |
種子油 |
大豆油、菜種油、ひまわり油、綿実油、 サフラワー、アマニ油 など |
果実(果肉)油 |
パーム油、オリーブ油 など |
核油 |
ヤシ油、パーム核油 など |
胚芽油 |
コーン油、コメ油 など |
■動物油脂 |
動物脂 |
牛脂(ヘッド)、豚脂(ラード)など |
海産動物油脂 |
いわし油、ニシン油、鯨油 など |
乳脂 |
牛乳脂肪(バター) |