「絶対にマネジメントは嫌だ」と言ったんです(笑)
――ご多分に漏れず私もLINEのヘビーユーザーなのですが(笑)、まずLINE Fukuokaさんの事業内容を教えていただいてもよろしいでしょうか。
上野 ありがとうございます。ご存じの通り、LINEはコミュニケーションアプリが中核事業としてあり、今はFinTechやAIにも力を入れ始めているところです。その他にも「ファミリーサービス」と呼ばれる、LINE占いであったりLINEバイトといったメッセージアプリと連携しているサービスもあり、LINE Fukuokaではこれらの開発などを行なっています。
――上野さんご自身はどのようなお仕事をされているのでしょうか?
上野 LINE Fukuokaの開発三室の室長で、約30名のエンジニアのマネジメントを主にやっています。エンジニアが快適に力を発揮できる環境作りや、優秀なエンジニアに来てもらうための採用面の仕事などもやっています。
――ご自身が、エンジニアとしてコードを書かれることはあるのでしょうか?
上野 現在は、仕事ではほとんど書いていません。今年の1月から室長になったのですが、それ以前はLINEの一般ユーザーがスタンプやテーマを作成して販売できるLINE Creators MarketというサービスのシステムをPerlで書いていました。2015年に入社して3年くらいはエンジニアとしてコードを書いていました。エンジニア自体を始めたのは比較的遅くて、27才くらいからこの世界に入っているので、歴は約11年です。
――エンジニアの方は年次を重ねると、マネジメントの方に転向するか現場のエンジニアとして残るかという決断を迫られることも多いようですね。
上野 うちの会社はキャリアパスとしてエンジニア1本で行くのかマネジメントで行くのか、どちらでもステップアップしていけるシステムになっています。ただ、僕は元々「絶対にマネジメントは嫌だ」と言っていたんですよ(苦笑)。去年の終わりくらいに、マネジメントをお願いしたいという話をされたときもそうで。そこから一週間くらい考えまして、「新しい機会は、準備ができている人にしかやってこない」と考え、飛び込むことにしました。
――マネジメント側に転向されてから、手ごたえはいかがですか?
上野 正直まだ掴めていないところがあります。元々は私自身がゴリゴリのエンジニアだったので、彼らが考えていることはある程度わかりますし、技術的な探求心・好奇心も理解できます。不満が上がってきたら、できるだけ吸い上げたいです。そういう意味で、彼らに寄り添えてはいるのかなと思います。
――エンジニアの方から上がってくる要望は、どういったものなのでしょう?
上野 「もっとチャレンジしたい、そういう環境をくれ」といったポジティブな話題が多いです。基本的にそこまで不満は上がってこないですね。
――今後のマネジメントとしての理想像などはありますか?
上野 エンジニアとしてのバックグラウンドがしっかりないと、エンジニアたちはついてきてくれないと思っています。なのでマネジメントのスキルを伸ばすのはもちろんですが、コードを書く機会はなくても新しい技術をキャッチアップして、エンジニアと同じ目線で課題を見られるようにしたいと思いますね。できるだけ一次情報を集めたり、時間があったら試してみたりということはやっています。
――将来的にエンジニアに戻りたいという気持ちはありますか?
上野 今はないですが、将来的にその可能性はあります。最初に室長になるときに、「またエンジニアに戻るかもしれないけどいい?」と話したところ、「いいよ」ということだったので(笑)。マネジメントとエンジニアのキャリアパスが並行しているので、両立できる人はできるし、復帰もできるということですね
「致命的にデザイナー向きじゃない」と言われ、プログラマーの道に。
――過去のご経歴を伺います、まずは学歴から伺えますでしょうか。
上野 福岡教育大学出身です。全く理系ではなく、文系出身です。ぼんやりと「教師になろうかな」と思って大学に入ったのですが、1年生のときに先輩の実習を見に行く機会があり、すごく堅い雰囲気を感じて。悪いとかそういう話ではないのですが「自分には向いてない」と思い、早々に教師の道は諦めました。だから、教員免許も取っていないです。大学は2回留年して6年間いました。
――ご卒業後、どちらに行かれたのですか?
上野 派遣で、当時のガラケーのメーラーを作っている会社にテスターとして入りました。「フリーターで生きていけないかな」と思って。パソコンが好きだったので、パソコンに近い環境がいいかなというぐらいの軽い気持ちでした。そこには結局、6カ月ぐらいしかいなかったと思います。真面目に働かなかったので(笑)契約満了になりました。そこからしばらく実家に戻って、西鉄バスの電光掲示板の機械を取り替えるバイトをやっていました。3年ぐらい、そんな感じでいろいろなことをやっていましたね。
――27歳ころまで、フリーターのような形だったんですね。その後どのような転機があったのでしょうか。
上野 27歳のときに、いつまでもフラフラしていてもダメだと思って、「WEBデザイナーになろう」と思ってバイトの面接に行ったんです。そこで作ったものを見せたら、「君はデザイナーに致命的に向いていない、感性が人と違いすぎる」と言われてしまいまして(苦笑)。
ただ、同時に「プログラマーとしては向いているかもしれない、バイトでやってみるか?」と言われて。それがプログラミングとの出会いです。そのときは特にプログラミングが楽しいとは思っていなかったんですが、その職場にいた先輩との出会いが大きかったです。
僕の中でのプログラマーのイメージは、ちょっと暗くて、オタクっぽくカタカタやっているというネガティブなものでした。でも、先輩はクライアントにもガンガン物申していて、すごくカッコよく感じて。それがきっかけでプログラマーになりたいと思うようになりました。その先輩は、実は今の会社でも同僚です。
――その後は、どちらに行かれたのでしょうか。
上野 社員として小さな受託WEB企業に行って、プログラマーとして働いていました。ここも1年くらいですね。この後も、プログラマーとして3社ほど転々としました。LINE Fukuokaに入る直前にはピザ屋の社内SEをやっていて、実店舗のPCやプリンタの様子を見に行ったりといった仕事もやっていました。
――LINE Fukuokaに入られたのは、どのような経緯だったのでしょう?
上野 何社か転々としていたんですが不完全燃焼感があり、「大きな会社に入ったときに自分の価値はどうなるのだろう」というところを試してみたくなりました。何社か受ける中でLINE Fukuokaも受けたところ、内定をいただきまして。入社までにテスト2回と面接2回があり、コンピューターサイエンスの基礎的な部分やコーディング、プログラミングの課題への対応や、時事問題などを問われました。面接では、興味関心や勉強の仕方などを話しましたね。
――業務を行なう上で大事にしているモットーや好きな言葉はありますか?
上野 誠実でありたいというか、変な隠し事はしたくないと思っています。技術に対してもそうで、例えば調べ物をするときブログ等は個人の意見なので偏りがあり、書き手があまり好きじゃない技術に対しては主観が入っていたりするので、そういうものだけを見て情報を集めないようにしています。広い意味で公平さ、誠実さというのは大事にしたいと思っています。
――ご自身の成長のために日々行なっていることはありますか?
上野 子どもがまだ小さいので時間がなかなか取れないのですが、情報のキャッチアップは絶対にするようにしています。ハッカーニュースから情報をピックアップしておくとか、気になるワードや面白そうな技術が出てきたと思ったら、公式まで見に行くとか。
時間がありそうならローカルに環境を作るなど、手を動かしています。子どもは1歳5カ月で、朝は基本的に妻と一緒に子どもの準備をしています。なので、会社で「ちょっと仕事で疲れたな」と思ったら小一時間やったり、家に帰る前にちょっとキャッチアップの時間を作るようにしています。家族との時間はちゃんと確保したいので、家ではなるべくやらないようにしていますね。
――話は逸れるのですが、LINE Fukuokaさんではリモートワークは取り入れられていないのでしょうか?
上野 基本的には、会社に来て仕事をするというスタンスですね。一番大きいのは、フェイストゥフェイスのやり取りの方が、情報量が格段に多いということです。会社としては、みんなが会社に来ることで集中できる、仕事がはかどる環境づくりをしていこうという方向ですね。もちろん、特殊な事情については対応することは可能です。
――エンジニアから、リモートワークをしたいという要望が上がってくることはあるのでしょうか?
上野 そうですね。LINE Fukuokaにはエンジニアが100名弱いるのですが、6割くらいは外国人で「急きょ帰国したい」といったケースもあるので。子どもの看病などもありますし、そういった場合はもちろん対応できます。とはいえ、「休めるなら休んでね」となりますけれども。
マネジメントにも、最低限の専門性は必要。
――ここからは、上野さんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「会社愛」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。
・専門性向上 4
今はマネジメントをしていますが、自分はエンジニアだと思っているので。専門性の向上だけはずっと大事にしていきたいです。ここが止まってしまうとエンジニアとして成り立たなくなるし、最低限の専門性を持つということはマネジメント業にも必要だと思っています。
・仲間 4
あまり同僚とプライベートで仲良くするタイプではないんですが、一人で仕事をするわけではないので。刺激をくれる同僚、仲間がいるというのは自分の成長にとっても良いし、働いていて楽しいです。
・お金 3
大事ですね。この業界で、今の自分にどれぐらいの価値があるのかを表す一つの指標だと思うので。低くても何でもやりますというのは、その前提が崩れてしまいます。あと、自己投資の意味でも大事ですね。ガジェットなどを試したいと思ったらポイッと買うのは、昔に比べるとできるようになってきました。
・事業内容 4
ワクワクして働きたいです。会社がやっていることにどれだけ共感できて、どれだけワクワクしているかはすごく大事だと思います。
直接関わってはいないんですが、うちはFintechに力を入れ始めていて、その辺の未来はすごく楽しみだと思っています。それを作る一端を担えるのはやる気にもなりますし、その分野に絡むエンジニアを輩出していきたい気持ちもあります。あるいは、マネジメントをやめて僕自身がそっちに行きたいとなるかもしれないです(笑)。いろいろな事業が社内にあるので、興味は尽きないですね。
・働き方自由度 3
自分はそんなに自由度を求める方ではないと思うのですが、今の会社だと何時に来て何時に帰るという部分には完全に裁量があります。性善説的な信頼に基づいて、「自由をもらう代わりに結果は出す」という形が良いと思います。
・会社愛 2
もちろんあるんですけど、6社くらい転々としている身なので(笑)。会社と従業員はフラットな関係がいいと思うので、ヘンに会社愛を求めたり不平等だったりというのはどうかなと思います。
――最後に、転職を志す方にメッセージをお願いします。
まずはチャレンジしてほしいです。自分が思っているほど自分の力は低くない、ということはよくあるので。うちの会社もそうですが、イメージだけで「難しいんじゃないか」「無理なんじゃないか」と思うかもしれないけど、そんなことはないんですよ。「したいな」と思ったら即行動、飛び込むべきだと思います。
<了>
ライター:澤山大輔
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