有害な上司を持つ人がとるべき
10のアプローチ
管理職研修がこれだけ多くの企業で実施されているにもかかわらず、有害な上司は至る所に存在する。そうした上司から受ける身体的・精神的な悪影響はとても大きく、そこから立ち直るには最長で22ヵ月を要するとも言われている。本記事では、いまの会社に留まりながら現状を解決する5つのアプローチと、退職を決断した際に取るべき5つの具体的な施策が示される。
米国では、企業が管理職とリーダーシップの開発に年間150億ドルを投じているにもかかわらず、悪しき上司はそこら中にいる。コンサルティング会社、ライフ・ミーツ・ワークによる調査によれば、米国の労働者の56%が、自分の上司はやや、あるいは非常に有害であると訴えている。米国心理学会(APA)の調査では、米国人の75%が「仕事をしている日に最もストレスを感じる対象は上司である」と回答している。
また、ギャラップの最近の調査によれば、従業員の2人に1人は、「自分のキャリアのある時点で、上司から逃れるために」仕事を辞めたことがあるという。
けれども驚くべきことに、有害でない上司の下で働くよりも、有害な上司の下のほうが最終的には勤務年数が長い(平均で2年)ことが、別の調査から明らかになった。その理由を以下に説明しよう。
辞めるのはしんどい
好まざる上司の下に留まる理由は複数ある。20年間に及ぶ組織のコンサルティングとコーチングの間に、私がもっともよく耳にした理由のいくつかは、以下の通りだ。
・新しい仕事を探すエネルギーがない。
・いまの仕事/同僚/通勤場所は本当に好きだ。
・私には給与が必要。給与額の減少に甘んじる余裕がない。
・他にもっとよさそうな仕事がない。
・手当を失いたくない。
・いまの組織に多くのものをつぎ込んでしまっているので、いまさら新しい組織で一からやり直すことはできない。
・いまの仕事は報酬がよいので辞められない。
・違う仕事に就くようなスキルがない。
・そのうち事態は好転するだろう。
上記の言い訳の多くは、もとを正せば人間の基本的な精神の働きに行きつく。人は強いストレスを感じる状況に置かれると、往々にして精神的な消耗を経験し、新天地を探すのに必要なエネルギーが奪われてしまう。別の好機が待っているのでなければ辞めるのは困難であり、消耗したと感じているときに、別の好機が訪れるよう準備するのは難しい。精神的消耗はまた、人がもっとポジティブな経験を思い描く能力も奪い、あとには絶望が続く。
自分が手にしているものをなかなか手放せない、もう1つの心理的過程として、「損失回避」がある。人には、努力して手に入れたものを必死で維持しようとする傾向がある。職場の場合には、給与、地位、安定、年功、社会的なつながりのほか、長年にわたり蓄積してきたすべての便益が当てはまるだろう。
加えて、「非常に有意義な」仕事に携わっているときには、有害な状況に留まることが研究から示されている。つまり人は、自分の仕事に思い入れがある場合には、ひどい扱いをする上司の下で働いていたとしても、職場に居続けるのだ。
最後に、人は、意地の悪い上司が態度を変えるだろう、組織が何らかの手立てを取ってくれるだろう、事態は良くなるだろうと、望みをつなぐこともある。
職場に留まることは、辞めるよりもはるかに安心であるように思えるかもしれないが、実際には多くのリスクがつきまとう。
スウェーデンの男性従業員3122人を対象とした研究によれば、有害な上司の下で働いている人は、心臓発作、脳卒中、その他の生死に関わる心臓疾患にかかる可能性が60%高かった。米国の職場における別の複数の研究からは、有害な上司を持つ人は、慢性ストレス、うつ病、不安になりやすく、これらはみな、免疫系の低下、風邪、脳卒中に加え、心臓発作のリスクをも高めることが明らかになっている。
有害な上司の影響から身体的・精神的に立ち直るには、最長で22ヵ月を要することが、複数の研究により示されている。辞めるのは恐ろしいかもしれないが、有害な上司の下で仕事に留まるという現実は、もっと恐ろしいことになる可能性があるのだ。
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