ペロロンチーノの災難   作:善太夫
<< 前の話 次の話 >>

10 / 14
王国Ⅱ~キーノという少女~(後書き…番外編 パンドラズ・アクターLV100)

このところペロロンチーノは酒場でキーノという魔術師の少女とちょくちょく会う事にしていた。

 

 

彼女は年の頃はだいたい十代半ばくらい、ペロロンチーノの現在の外見が同世代の少年に見える―ツャルティア・ブラッドフォールソは“ペタンコ”に設定していたので髪を切って男装していただけで美少年にしか見えなかった―からか何度か会ううちに親しくなった。

 

 

どういう訳か彼女―キーノ―は王国のアダマンタイト冒険者の知り合いがいるとかで、あの、“黄金の姫”に謁見した事もあるらしい。

 

 

将来の“黄金の姫”攻略の重要なキーマンとなりそうだ。

 

それとは別にキーノに驚かされたのが彼女の情報通な面である。

 

 

 

彼女と話すきっかけは、バーの片隅の席で熱心に土地の新聞みたいな物を読んでいたので、何か変わった事が載っていないかと気軽に声をかけたのが始まりであった。

 

 

決してナンパではない。

 

 

正直なところペロロンチーノにはそんなゆとりも甲斐性もないのだった。

 

 

彼女に話かけた事を後悔したのはそれからしばらくしてからだ。

 

 

ペロロンチーノがエ・ランテルから逃げて来た事を知ると途端に彼女は饒舌になった。

 

 

『え?エ・ランテルから?じゃあ最近アダマンタイト冒険者が誕生したみたいだけど、本当なの?なんでも.十三英雄に 匹敵するという“漆黒”のモモンって本当に強いのか?』

 

周りの客達が彼女を見ていた。

 

見ようによっては若いカップルの痴話喧嘩に思われなくもない。

 

興奮気味な彼女を落ち着かせる為に互いの自己紹介をする事にした。

 

 

ヘンな女―キーノに対する印象はまさにその一言に尽きる。

 

歳の割にやたらと情報通で博学なのにちょっと非常識な部分がたまにある。

 

 

たまに古臭い言い回しをしたりよくわからない例えをしたりする点を除いたら良き友人足り得た。

 

 

エ・ランテルのアダマンタイト級冒険者についてはペロロンチーノがそれらしい人物を街で見かけた位しかない事を知ってあからさまにガッカリしていたが、ペロロンチーノがエ・ランテル共同墓地で沢山のアンデッドを見て慌てて逃げてきた事を話すと彼女は興味を持ったようだった。

 

 

『…そうか。ふむ。エ・ランテル共同墓地での事件だな。数千ものアンデッドや二体のスケリルドラゴンの話も真実らしい。』

 

 

ペロロンチーノは逆にキーノからあのエ・ランテル共同墓地での事件について教えてもらった。

 

 

『首魁はおそらくはズーラーノーンという組織だろう。かの“漆黒”はこの事件で数千ものアンデッドの大軍を突破し二体のスケリルドラゴンを倒し、ズーラーノーンの幹部を倒したらしい。…その後にもホニョペニョコという強力なヴァンパイアを倒した功績でアダマンタイト冒険者になったそうだ。いったいどんな人物なんだろうね?』

 

 

ペロロンチーノはその“漆黒”という冒険者にはあまり興味がなかったが、もう少しエ・ランテル共同墓地での出来事について知りたかったので聞いてみた。

 

『その、ズーラーノーンとはなんです?』

 

彼女の尊大な態度からついついペロロンチーノは敬語を使ってしまう。

 

 

 

『うむ、ズーラーノーンとはまあ、秘密結社みたいなものだな。今回、魔術儀式を行ってアンデッドの大軍に街を襲わせた首魁の二人は幹部だと思われるらしいが死体はなくなったそうだ。』

 

 

ペロロンチーノはお尻がもぞもぞするような居心地悪い感触を我慢しながら、意を決して聞いてみた。

 

『……そういえば…そこにヴァンパイアなんかが現れたって噂ありませんか?』

 

 

 

 

『ああ…確かホニョペニョコとかいうヴァンパイアだな。その後“漆黒”に倒されたそうだぞ?他に片割れのホニョペニョットというのがいるらしい。』

 

 

ペロロンチーノはキーノの答えに混乱した。

 

 

(えー…?よくわからないがなにがどうなってんの?……そのホニョペニョなんとかに俺は間違われたって事らしいな。えっと、ホニョペニョなんとかは倒されてホニョペニョなんとかはまだいるって事なのかな。)

 

 

『ところで、この王国の六腕について、何か知っていますか?』

 

 

ペロロンチーノは本題にはいった。

 

と、キーノの表情が微かに厳しくなったような気がした。

 

 

 

『…ヤツらか。ヤツらはクズだ。』

 

 

 

(確定した訳ではないが、クズだなんて、もしモモンガさんやたっち・みーさんだとしたら何やってくれてんのよ?一体!)

 

 

 

ペロロンチーノの前途は暗そうに思えたのだった。

 




※  ※  ※
番外編 パンドラズ・アクターLV100
※  ※  ※



パンドラズ・アクターは宝物殿に配置されている。


彼は創造主たるモモンガによって無類の宝物好きに設定されていた。


モモンガの『自分の好きなものに囲まれていたら幸せだろう』という思いやりからだった。


そして趣味は宝物殿にあるデータクリスタル磨き。


しかしながらパンドラズ・アクターは地獄の苦しみを味わっていた。


『…磨きたい…』


いくら設定しようが所詮拠点NPCはオブジェクト扱いである為、自ら動く事は出来ない。


彼にとっては手にしたい宝物や磨きあげたいデータクリスタルが眼の前に唸るほどあるのに、手を伸ばし触れる事すら出来ないのだった。



まさに地獄。



ユグドラシルサービス終了の時、ようやく地獄から抜け出せる、その時まで。



※  ※  ※







※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。