Nikon D4Sから考えるミラーレス一眼ではなく低画素一眼レフをメイン機にしている理由
フルサイズミラーレス一眼がスタンダードとなる時代になりました。
軽量小型、高画質、露出やピントの確認が楽なEVFなど、一眼レフでは実現できない性能向上のアドバンテージが大きくこれから一眼レフは少なくなり、ミラーレス一眼が増え続けるでしょう。
そんな中、私もミラーレス一眼であるFUJIFILMのX-H1を導入していますが、それでもメイン機はNikon D4S。スペック面ではアドバンテージの大きいミラーレス機が市場にある中でなぜ一眼レフをメインにしているのか。
それを発売日から使い続けているNikon D4Sをミラーレス一眼のX-H1と比較しながらレビューします。
最初に結論を出しておくと、そちらの方がいい写真が撮れるからです。
この記事の目次
過酷な環境で壊れない堅牢性
D4Sに限らずニコンのフラッグシップ機はとにかく「壊れない」こと。土砂降りの中であろうとブリザードの中であろうと8000m峰の頂上だろうとエラー1つ吐き出さない圧倒的な信頼性。
これが今でもニコンの一眼レフフラッグシップを使い続けている最大の理由です。
逆にミラーレス一眼は構造上の問題で電子部品も多いので一眼レフに比べてどうしても極地での耐久性に不安があります。
今年の春発売したFUJIFILMのX-H1ではデータを取っていませんが、私たちがよく行うストレステストがあります。
- 極寒地で撮影する
- テントの中に入れて結露させる
- そのまま外に出て結露を凍結させる
これでも動くかどうかを1つの目安にしています。本来ならテントの中に撮影機材を入れないで結露させないほうが機材の保護の観点からすると安全なのですが、ネイチャーフィールドではそうも言ってられないことが頻発するので、ワークフローの中で想定しうる一番シビアな使い方が上記になります。
結果として現在のミラーレス一眼は良好な成績ではありません。
私がNikon D4Sを使っている最大の理由、それが「極地で壊れない」。
その実証データと経験値が豊富にあるからです。
しかしシビアな環境を想定して開発されているFUJIFILMのX-H1や、最近開発発表されたPanasonic LUMIX S1シリーズは極地での撮影を想定し検証しながら開発をしているとのことで、これからのプロユースのミラーレス一眼への期待が高まります。
この問題がクリアできたら一眼レフを使い続ける理由がほぼなくなります。
ポイント
- 一眼レフ機は過酷な環境でも壊れにくい
- ミラーレス一眼の堅牢性はまだこれから
高画素機を必要としていない
NikonD4Sは1600万画素。最近のAPS-C機よりも低画素です。しかし今だにそれで困ったことがありません。手ブレ・露出ミス対策としてブラケット撮影を多様するのでむしろ画素数は高すぎない方が私の使い方に合っています。
ちなみにプライベートで撮ってきたフリー素材はPAKUTASOで公開しています。その多くがD4Sで撮影した写真です。
誤解がないように言っておくと、基本的には画素数はあるに越したことはないと考えています。
しかし現実問題として連写性の低下やバッファ、記録メディアの容量の圧迫、プレビュー表示が遅い、高品質レンズによる解像が必要、レタッチ作業が遅くなる…などトレードオフな関係になるものがたくさんあります。
高画素機でしかできない表現もありますので、そのような被写体や撮影手法の方には必要不可欠なものですが、私自身はそれを最優先にするほどの必要性を感じたことがありません。
たしかに高画素機で撮影した写真はLightroomで等倍鑑賞したりするとうっとりするくらい甘美ですが、仕事で写真を撮っているとそれは自己満足の世界であって、クライアントに求められていないことであったりもします。
写真の編集から納品までを考えた上でのシステムで考えなければなりません。
実際私のいる市場では低画素であることが写真の品質として考えることはありませんし、日本でも多くの雑誌やメディアに写真を提供していますが画素数が話に上がったことはありません。
業界にもよりますが私が仕事をしてるネイチャーフォトに関してはこんなものだったりします。画素数と写真の品質は別の問題です。
高画素が求められていないならば低画素のメリットを活かして連写・撮影枚数を確保できる上に、RAW現像時もPCへの負荷が小さいため高速で行うことができます。
ニコン・キヤノンのフラッグシップボディが2000万画素辺りで出ているのも全方面的な意味でとてもバランスが良いと思います。
よって低画素であることが私にはメリットにあることが多く、今だにD4Sを愛用している理由の1つです。
ポイント
- 高画素機にはメリット・デメリットがある
- 私の仕事では高画素機はデメリットが多い
大型ボディならではの操作性
Nikon D4Sをはじめとする一眼レフのフラッグシップ機は他機種におけるバッテリーグリップに相当する部分が躯体設計の段階で組み込まれています。
そしてここにボタンや液晶をつけることで操作性が他機種の追随を許さない完成度を誇ります。
撮影に必要な設定のすべてをメニュー画面を開くことなくボタンを押す+ダイヤル操作の2つだけで完結できるようになっています。それを厳冬期の山でグローブを付けたまま行えるのが一眼レフのフラッグシップモデルの魅力。
大きいボディにはそれに見合う操作性の良さがあります。
現状のミラーレス一眼を見る限り、グローブを使用しての操作感が優秀と言えるものが多くありません。ボタンを押してメニューを表示してから選択する手法は厳冬期冬山には向かない仕様です。
ポイント
- 大きいボディは操作性がよい
- ミラーレスは設定操作が複雑で山では使いにくい
ネイチャーフィールドで必要とされる操作性
一言でいうとグローブを付けてブラインドで操作して撮影の設定ができることです。最低でも絞り優先でF値とISO感度はダイヤルの感覚で合わせられること。
メイン機に据えるなら、マニュアル操作に加えて撮影モード(M・A・S)と測光モードに切り替えが画面の確認なしで可能で、連写とブラケットの設定ができないと辛いです。
風景を見ながら両手をボタンとダイヤル操作し、ファインダーを覗いてシャッターを切るだけという作業ができないとパフォーマンスが落ちてしまいます。
ポイント
- 山岳写真ではグローブ着用時の操作性は重要
- ミラーレスは現状操作性が良いものが少ない
Nikon D5を使わないのは操作性の違和感を回避したから
カメラのスペックで写真の品質が左右されない仕事をしているので、最も大事なのが以下にスムーズに撮影体制に入れるかということ。
よって私を含め、私のチーム全員がカメラの性能よりもカメラ操作の習熟度を優先させます。
カメラのスペックが良くても使いこなすためには相応の時間がかかり、その間はパフォーマンスが落ちますので総合的に考えていい写真が撮れる方を選びます。
結果としてD5に乗りかえても慣れるまでに低下するパフォーマンスを補うだけの新しいテクノロジーを感じなかったため乗り換えませんでした
もちろんスペック面ではD5の方が良いので、初めてこの手のカメラを手にするならそちらの方がよいかと思います。
ポイント
- カメラはスペックよりも操作の習熟度が大事
ミラーレス一眼の強みは山岳写真で活かしづらい
一眼レフユーザーがミラーレス一眼に乗り換えて感動する技術革新は面AFポイントとEVFの2点が上げられます。
ミラーレスのセンサー全面AFは山岳写真でのメリットが少ない
とくにセンサーの大部分でオートフォーカスできるのは中央にAFポイントが集中している一眼レフでは無理なものです。
動体を撮影したり、ポートレート・ブライダルでも強みになります。もし私がその分野を專門にしていたら真っ先にミラーレスに乗り換えていたかもしれません。
しかし残念ながら被写体が動かない山岳写真においてオートフォーカス性能はワリとどうでもいい性能の1つです。
三脚を使うシーンではマニュアルフォーカスですし、朝昼の露出でAFが取れないこともないのでAF性能で10年前のカメラから困ったことがありません。
OVFとEVFは好みが分かれる
ミラーとペンタプリズムを使用して自分で目と同じものが見えるOVFと、センサーが受け止めた絵をデジタル信号化して表示するEVFでは撮り手の受け取る印象が異なります。
特にEVFは言ってしまえば液晶ディスプレイなので、カメラの設定によっては見た目とはかなり異なる見え方をします。
そこに違和感を覚えることが多く、さらにAFなどでカクつきが起こることもあるためストレスを感じることが少なくありません。
その反面ISO感度・シャッタースピード・絞りの組み合わせによる露出と被写界深度がEVFに反映されるため、それとほとんど同じ写真が撮れるというメリットがあります。
ただ露出に関しては一眼レフの経験が長ければEVFにそれほどメリットを感じないのではないかと思います。
好みが分かれるのはEVFに表示される絵が自分の見た景色とマッチングしてないとレタッチにまで引きづられてしまう点。X-H1でもそうでしたが自分が何を見ていたのかわからなくなるときがあります。
EVFを使う時は良くも悪くもその場で「どのような写真に仕上げようか」というビションを持っておく必要がありました。
逆にOVFは撮影後のプレビューではカメラプロファイルに引っ張られるものの、ファインダーを覗いた状態では見た目のままなので「あのとき私はこういう景色を見ていた」という感覚が残ります。
これは感覚的なものなので、どちらが優れているというわけはないと思います。私は今の所OVFの方がレタッチを考慮すると使いやすいと感じています。
一眼レフはバッテリーの持ちがよくトラブルが少ない
カメラの仕組み自体が違い、色々なところで電気を消耗するミラーレス一眼は一眼レフに比べてバッテリーの消耗が激しいです。
一昔前はミラーレス一眼は気温が低すぎると動かなくなるというトラブルもありましたが、最近のモデルはそれは解決されつつあるようです。しかし最新モデルでないものは厳冬期の山で使用する上で不安が残ります。
Nikon D4Sのバッテリーはどのような撮り方をしてもRAE+JPEGで2500枚くらいは安定して撮影できるため、タイムラプスの撮影をするときにバッテリー交換をする必要がなく安心です。
逆にミラーレス一眼であるミラーレスのFUJIFILM X-H1は条件が悪いと300枚程度でバッテリーが無くなるので常にバッテリー交換のタイミングを探さないといけません。
USB給電にも充電にも対応してるX-H1ですが悪天候の中、給電しながらの山岳写真の撮影は浸水リスクが高いため撮影のソリューションとしては美しくありません。
これはどのミラーレスでも言えることです。
α7シリーズを代表にミラーレス一眼のバッテリー性能の向上は素晴らしいので一般的な実用性に関しては気にならないレベルですが、撮影枚数やトラブルの少なさに関してはまだ一眼レフに軍配があがります。
ポイント
- 一眼レフはバッテリーが長持ちする
- ミラーレスは現状不安が残る
- USB給電は山では期待できない
次のカメラボディ探しに困っている
「そろそろ買い替えが方がいですよ」とD4Sをメンテンスするたびに言われます。マウントが変形するぐらいガタガタなので、あと1年も持たないかなと思っています。
しかし困っているのが昨今の一眼レフ事情。Nikon D5の後継機が出たら乗り換える予定だったのですがフルサイズミラーレスの影響で今までのフラッグシップの販売スケジュールを過ぎても一向に出る気配がない…。
現在の一眼レフ市場に堅牢性が高く最新のテクノロジーが搭載された低画素のフラッグシップ機というのがないのです。
ないものをねだってもしょうがないので、残される選択肢はD4Sの中古で揃えるか、D5にするか。または高画素機であるD850か新型のフルサイズミラーレスであるZ7/Z6か。
最優先するべきは堅牢性。ワークフローとして破綻がないなら高画素機を導入することに抵抗はないので最新のテクノロジーが詰まったレフ機のD850が有力候補で、次点でNikon Z7/Z6。
しかし各メーカーが一挙にフルサイズミラーレスに参入し新マウントになったため現在のFマウントにこだわる必要はありません。
マウントアダプタを使えばFマウントのレンズを使用できますが、アダプタは所詮アダプタ。
それが壊ればFマウントのレンズが使えなくなるのでリスクを回避するためにネイティブに使えるレンズを揃える必要があります。
そうなると大本命が100%シーリングでマイナス40度にも耐え抜く耐低温設計、ダブルスロット、かつシグマのレンズがネイティブで使えるLマウントのPanasonic LUMIX S1シリーズ。
しかし発売時期が未定なので悩みは尽きない大問題です。
山岳写真に関しては一眼レフの方が現状は使いやすい。けれどオススメしたいのはミラーレス一眼
以上のことから山岳写真の中でもシビアな環境で使うのであれば一眼レフ。操作性を求めるならそのフラッグシップ機。
私の仕事では高画素は求められておらず、さらにボディ操作の習熟度の高さという理由で着地しているのがNikon D4Sになります。仕事柄新しいカメラに触れる機会は多いですが結局ここに戻ってきてしまいます。
しかしミラーレス一眼を否定するものではありません。山岳写真において軽量化は安全面の観点からは推奨されるべきシステムですし、シビアな環境で撮影する特定の人以外は実用性で困ることは少ないと思います。
使えるボディであれば今すぐにでも乗り換えたいくらい。
それもあり現在発売しているミラーレス一眼で堅牢性をウリにしているFUJIFILM X-H1でテストを重ねています。
半年以上山岳写真を撮ってきた経験からクセの多いと言われているFUJIFILMのボディでも、ミラーレス一眼の撮りやすさと軽量システムの優秀さは感じています。
ですので趣味で山岳写真を撮るという人は一眼レフよりもミラーレスをオススメしたい。
仕事で山岳写真を撮影し、パフォーマンスの最大化と故障リスクを回避を目指すのが義務である人は現状一眼レフ。このようなものだと考えています。
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