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オンプレミスシステムの象徴のような存在だった銀行の勘定系システムがついに変わり始めた。パブリッククラウドの上で動く「クラウド勘定系」を採用する銀行が出始めた。FinTechを巡る新興勢との戦いや低金利政策に苦しむ銀行の救世主となるか。
「技術革新の流れを見れば、パブリッククラウドの採用はもはや当たり前だ」。ソニー銀行の福嶋達也執行役員は平然と言ってのける。同行は2018年10月、富士通のクラウド勘定系「FUJITSU Banking as a Service(FBaaS)」の採用に向けて具体的な検討に入ったと明かした。
勘定系の動作プラットフォームを富士通のパブリッククラウド「FUJITSU Cloud Service for OSS(旧K5)」に切り替えるとみられる。今はオンプレミスのLinuxサーバーを使っている。同時にアプリケーションも作り直す。稼働は2020年以降とする。ソニー銀行は富士通が開発中のクラウド勘定系の第1号ユーザーになる見込みだ。
ソニー銀行の危機感
新しい勘定系アプリケーションの第1号ユーザーといえば、一般的に開発が難航しがちだ。なぜソニー銀行はアプリとインフラという二重のリスクを負ってまでクラウド勘定系の採用に動く必要があったのか。それはFinTechの時代を見据え、新しい金融商品やサービスを迅速に投入するためだ。福嶋執行役員は「アプリケーションにまで踏み込んで刷新しないとシステムの生産性は高まらず、銀行の競争力を引き上げられない」と説明する。
今やインターネット大手を中心に異業種がAI(人工知能)などを駆使して金融サービスを手掛ける時代だ。競争相手は銀行だけではない。開発や保守に手間がかかる勘定系がボトルネックとなり、新商品やサービスの投入が遅れれば命取りになりかねない。まさに異業種からの参入だったソニー銀行でさえ、ITで後れを取れば劣勢になり得る。
富士通のクラウド勘定系は「SOA(サービス指向アーキテクチャー)」の考え方を取り入れており、預金・決済や貯蓄、ローンといった業務ごとにサービスとして提供できる。ソニー銀行は各業務を「部品」のように組み合わせて構築すればよい。富士通によれば、以前と比べて半分の期間で新しい金融サービスを投入できるという。
オンプレミスでの稼働を前提とした従来型の巨大な勘定系アプリと比べてシステム同士の結びつきは緩やかという。万一システムに障害が起こったとしても、影響範囲を狭くしたり、原因を特定したりしやすい。
コスト削減もクラウド勘定系を採用する理由の1つだ。一から勘定系を構築しようとすると数百億円規模の初期投資が必要になる。だが、富士通のクラウド勘定系なら必要な機能だけを選んで利用できるため、年数億円から使えるという。機能を追加しやすいのもパブリッククラウドならではだ。AIサービスなどと連携しやすい。オンプレミスとほぼ変わらないプライベートクラウドとの決定的な違いである。
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