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 「木村さんはいつも『スクラッチ開発した基幹系システムなど捨ててしまって、ERP(統合基幹業務システム)製品やクラウドサービスを導入せよ』と言っているが、それって外資系ITベンダーを利するだけじゃない」。最近、ある大手SIerの経営幹部にそう言われた。私からすれば「何言ってんの、このオッサン!」である。ただ、この手の嫌みは過去に何度か言われている。極めて不愉快である。

 嫌みを言われたから、不愉快なのではない。不愉快になる理由はまず、負け犬の言辞だからだ。こうした嫌みを言ってくる大手SIerは大概、自らもERPなどパッケージソフトウエア製品を開発しているし、少なくともカタログ上は販売している。クラウドサービスの自社提供もまたしかりだ。だが、自社の製品やサービスは外資系ITベンダーに完敗し全く競争力がない。つまり外資系ITベンダーを利する結果になってしまうのは、彼らの敗北ゆえである。

 不愉快になる理由の2つめは「SIerも外資系ITベンダーの製品やクラウドを使って商売しているのに何を言っているのか」と思うからだ。今やSIerは外資系ITベンダーの代理店として、ERPやクラウドを売りまくっている。その際、アドオン開発やカスタマイズなどの人月商売の工数を膨らませるコバンザメ商法にいそしむ。もちろんもうけが多いのは外資系ITベンダーとはいえ、SIerにとってそれなりにおいしい商売をしている。

 SIerの経営幹部らが嫌みを言ってくるのは、おそらく私が「可能な限りERPやクラウドをそのまま使え」と主張しているのが気に入らないのだろう。これが不愉快になる理由の3つめである。SIerはいつも「お客様ファースト」を標榜している。だったら、愚にもつかないユーザー企業固有の業務プロセスを捨てさせ、ERPやクラウドに業務を合わせさせたほうがよっぽど「お客様」のためだ。にもかかわらず、人月商売を守らんとするために「外資系ITベンダーを利する」などと言ってくるのだから呆れてしまう。

 私がこの「極言暴論」で何度も書いている通り、日本企業の多くが「田舎の温泉宿」状態の基幹系システムを抱えており、SIerをはじめとする人月商売のITベンダーはその保守運用業務を生計を立てる大きな柱の1つにしている。このポンコツの基幹系システムを、カスタマイズを最小限にしたERPやクラウドに置き換えたら、確かに外資系ITベンダーを利すことになる。だが、結構なことではないか。ユーザー企業のためになるわけだから。