北方領土ビザなし交流レポート 択捉編
遅くなってしまいましたが、2年ぶりに訪れた択捉島の現状をリポートしたいと思います。
択捉島では十数年ぶりに“ビラ海岸”への視察が叶いました。
と、いうのも現地までの道のりが整備されていないために、行く手立てがなかったようです。しかし今回、トラックバスのような特別車両が整備され、3台に分乗して訪れることができました。
この車両は、まさにロシア軍でも使われる車両のメーカーだそうで、そのタイヤたるや頑丈そのもの!走行車両のようでした。
現場までの道のりは、車酔いされる方も続出という感じでしょうか。
私は揺れ、というか弾み?に身を任せ、景観も楽しむことができました。
手つかずの自然がそのまま残っており、ちょうどこの時期は花も咲き誇っており、また天気にも恵まれました。
花崗(かこう)岩による自然の造形美が圧巻でした。
地元の人はもとより、観光客(中国からだという観光客とすれ違いました)にも、このガタゴト道含めパッケージとして大きな可能性を感じました。
観光というのは、非現実であったり非日常を求める部分が多々あるかと思います。
悪路といえばそれまでですが、冒険心をくすぐる、まさに秘境ツアーとしての大きな価値があると思います。
共同経済活動の5つの優先項目には「観光」があります。
択捉島も国後島も水産加工においては日本の技術を借りなくとも自立してやっていける、という自信を持っているように感じます。(まぁ、加工のための機会が日本産ですから。そりゃぁ、品質も保証されますよね)
そこで、ロシアとしても「観光資源」を「財産」にかえるための協力を求めているように感じました。
ただ気になったのは、行政府の方が「日本からたくさん観光客が来て欲しい」という発言がありました。観光客を送るだけではなく、自然との共存共栄の在り方や東北海道・北方領土隣接地域振興に資する、一体型の観光産業を生み出すことが重要です。
島内では、サケマスのふ化場の建設が相次いでおりました。
2年前に来た時には、「こんなんで大丈夫なの?」と正直思ったことを覚えていますが、今では説明して下さるかたも自信たっぷりでした。
ここでは稚魚を直接の海に放流するまえに、プールにて塩分濃度の調整そして適応管理を行うことで、そのまま海に放流している、と説明がありました。
ただ「回帰率は?」と聞くと、なんと「30%-40%」との答えが返ってきました。
さすがにそれは、桁が違うんじゃないだろうか、と食い下がって質問しましたが、どうやら“回帰率”そのものの理解がずれているようでした。
ただ採算がしっかり合っているからこそ、同タイプのふ化場が相次いで作られているのであろう、とも推察されます。
日本もいま、資源管理型の漁業へと移行しています。
ここは陸(おか)だけでなく海の共同経済活動にむけて、資源管理について共同研究であったり相互協力をすすめる必要があります。
ふ化放流事業もそうですが、ロシアのトロール船による水産資源への影響も深刻です。
科学的なデータと共に、同じ海を共同利用する隣人として、新しいアプローチが求められています。
去年オープンしたばかりという、リゾート宿泊地・ヤンケトウにも伺うことができました。
ここも、実は水産加工のギドロストロイが建設、運営をしています。
外観そして内装やつくりも島内随一、というより比較対象がない、という存在。
プール、サウナ、スポーツジム、ビリヤード台なども完備されていました。
話を伺うと、「木材はノルウェーから輸入している」とのこと。
また、驚いたのは宿帳?に日本人の名前がありました。
本州の水産加工会社関連の方であろうなぁ、と
ビザなし交流では島内宿泊はしませんので、ロシアに入国して“国内移動”として訪れたということです。なお、外務省としては北方領土への立ち入り、ロシア経由での入域を禁じています。
前段で紹介したビラ海岸のほかにも、オダイバケ温泉施設もあります。
私たちが訪れた週末は大変天気がよかったので、多くの方で賑わっていました。
島の人もいれば、観光で訪れているという方も。
温泉の泉質など、ぜひ調査してみて欲しいなぁ、と。
rしそして、私だったらここに「たかちゃんのお店」でもオープンして飲み物や軽食を売るんだけどな、と。(笑)
択捉島は北方領土の中でももともと、開発が勧められている島です。
故に、ロシア人島民の日本の領土問題に対する意見は四島の中でも最も“厳しい”地域です。
すでに“十分な暮らし”と言わせる水準に来ている中、日本が悠々としていれば、共同経済活動においても領土問題・平和条約締結においても、「議論の余地なし」という空気が広がっていくことは間違いありません。
実際に住民と話をしていても「生活がだんだんと良くなっている」「領土問題は私たちの話じゃない。上の人たちが決めること」といった声が圧倒的です。
共同経済活動等により生活が良くなれば、つまり住民が皮膚感覚でそのメリットを享受すれば、日本に対する考え方もおのずと変化するものと思います。
一方で「生活が良く成れば余計に島を手放さない」という方もいますが、それはどうでしょうか。
また日本政府は、
「北方領土問題の解決に当たって、我が国としては、(1)北方四島に対する我が国の主権が確認されることを条件として、実際の返還の時期、態様については、柔軟に対応する、(2)北方領土に現在居住しているロシア人住民については、その人権、利益及び希望は、北方領土返還後も十分に尊重していく、こととしている。 」
と明らかにしています。
ビザなし交流は、相互理解醸成の場です。
だからこそ、上記の立場を政府の“上の人”ではなく、私たち国民がカウンターパートたるロシア人島民に対して正しい知識、事実関係を示すことが重要です。
日本政府の考えを広く知らしめ、政府交渉を後押しすることがビザなし交流参加者の使命です。
択捉島そして国後島の生活水準の向上をみても、改めて速やかな共同経済活動の推進、肌で感じるメリットの享受にもっていくことが双方にとって重要であると痛感しました。
次回は、記事になっておりましたが
ビザなし交流事業についての率直な意見を述べたいと思います。