黒系ブドウ 生産減少で高騰 シャインに押され 輸入急増、併売の動き

例年より割高な価格で販売される「巨峰」(東京都品川区で)

 「巨峰」などの黒系ブドウの卸売価格が高騰している。2018年の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は、各品種とも過去最高値を記録。高齢化に加え、高単価が見込める黄緑系「シャインマスカット」への転換が進み、需給が引き締まっているためだ。「家庭向けに特売が盛んな商材だが、高級化が進んできた」(市場関係者)。その一方で、国産の品薄を受けて輸入物が急増している。

 黒系ブドウの18年の日農平均価格(10月19日まで)は、「巨峰」が1キロ969円で前年の7%高、「ピオーネ」が1キロ1031円で同8%高。日農平均の記録を始めた06年以降で共に最高値となった。

 卸売会社は「生産量の減少が影響している。夏の猛暑で小房傾向だったことも、不足感を強めた」と分析する。大手7卸の販売量は、「巨峰」が3402トンで10年前に比べ4割落ち込んだ。

 生産減少は、「シャインマスカット」への転換が進んでいることも一因。全国果実生産出荷安定協議会(全果協)によると、18年産の全国の栽培面積は814ヘクタールに達し、毎年過去最高を更新。高糖度や皮ごと食べられることが、需要を伸ばしている。

 対して黒系の「巨峰」は1453ヘクタールで前年比3%減、「ピオーネ」も995ヘクタールで同1%減。JA全農やまなしは「温暖化で色付きが遅れる品種があるのに対し、シャインマスカットは作りやすく、10年ほど前から転換が進んでいる」と説明する。

 相場の高騰は小売りにも影響する。首都圏のスーパーは「巨峰」について、1房398~498円(税別)が売れ筋というが、今年は200円ほど値上げしていると説明。「テーブルフルーツとして主力商材だが、特売を仕掛けにくい。人気のある種なしは仕入れが難しい」と話す。産地関係者も「実需の注文に、供給が追い付かなくなっている」と明かす。

 一方、国産の品薄を商機と捉え、米国産など輸入物が存在感を強めている。財務省の貿易統計によると、8月のブドウ輸入量は1708トンで前年比37%急増。輸入業者は「国産の最盛期で例年は注文が少ないが、輸入物を併売する動きが増えている。国産の高値を背景に、9月以降も輸入量は増える」とみる。
 

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