黒系ブドウ 生産減少で高騰 シャインに押され 輸入急増、併売の動き
2018年10月21日
例年より割高な価格で販売される「巨峰」(東京都品川区で)
「巨峰」などの黒系ブドウの卸売価格が高騰している。2018年の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は、各品種とも過去最高値を記録。高齢化に加え、高単価が見込める黄緑系「シャインマスカット」への転換が進み、需給が引き締まっているためだ。「家庭向けに特売が盛んな商材だが、高級化が進んできた」(市場関係者)。その一方で、国産の品薄を受けて輸入物が急増している。
黒系ブドウの18年の日農平均価格(10月19日まで)は、「巨峰」が1キロ969円で前年の7%高、「ピオーネ」が1キロ1031円で同8%高。日農平均の記録を始めた06年以降で共に最高値となった。
卸売会社は「生産量の減少が影響している。夏の猛暑で小房傾向だったことも、不足感を強めた」と分析する。大手7卸の販売量は、「巨峰」が3402トンで10年前に比べ4割落ち込んだ。
生産減少は、「シャインマスカット」への転換が進んでいることも一因。全国果実生産出荷安定協議会(全果協)によると、18年産の全国の栽培面積は814ヘクタールに達し、毎年過去最高を更新。高糖度や皮ごと食べられることが、需要を伸ばしている。
対して黒系の「巨峰」は1453ヘクタールで前年比3%減、「ピオーネ」も995ヘクタールで同1%減。JA全農やまなしは「温暖化で色付きが遅れる品種があるのに対し、シャインマスカットは作りやすく、10年ほど前から転換が進んでいる」と説明する。
相場の高騰は小売りにも影響する。首都圏のスーパーは「巨峰」について、1房398~498円(税別)が売れ筋というが、今年は200円ほど値上げしていると説明。「テーブルフルーツとして主力商材だが、特売を仕掛けにくい。人気のある種なしは仕入れが難しい」と話す。産地関係者も「実需の注文に、供給が追い付かなくなっている」と明かす。
一方、国産の品薄を商機と捉え、米国産など輸入物が存在感を強めている。財務省の貿易統計によると、8月のブドウ輸入量は1708トンで前年比37%急増。輸入業者は「国産の最盛期で例年は注文が少ないが、輸入物を併売する動きが増えている。国産の高値を背景に、9月以降も輸入量は増える」とみる。
黒系ブドウの18年の日農平均価格(10月19日まで)は、「巨峰」が1キロ969円で前年の7%高、「ピオーネ」が1キロ1031円で同8%高。日農平均の記録を始めた06年以降で共に最高値となった。
卸売会社は「生産量の減少が影響している。夏の猛暑で小房傾向だったことも、不足感を強めた」と分析する。大手7卸の販売量は、「巨峰」が3402トンで10年前に比べ4割落ち込んだ。
生産減少は、「シャインマスカット」への転換が進んでいることも一因。全国果実生産出荷安定協議会(全果協)によると、18年産の全国の栽培面積は814ヘクタールに達し、毎年過去最高を更新。高糖度や皮ごと食べられることが、需要を伸ばしている。
対して黒系の「巨峰」は1453ヘクタールで前年比3%減、「ピオーネ」も995ヘクタールで同1%減。JA全農やまなしは「温暖化で色付きが遅れる品種があるのに対し、シャインマスカットは作りやすく、10年ほど前から転換が進んでいる」と説明する。
相場の高騰は小売りにも影響する。首都圏のスーパーは「巨峰」について、1房398~498円(税別)が売れ筋というが、今年は200円ほど値上げしていると説明。「テーブルフルーツとして主力商材だが、特売を仕掛けにくい。人気のある種なしは仕入れが難しい」と話す。産地関係者も「実需の注文に、供給が追い付かなくなっている」と明かす。
一方、国産の品薄を商機と捉え、米国産など輸入物が存在感を強めている。財務省の貿易統計によると、8月のブドウ輸入量は1708トンで前年比37%急増。輸入業者は「国産の最盛期で例年は注文が少ないが、輸入物を併売する動きが増えている。国産の高値を背景に、9月以降も輸入量は増える」とみる。
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2018年10月21日
天皇杯受賞 喜びの声 技術磨き、地域を先導──模範に
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2018年10月19日
桃にサクランボ 地元産果実ごろり グラノーラ専門店 温泉街で人気沸騰 規格外従来の40倍で購入 福島市
「いで湯とくだものの里」で知られる福島市の飯坂温泉で、旬の地元果実がふんだんに入ったグラノーラが7月の販売開始後、既に4500食近くが売れている。温泉旅館の4代目、高橋健さん(38)が、専門店「グラノーラ工房」を構え、規格外の桃やサクランボなどを入れたグラノーラを製造・販売。規格外の果実を加工業者の40倍の価格で地元の農家から購入するのが特徴だ。
東北屈指の温泉地、飯坂温泉がある同市飯坂町は、果樹栽培が盛ん。高橋さんは、同級生の果樹農家から「収入が不安定」「生食で売れるように協力してほしい」と相談を受けた。
「飯坂のおいしい果実を手軽に食べてほしい」。シャッター街となっていた温泉街を盛り上げようと、カフェを経営していた高橋さんは、店で好評だったエン麦の押し麦をシロップで焼き上げた自家製グラノーラとの組み合わせを思い付いた。
高橋さんは「加工用果実の値付けが世代を超えても変わっていない。親も農業を継げと言えなくなる」と考え、グラノーラの店頭価格はSサイズ(50グラム)350円、Mサイズ(150グラム)850円と高めに設定する。付加価値の高い商品にするため、果実は大きくカット。今後は梨、ブドウ、リンゴ、キウイフルーツ、イチゴも使い、11月からは業務用も販売予定だ。
最終ゴールは「生果を売れる環境にすること。果実を食べない若者がグラノーラをつまみ、こんなにおいしい福島の果実があるんだと知ってほしい」と高橋さん。県内外へ販売を拡大し、温泉街のPRにもつなげる。
2018年10月16日
豚コレラ波紋──イノシシ処理を制限 自粛 いつまで… 怖い 「風評」、ジビエ活況の矢先 岐阜
岐阜市の養豚場で豚コレラの感染が確認されてから、岐阜県内の狩猟者やジビエ(野生鳥獣の肉)関係者に不安が広がっている。野生のイノシシで感染確認が18日までに32頭あり、県内のジビエ処理施設では一部の地域でイノシシ受け入れ自粛が続く。養豚は移動制限が解除されたが、野生のイノシシは防疫が難しく自粛解除には基準がない。一部地域では11月1日のわな猟解禁の見送りが決まった。見守るしかない状況に戸惑いの声が上がる中、全国の現場では衛生管理の徹底を進める。(猪塚麻紀子)
「11月の猟期までに終息してくれればいいが。全く先が見えない」。岐阜県本巣市の里山ジビエ会の近藤正男代表が残念がる。本巣市猟友会員らでつくり、ジビエの加工・販売をする同会。2016年に処理施設を造り、処理頭数と売り上げを伸ばしてきた。
猟師が解体処理する手間を減らしたことで捕獲が進み、地域の農作物被害軽減にも貢献してきた。飲食店に提供できなくなるのが痛手だ。出荷する飲食店からは、他の産地に変えたいという声も聞く。
狩猟歴55年の近藤代表は「数十年前には、豚コレラでイノシシがいなくなった」という。現時点で感染が確認されているのは、岐阜市、各務原市にとどまるが、繁殖期の雄が数十キロを移動することもあり、「猟師は山の中に入って状況を把握しなければ」と警戒を怠らない。さらに「現場への情報提供など、県にはしっかり対策を取ってほしい」と訴える。
JAぎふは、ジビエ関係者を応援するため、積極的にPRする考えだ。JAは山県市の処理施設「ジビエ山県」に協力し、直売所での販売や飲食店への販路拡大を進めてきた。豚コレラは人に感染することはなく、仮に感染した豚やイノシシの肉を食べても人体への影響はないが、JA改革推進室の高橋玲司室長は「風評被害が心配だ」と気をもむ。
JAは、消費者に食べて親しんでもらうことで風評被害を払拭(ふっしょく)しようと、11月に高富支店で開く農業祭で、しし汁の無償提供や鹿肉の販売を行う。豚コレラ対策を支援する募金箱の設置も検討している。高橋室長は「ジビエは地域おこしの起爆剤になる。応援していきたい」と見据える。
岐阜県は、県内の一部地域のジビエ処理施設に当面の間イノシシの受け入れ自粛を求める。10日には発生農場から半径3キロ以内の豚や豚肉の移動制限区域が解除された。養豚場の安全性は確認されたことになるが、野生イノシシの感染は続く。このため県は、岐阜市などで調査捕獲を継続し、防護策設置などで対策する。
冷静な対応こそ
これまでジビエの販売に力を入れてきた地域や近隣自治体も、冷静な対応に努める。島根県美郷町でイノシシ肉の加工と販売を手掛ける「おおち山くじら」では、取引する飲食店から今季のイノシシの取り扱いを中止するという声もあるが、一部にとどまる。石崎英治代表取締役は「今まで通りの衛生管理を徹底する」と認識する。三重県は、捕獲獣の体温を測って病気の有無を確認するなど独自の基準で品質・衛生管理を徹底する。
イノシシは感染時のマニュアルなどがない。こうした状況に、農水省農村環境課は「感染の広がりなど状況を注視していく」としている。
2018年10月20日
牛肉「うまさ」評価 「官能+成分」で分類 家畜改良事業団が新手法
家畜改良事業団が、牛肉のおいしさを評価する新しい手法を発表した。牛肉を食べた専門家の感想を、成分と関連付けてグループ化する。同事業団家畜改良技術研究所の佐々木整輝開発第2課課長は「精度を高めていけば、おいしい牛肉の生産や消費者の選択に役立つ」とみている。
味に関する成分は脂肪や糖、食感、香気物質など数多い。だが、どの組み合わせがおいしいと感じるかは、判断が難しい。そこで新手法では、これまで人間が行っていた官能評価を数値に置き換える数式を考案。12項目を数値化できるようにし、210頭の結果を21グループに分類した。
各グループについて仲卸業者や調理師など、牛肉を扱う専門家に食べてもらい、1045種類のコメントの表現と関連付けた。同じグループ内で多く使われたコメントは、目立つように表示。例えば、輸入牛肉のあるグループでは「パサパサした」に次いで「あっさりした味」「弾力のある」などが目立つ。
黒毛和牛でもグループによって「脂っぽい」が最も目立つ集団と、「甘味がある」が中心になる集団など、違いが出た。
佐々木課長は「成分の分析でどんな牛肉なのかが、分かりやすく客観的に評価できる。将来的に新たに味に影響する成分が分かっても、追加することができる」と、応用範囲の広さを強調する。
2018年10月21日
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来年度予算で農水省 コスト減へ施肥改善 産地別に設計、手引も
農水省は、農家の生産費低減を目指し、土壌診断に基づく施肥の普及事業に乗り出す。複数産地で、安価で汎用(はんよう)性のある化成肥料を基に不足成分を単肥で補うなどの施肥を実証し、マニュアルをまとめる。栽培暦に基づいた画一的な施肥体系から脱却し、農地一枚一枚に適した、無駄のない施肥の普及を目指す。
2019年度予算概算要求に関連事業を盛り込んだ。新たな技術や新品種の導入などを支援する事業として1億100万円を計上。その内数で対応する。
肥料を巡っては、JA全農が窒素、カリウム、リン酸の含有率が横並びの化成肥料をはじめ、JAや生産部会ごとに細分化した銘柄について、成分構成が同じか近いものなどを大幅に集約。18年秋肥の価格では、基準価格より1~3割引き下げた。
同省は、こうした銘柄が持つ汎用性や安価という特徴を生かし、低コスト施肥体系の普及を進める考えだ。
都道府県の普及組織を中心に、担い手農家やJAや生産資材販売店などで協議会を設立。土壌診断の結果を踏まえ、化成肥料を基本に不足成分は単肥を加えて補うなど、無駄のない施肥体系の確立や普及に向けた活動に係る費用を助成する。複数県での取り組みを想定する。
協議会ではモデル農家を選んで、化成肥料と単肥との組み合わせや、成分設計が自由にできる粒状配合(BB)肥料の施用などを実証。慣行区と施肥コストを比べるなどして分析する。実証結果を踏まえてマニュアルを作成し、農家や普及指導員に配る。施肥技術の専門家や資材メーカーの担当者らを講師とし、肥料の設計や配合に関する研修会も開く計画だ。
17年に施行された農業競争力強化支援法に基づき、各都道府県は作物や土壌別などに設定し、肥料の多銘柄化の一因にもなっている「施肥基準」の削減に向けて、検討を進めている。
同省は今回の事業を通じて、施肥基準に依存せず、土壌診断に基づく施肥体系を広げ、施肥基準の削減を加速させたい考えだ。
2018年10月21日
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味に関する成分は脂肪や糖、食感、香気物質など数多い。だが、どの組み合わせがおいしいと感じるかは、判断が難しい。そこで新手法では、これまで人間が行っていた官能評価を数値に置き換える数式を考案。12項目を数値化できるようにし、210頭の結果を21グループに分類した。
各グループについて仲卸業者や調理師など、牛肉を扱う専門家に食べてもらい、1045種類のコメントの表現と関連付けた。同じグループ内で多く使われたコメントは、目立つように表示。例えば、輸入牛肉のあるグループでは「パサパサした」に次いで「あっさりした味」「弾力のある」などが目立つ。
黒毛和牛でもグループによって「脂っぽい」が最も目立つ集団と、「甘味がある」が中心になる集団など、違いが出た。
佐々木課長は「成分の分析でどんな牛肉なのかが、分かりやすく客観的に評価できる。将来的に新たに味に影響する成分が分かっても、追加することができる」と、応用範囲の広さを強調する。
2018年10月21日
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梨苗 株元マルチで新梢伸長 未収期間を短縮 細根増え養水分吸収 千葉県
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2018年10月19日
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2018年10月16日
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世界トップレベルのスマート農業の実現に向け、ロボットトラクターやドローン(小型無人飛行機)の実証研究が北海道で始まる。大学、民間企業、行政などが連携して、遠隔監視によるロボットトラクターや、ドローンの自動飛行による農薬散布などを試験。最先端のスマート農業技術が集まる一大拠点にする考えだ。14日に更別村で説明会を開き、取り組みが動きだした。
内閣府の近未来技術等社会実装事業の一環。同事業は、人工知能(AI)や自動運転、ドローンなどの技術による地方創生を支援するのが狙い。道と同村、岩見沢市の3者が共同提案し、採択された。東京大学や北海道大学などが参画する。
実証する農機の無人走行システムは、北海道大学などと協力し、トラクターに取り付けたカメラの映像を通して、遠隔監視しながら走行させる。農地間の移動も公道を想定して自動運転で走らせる。水田地帯の同市と、畑作地帯の同村で分けて実証を進める。
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2018年10月15日
[e農スマートアグリ] GPS+ドローン+可変施肥 減肥・省力効果顕著に 新潟市 スマート農業プロジェクト
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2018年10月12日
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