【アニメ】人工知能・AIが変える今後100年のアニメとは? トトロ・けものフレンズなどに学ぶ新たなAIアニメの姿「10月22日アニメの日にちなんで」
- 2018.10.22
- AI作品
- Singurarity(シンギュラリティ:技術特異点)
これからのアニメの100年を人工知能・AIが変えていく
10月22日は「アニメの日」
2017年に制定されたこの記念日は、日本のアニメ文化が100年を迎えたということと、1958年10月22日に、東映アニメーション(旧:東映動画)がカラー長編アニメーション映画「白蛇伝」を製作したことから、今後のアニメ産業へのエールを込めて登録された。
古来より浮世絵や日本画などにみられる「記号的表現」が深く文化として根付く日本という国において、質の良いアニメーションが量産されることは、歴史的に見てごくあたりまえのことだったのかもしれない。
そして現在、世界に向けてのアニメーションマーケットとしての立ち位置を確立した日本のアニメーション業界。
アニメ文化101年以降、アニメーションという業界は人工知能・AIによってどのように変化していくのか?
過去100年のなかでのアニメ作品の変遷
キャラクターマーケティングへのシフト
100年を超えた日本のアニメーションの歴史のなかで作られた作品は、既に1万5千タイトルを超え、エピソード数は15万7千本におよぶといわれている、たいへん膨大な量だ。
その歴史のなかで、旧作から新作にかけて、アニメーション作品自体に大きな変化がみられている。
旧作品は、作品単体をパッケージとして、視聴率や観客動員数、そして関連玩具等の売上げが指標となるマーケティングを行っていたが、現在はアニメーション作品に登場する登場人物ひとりひとりにタレント性をもたせ、そのキャラクターがどれだけ話題性を集めているか? を指標とした「キャラクターマーケティング」に大きくシフトしている。
これまでの過去作に対しての感想が「あの◯◯って作品、すごく感動した」であったのに対して、現在は「◯◯ちゃんかわいかった」に変わってきている。そのへんの空気感の変化については、昭和生まれの方なら頷くところだろう。
トトロからはじまった「癒し系」アニメ文化
変化の兆候は、スタジオジブリ制作の長編アニメーション「となりのトトロ」が、TV放映されたあたりから始まる。
日本のアニメーションとして世界的にも代表作にあげられるトトロだが、このあたりから「キャラクターマーケティング」へのグラデーションがはじまったといえよう。
「となりのトトロ」は30年の時を経ても、国民的にも世界的に愛され、TV上映した際は相変わらず高視聴率を叩き出す。
長年上映を繰り返しているのであれば、物語の流れや結末はわかっているわけで、飽きられるのが普通であるがトトロにはそのようなことはない。視聴者の多くはそれらを踏まえた上で、何度も映画を楽しんでいる。
理由はズバリ「キャラクターに魅力がある」からである。
不思議なキャラクター「トトロ」や「猫バス」をはじめ、サツキやメイ、おばあちゃんといった人間のキャラクターも、可愛らしく観ていて飽きない。いわゆる言葉で表現しきれない「萌え」が溢れているのだ。
以前のジブリ作品である「風の谷のナウシカ」や「ルパン三世カリオストロの城」がたいへん重厚だった物語に対してトトロは、お話ももわかりやすく、説教臭くなく、いわゆる「癒し系アニメ」というジャンルに属する。
この癒し系アニメが視聴者に与える印象というのは、例えて言うなら「ゲージの中で毛づくろいをするハムスターを見てほっこりする」に似たものだ。
だが、これこそがアニメーションという記号的表現がイチバン適している創作ジャンルといえよう。
それ故に、昨今のアニメはこのジャンルに属する作品で溢れていたり、日常生活を描写する演出が多分に使われていたりする。
癒し系アニメから「日常系」への発展
「癒し系」と呼ばれるアニメの存在が色濃く見られるようになったのは、2009年から放映されたTVアニメ作品「けいおん!」あたりから。
日常生活のワンシーンを切り取ったような物語の上で、平凡な少女たちが仲良く「キャッキャウフフ」するのを傍らか見る楽しさ。
これも「ゲージの中で毛づくろいをするハムスターを見てほっこりする」のと同じ、癒し系だ。
ゴリゴリに捻りを効かせたストーリーライティングよりも、学園生活の自然な風景を、美しく且つファンタジックに、いかに魅せるかに突出した「けいおん!」の登場から、癒し系アニメの勢いは加速していく。
そして癒し系アニメはいつの日か、日常生活のワンシーンを抜き取ることに特化し始めた作品が多くなる。
現実の世界を舞台としたものはもちろん、異世界においても「日常」でのキャラクター同士のコミュニケーションや、たびたび起こるちょっとしたハプニングを描いていく。
「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」の女子中学生、女子高生バージョンといったところだ。
癒し系と同列で「日常系アニメ」というジャンルが確立していき、現在の多くのアニメがそれに属するものとなっていった。
他人同士の「キャッキャウフフ」としたコミュニケーションや、その場で起こるちょっとしたトラブルを眺める・傍観することの需要の高さは、昨今のバラエティトーク番組の人気の高さからも伺える。作られたドラマよりも、自然に湧きでたトンデモ発言やハプニングの方が支持される時代だ。
それが、リアルな人間よりも洗練されたデザインのアニメキャラが行うわけだから、人気が高くなるのも必然的といえよう。
アニメーションのAI化「未来のアニメの姿」
アニメキャラクターがAIにより自律する
これから先のアニメーションがどのように変化していくのか?
やはり重要なキーワードは「人工知能・AI」である。
いかにして、人工知能・AIがアニメーションを変えていくのか? カンタンに言うと「アニメキャラがAIによって自律する」というものだ。
3Dモデリングで作られた世界の中で、それぞれがAIによる自律した性格をもったキャラクターが、他のキャラクターたちとコミュニケーションをとったり、トラブルを引き起こしたり、戦ったり・・・それを、TV番組という枠の中ではなく「アプリ」として24時間いつでも見られる。というのが、これからのアニメの姿だ。
まさに「日常系アニメ」の姿最終段階の姿といえよう。
その世界の中では現実世界と同じように時間の経過があり、夕飯時にアプリからキャラクターの様子を見ると、彼らも同じく夕飯時で、食卓を囲みながら談笑をしている。
が、アニメの世界なのでファンタジックなことも突然起きる。食卓の中心にあった土鍋が突然怪物に変形し、それに対してキャラクターたちも変身、応戦する・・・なんて感じだ。
24時間、物語は進行しているわけであるが、それを全て見続けることは無理なので、特筆すべきエピソード動画が有志によってYouTubeにアップロードされたりする。
アニメーションの製作現場も、3D世界の構築や、キャラクターAIに対してのタレント的なトレーニングや指導が中心となってくるだろう。
決して夢のハナシではない話「既にゲームの中では行われている」
このAIアニメの最たるところは「キャラクターひとりを追いかけられる」ということだ。
アニメを見ることによって気に入ったキャラクターができた場合、そのキャラクターだけを24時間ずっと追い回して見ることができる。
ユーザーは、お気に入りのキャラクターの他のキャラクターとのコミュニケーションや、ふりかかるハプニングなどをつぶさに見ることができるのだ。これこそが、キャラクターマーケティングの最たるものといえよう。
そして、この技術だがなにも真新しいものではない。
既に、テレビゲームの業界ではあたりまえのことで「オープンワールド」や「箱庭型」と呼ばれる、ゲーム内にある3D世界を自由に動きまわることができるゲームでは、そこに存在するキャラクターは、それぞれAIによって自律しており、時間の進行と共に仕事をしたり、食事をしたり、就寝したりする。そしてもちろんAIキャラクター同士で談笑などのコミュニケーションもする。
この技術を更に深堀りし厚みを増したものが、上記した「自立したAIキャラクターによるアニメ作品」というものに進化していくであろう。
けものフレンズが現状いちばん近いカタチ
2017年初頭から放映されたアニメ「けものフレンズ」が、この未来のアニメにとても近いスタイルのものといえる。
もちろん、けものフレンズのキャラクターはAIを搭載しておらず、声優もいればストーリーも人間が書いたものだが、AI同士に会話をさせ、コミュニケーションをさせたアニメ作品というのは「こういうものであろう」というサンプル的な存在である。
登場するキャラクターは全てアニメシェードされた3Dグラフィックな点と「プレスコ」という、声優が先に録音した音源を元にキャラクターアニメーション(特に口の動き)を製作するスタイルによる完成品は、自律したAIアニメキャラによる映像にかなり近いカタチといえる。
また、サザエさんなどは現在いちばんAI化に適しているアニメ作品ともいえる。
過去作品のデータも膨大にあるわけで、人工知能・AIへの性格付けの学習、加えて話の展開についての学習もしやすいというもの。せっかくスポンサーにAmazon.comがついたのだから、シナリオの自動生成くらいは研究して進めても良いのではないだろうかと思う。
これから100年先のアニメの最初の10年に向けて
よく漫画家や、アニメ監督が「自分がストーリーを考えなくても、キャラが勝手に動く」という表現を使う。
長年描き続けたキャラクターは、それ自体がすでに人格をもち、作者がアタマをひねらなくとも机の上で勝手に動き、物語を形成していくそうだ。
この先10年後には、前述したようなAI化されたキャラクターが自分たちで物語を作っていくのを傍観するアニメが主流となっていくだろう。まさに「キャラが勝手に動く」時代への突入だ。
「そんなのホントにオモシロイの?」と思われるかもしれないが、国民的長寿アニメ「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」「アンパンマン」などは、そのベクトル上にある作品といって過言はない。これらも総じて「日常系」アニメであり、AIが最も作りやすいアニメである。
問題は、このAI技術の主導権を握るのは、どのメーカーになるのか? ということ。
自動運転車や、画像認識、自然言語理解など、様々なAI技術で世界から遅れをとっている日本。
せめて、アニメという国家的お家芸として、ここくらいは最速「世界一」のポジションをとってほしいものだ。