トランプ米大統領は「金正恩(キム・ジョンウン=朝鮮労働党委員長)と恋に落ちた」と言った。金正恩委員長が手紙で、トランプ大統領に賛辞を送り続けていることから、「我々は愛し合っている仲だ」と言ったのだ。ところが、米国のテレビ番組で「住民を抑圧し、飢えさせ、異母兄を暗殺する人物があなたの愛する人なのか」と問われると、トランプ大統領は「私も知っている。私は子どもではない」と答えた。「私は金正恩委員長を本当に信じている。しかし、私が間違っている可能性もある」とも述べた。
トランプ大統領は、金正恩委員長がどんな人物なのかは知っているが、今は同委員長が必要であり、彼から何か自慢できるようなことを得られるとしたら、愛の告白もできないことはない、という考えなのだろう。つまり、自分は取引の最中なのであって、愛におぼれて「あばたもえくぼ」に見えているわけではないということだ。
交渉をしているのか、それとも「あばたもえくぼ」なのかを区別するのはそう難しくはない。2015年に北朝鮮が地雷で挑発行動を取った時、韓国軍が北朝鮮地域内で155ミリ自走砲29発を同時射撃すると、北朝鮮の方から交渉を提案してきた。北朝鮮側の交渉担当者としてきた黄炳瑞(ファン・ビョンソ)氏は韓国側代表だった金寛鎮(キム・グァンジン)大統領府安保室長=当時=にトイレまでついてきて、焦りを見せた。その交渉で、北朝鮮は6・25戦争(朝鮮戦争)休戦後、初めて自分たちの挑発行動を事実上認め、遺憾の意を表明した。これが交渉だ。