文在寅(ムン・ジェイン)政権が、対北朝鮮制裁違反の可能性が高い南北鉄道連結など南北の経済協力事業を押し進める中、米国は連日「徹底した制裁履行」の方針を明言している。
マティス米国防長官は15日(現地時間)、ベトナムに向かう飛行機の中で、記者団に対し「全会一致で採択した国連北朝鮮制裁決議を履行するために、制裁に関する偵察活動は維持されている」として、特に船舶間の違法な移し替え(瀬取り)について警戒を強めていることを明らかにした。マティス長官は「さまざまな国がこの件に関して持続的に(北朝鮮を)支援している」とした上で「正確な数は分からないが、現段階では5か国ほどだ」と述べた。現在、米国をはじめ韓国、英国、フランス、オーストラリア、ニュージーランド、日本などの「連合軍」が北朝鮮の密輸を防ぐための偵察活動を行っているという。マティス長官は韓米軍事演習の中止についても「中断している演習が一部あるが、(日常の)訓練は続いている。米韓両軍の協力も続く」と述べた。
米国務省の報道官室も16日、ビーガン北朝鮮担当特別代表のロシア訪問に関連し、米政府系放送局「ラジオ自由アジア(RFA)」に対し「北朝鮮が最終的かつ完全に検証された非核化(FFVD)を達成するための努力について話し合った」として「米国は非核化のために、強力で持続的な国連制裁の履行にロシアを含む利害関係国と協力していくことに専念している」と述べた。その上で「非核化が可能な限り早く進められるよう、全的に調整された意思疎通を維持する必要性を強調した」と述べた。今月末にも北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の訪ロが予想される中、米国は北朝鮮制裁からのロシアの離脱を阻止するために動き出したとみられる。
ハリス駐韓米国大使も同日、峨山政策研究院と米ウッドロー・ウィルソンセンターが共同で主催した座談会での演説で「文大統領と韓国政府が現在、南北関係改善を優先していることは知っている」とした上で「南北の対話が北朝鮮の非核化と連携し、韓国と米国の声が一致してこそ、われわれの共同目標を達成できる可能性が最も大きくなる」と述べた。韓国政府が南北関係改善を重視していることは理解するものの、米国の懸念をよそに「前のめり」で関係改善に突っ走る場合、共同の目標をかなえることはできないという意味だろう。外交官の発言としてはかなり露骨な不満表示とみることができる。
ハリス大使はまた、ポンペオ米国務長官の4度目の訪朝の成果を説明し「金正恩氏は豊渓里(核実験場)と東倉里(ミサイル発射場)に視察団を招待した。すべきことはまだたくさん残っている」と述べた。その上で「米国と韓国が引き続き北朝鮮問題で声を一つにしてアプローチしていけば、平壌や板門店(での南北首脳会談)、シンガポール(での米朝首脳会談)の約束を現実に変えることができると信じている」と述べた。「韓米共同でのアプローチ」を重ねて強調したわけだ。
一方、日本の共同通信は同日、ブリュッセルで18-19日に開催されるアジア欧州会議(ASEM)首脳会議の成果文書の草案を入手したとして、「アジアと欧州の首脳たちは北朝鮮に対し『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)』を求める」との文言が盛り込まれると報じた。同通信はまた、北朝鮮の核問題について、外交による包括的な解決のため、北朝鮮への圧力と制裁を維持するとの文言も盛り込まれたと報じた。
トランプ米大統領は同日、AP通信とのインタビューで「金正恩氏との2回目の会談は、来月の中間選挙(11月6日)の後になるだろう」とあらためて述べ「今は(選挙のため)ここにいたい」と話した。しかし、ガードナー米上院議員(上院外交委東アジア太平洋等小委員長)が最近「金正恩氏が非核化に誠実でないと判断される場合、2回目の首脳会談は開かれない可能性もある」と述べるなど、米国では首脳会談の実現に懐疑的な見方も出ている。