文在寅(ムン・ジェイン)大統領はフランスのマクロン大統領との首脳会談の際「少なくとも北朝鮮の非核化が後戻りできないという判断が成立すれば、国連制裁を緩和することで非核化をさらに進めていかねばならない」と述べた。もし北朝鮮が自ら保有する核を全て公表し、その多くを廃棄する段階に至れば、非核化は後戻りできなくなったと判断してもよいだろう。実際にその段階にまで進めば、文大統領が提案したように漸進的な制裁緩和というアメを北朝鮮に与えることで、完全な核廃棄を後押しできるはずだ。
しかし実際のところ非核化は現時点で後戻りできない段階どころか、出発点の周辺でうろついているだけだ。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は先日訪朝した米国のポンペオ国務長官に対し、核リストの提出を拒否する考えを明確にしただけでなく、終戦宣言と制裁の緩和まで一方的に要求した。日本の読売新聞などが伝えた。米国務省も一連の報道を否定していないことから、これは事実である可能性が高いだろう。
北朝鮮が保有する核兵器や核施設、核物質のリストを自ら提出することが非核化の入り口であり第一歩だ。北朝鮮の核を完全に廃棄するには、北朝鮮が核をどこにどれだけ保有しているのかをまずは明確にしなければならない。これは誰が考えても当然のことだ。これに対して北朝鮮はその第一歩を「強盗のような要求」として反発しているが、それでも文大統領は非核化がすでに相当のレベルに進展したかのように語る。先月末に行われた韓米首脳会談で文大統領は「今や北朝鮮の核放棄は後戻りできないことが公になった」と述べた。しかし米国の識者らは豊渓里核実験場や東倉里ミサイル発射台の廃棄について「実質的には核廃棄でない」と考えている。