沖縄県内のサッカークラブに所属していた女性(25)が、監督の男性(45)から約5年間にわたり継続して暴行や脅迫を加えられ、借金も強要されたとして、男性を相手に損害賠償請求訴訟を那覇地裁に起こし、勝訴していたことが分かった。男性側は「事実無根」として控訴、上告したが最高裁は6月に棄却。566万円の損害賠償額が確定した。識者は「監督と教え子は主従関係にあり、暴力に陥りやすい。スポーツ界の意識を変えなければ、また同じ問題が起きる」と警鐘を鳴らしている。

「DV NO」。女性に対する暴力や児童虐待の根絶に向けて糸満市が取り組んだ全国パープル・ライトアップ運動の電飾=2016年

 裁判所が認定した事実によると、男性は日本サッカー協会のA級コーチの資格を持つ指導者で、女性は小学校6年のときに男性が代表を務めるサッカークラブに入団した。高校1年の時に交際が始まり、女性は男性宅に通うようになった。

 交際から約1カ月後、男性から「ご飯の炊き方が悪い」と玄関に突き飛ばされた。その後も「タオルを準備しておく」「メールの文章がおかしい」など日常生活を細かく注意され、気に入らないと暴力を振るわれた。口にタオルを詰めて顔面を殴られ、土下座するところを足で蹴り付けられた。逃げ出せないよう裸にされ、ベルトで全身を打たれたこともあった。

 アルバイトの給与は男性が管理した。20歳になってからは男性の指示で複数の金融機関から借金を重ね、男性に手渡した。

 男性は取材に対し「交際や暴行の事実は一切ない。あれば刑事事件になっている」と反論。「裁判所は原告の主張を一方的に判断しており、公平さを欠いた判決だ」と述べた。

 女性は現在、支援者の協力を得て県外で生活している。「暴力の後は優しくされ、自分が悪いと思い込んでいた」と当時を振り返り、「同じような被害を出さないためにも、男性のライセンスを停止してほしい」と訴えた。

 県サッカー協会は「日本サッカー協会と協議を進めており、対応を検討している」とした。