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Googleアプリ有料化の動きから透かして見る。Androidは誰のもの?(本田雅一)

今のところ日本では無縁の話ですが……

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消費者版Google+がサービス終了。「あまり使われなかったから」と最大50万人の個人情報流出の恐れあるバグのため

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米グーグルが、Android向けに無料で提供していたアプリの有料化を10月16日に発表し、話題になっています。

有償化されるのはGmailやカレンダー、マップ、YouTube、Google Playなど、グーグルが提供している一連の無料サービスへの接続アプリ。これらのアプリは、CTS(Compatible Test Suite)を通過した端末に対して無償で提供されていましたが、欧州向けに出荷される端末に対してはライセンス料を端末メーカーから徴収するようになります。


具体的なライセンス料については明かされていませんが、エンドユーザーがグーグルから何らかの料金を請求されることはありません。

また、誤解のないように繰り返し断っておくと、これは"欧州向け"の端末に対してグーグルが端末メーカーに請求するもので、日本のユーザーには直接的な関係はありません。しかも、"一時的なものだ"とグーグルは断っています。よって、日本で販売されるAndroidスマートフォンの価格に影響することはありません。

しかし、このニュースはある側面も映しだしています。

今回はこのライセンス料請求の背景について話を進めていきましょう。

Androidとグーグルアプリは別のもの

中国以外で販売されているAndroidスマートフォンには、ほぼ漏れなくGoogle Playをはじめとしてグーグル謹製のアプリがプリインストールされ、IDによって統一的な体験が得られる一連のサービスをスムースに利用できるようになっています。

このため、Androidには漏れなくこれらのアプリが付属しているように誤解している人も少なくないのですが、実際にはAndroidというOSの部分と、Androidと密接に連動しているように見えるグーグル謹製アプリはライセンス条件が異なります。

現状、日本では両方とも無償でライセンスされていますが、今回のニュースはグーグル謹製アプリの部分だけが欧州で有償化されるということですね。

Google

ライセンス条件が異なるだけでなく、グーグル謹製アプリを搭載するためには、互換性テストもクリアしなければなりません。Androidを用いて開発された端末を、認証されたテスト機関が実施するCTSを通過させて、はじめてそれらを搭載できるわけです。

たまにGoogle PlayなしのAndroid機器があるのは、CTS通過にコストがかかる(OSアップデート時にも再通過させねばならない)などの事情があるためです。

という基礎知識を前提にしないと、今回の話の真相は見えてきません。

欧州委員会から狙われているグーグル

欧州委員会は7月、グーグルが独禁法に違反する行為をしているとして制裁金を科す決定をしました。43億4千万ユーロ(約5641億円)という巨額の制裁金です。この制裁を行う根拠となっているのは、グーグルが自社サービスに接続するアプリのインストールをメーカーに強要しているから、という理由からでした。

つまり、無償で自社が事実上管理するOSを普及させたうえで、別途、スマートフォンとしてAndroidを使うにはアプリのインストールがほぼ必須という市場環境を作り、グーグルが提供するクラウドサービスの利用へと不正に誘導している......というのが欧州委員会の言い分でしょうか。

Google

欧州委員会は、別途プライバシー保護を目的としたGDPR(一般データ保護規則)という規則を5月25日に施行しています。これはグーグルだけでなく、クラウドで扱う個人の行動履歴を含む情報を欧州経済地域外に持ちだすことに対しての制限を強めた格好になります。

そもそもGDPRは、個人情報や個人情報に紐付く利用者の行動履歴を広告価値へと変換している、つまりフェイスブックやグーグルを規制するために生まれたようなルールです。

そんな中でのこの動きは「Androidという無償OSをエサにグーグルばかりに利用者が集中する」ことへの抵抗とみることができるでしょう。

そして、この欧州委員会の制裁行動に対して、グーグルアプリを有償化することで「非競争的な行為ではない(タダでばらまいて、プライバシーをネタに広告で儲ける意図ではない)」と、少なくとも表向きにはそういう建て付けの法的な逃げ道を用意するため、アプリを有償ライセンスに切り替えたのだと思います。

現実に"効く"ネタとは思えないが

実際に端末メーカーに対し、いくらのライセンス料を科すのかは現時点ではわかっていませんが、もし今回の措置がAndroidスマートフォンとグーグル提供のサービスが(事実上)不可分になっている状況を変え、多様性をもたせることが目的なのであれば、現実的には"効く"ネタではないように思います。

中国以外におけるAndroidスマートフォンは、メール、地図、スケジュール、動画配信などのサービスだけでなく、動画や音楽、ゲームなどと一体化されたアプリ配信プラットフォームのGoogle Playとは切っても切り離せない関係になっているからです。

Google

Google Playなしに、まったくゼロから同等のプラットフォームを築くのは困難でしょう。スマートフォンを使い始める際の作法としても、まずはGoogle IDを取得(あるいは既存のIDを入力)するところから始まることが定着しています。

そもそも欧州でのことであり、日本政府がグーグルに対して欧州委員会と同じぐらいに強い態度に出ない限りは、地球の裏側のことで僕らには関係ないと言えます。

ただ、今回のことはいくつかのことを考え直すきっかけになるかしれません。

もし競争環境を整えることが目的ならば......

前述したようにCTSを通せばグーグル謹製アプリのライセンスを受けることが可能ですが、ライセンスされるグーグル製アプリは、すべてランチャーの1ページ目に置くルールになっています。

たとえば、アプリマーケットおよびメディア配信サービスとしてのGoogle Playは外せないからとCTSを通して搭載、他のサービスへのアクセスはすべて独自に開発した別のアプリで......と思っても、なかなか作るのは難しいのです。

"オープンソースで開発するOS"という性格を考えれば、Androidとグーグル謹製アプリが別ライセンスになっているのは現実解としてリーズナブルではあると思います。しかし、アプリマーケット機能を持つGoogle Playもそこに含まれ、さらに他アプリを含めアイコンの配置まで指定されてしまうと、ほとんど自由がないのも事実です。

もし、グーグルに対して何らかのアクションをするのであれば、アプリマーケット機能を分離するなどの必要性について検討する方が、より現実的な対応になるのではないでしょうか。


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