うきよのおはなし~江戸文学紹介ブログ~

江戸文学に少しでも興味を持つ方が増えれば良いなと。

ついに語られる、奥村幸手軒の過去! ~『男色比翼鳥』巻6の12末尾~

『男色比翼鳥』巻6の12の最後の方から再び原書を読み始めるよ!

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※この記事では、国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しております。
男色比翼鳥 6巻. [6] - 国立国会図書館デジタルコレクション
※画像はクリックすると拡大します。

翻刻

女若二つの善悪(ぜんあく)ハかほと迄
違(ちがふ)たりそれハ人の身のうへ當世我等が身のうへ哀(あハれ)なる諸
分あり某(それかし)生国ハ長崎のもの近きあたりに梅村源次良といへる
少年と拙者わりなく契りぬ折からそれかし播州姫路(はんしうひめぢ)に
諸用(しよやう)あつて立越(たちこへ)たるその内に横山團蔵(よこやまだんぞう)といふ牢人源次良
を恋わひ色々表裏(てれん)をつくせども我等と分(わけ)ある故きやつが
心にしたがわぬをうらみ人なき方へさそひ出しうでも
たらぬ源次良を取てふせ剃刀(かみそり)を胸にあてそれがし
日頃心をつくすに一言(ごん)の返事なきこそ異魂(いこん)なり
したかふやしたかハざるや只今申せ返答(へんとう)悪(あ)しきと
眼前(がんぜん)に差(さし)ころすいかに/\申共源次良少もおくれす我
互組[?]ものと分あれば何ほど云共かのふまじころさばころ
せと急度した云分(ゆいぶん)團蔵腹(はら)にすへかねかハいや源次良ハ無
常(じゃう)の嵐と散(ち)りうせぬ其後長崎を立のくよし無念こつ
すいにとをり国々諸所を尋ぬるといへども運命(うんめい)つよき男
にて今にきやつめに逢(あひ)申さすふだんほむらをもやすなり
それかし若道をすけとも定(さたま)る若衆をもたさるハ彼
源次良への心中なりいか程両人申されとも女色ハわれら
きらひなりふつ/\御異(い)けん無用也

【現代語表記】

女若二つの善悪(ぜんあく)は、かほど迄違(ちごう)たり。
それは人の身の上、当世、我等が身の上、哀(われ)なる諸分けあり。
某(それがし)、生国は長崎の者、近き辺りに梅村源次郎と言える少年と拙者、理(わり)無く契りぬ。
折から、某(それがし)、播州姫路(ばんしゅうひめじ)[兵庫県]に諸用(しょよう)あって立(た)ち越(こ)えたる。
その内に、横山団蔵(よこやまだんぞう)と言う牢人、源次郎を恋侘(わ)び、色々表裏[手練](てれん)を尽くせども、我等と分(わ)け有る故、彼奴(きゃつ)が心に従わぬを恨み、人無き方へ誘い出し、腕も足らぬ源次郎を取って伏せ、剃刀(かみそり)を胸に当て、
「某(それがし)、日頃心を尽くすに、一言(ごん)の返事無きこそ異魂[遺恨](いこん)なり。
従うや、従わざるや、只今申せ。
返答(へんとう)悪(あ)しきと、眼前(がんぜん)に差(さし)殺す。
如何(いか)に、如何に。」
申せども、源次郎少しも送れず、
「我、互いに組みし[?]者と分けあれば、何ほど言うとも叶うまじ。
殺さば殺せ。」
と急度(きっと)した言(ゆ)い分(ぶん)。
団蔵腹(はら)に据え兼ね、可哀や源次郎は無常(じゃう)の嵐と散(ち)り失せぬ。
其の後、長崎を立ち退く由。
無念骨髄に通り、国々諸所を尋ぬると言えども、運命(うんめい)強き男にて、今に彼奴(きゃつ)めに逢(あ)い申さず、不断(ふだん)炎(ほむら)を燃やすなり。
某(それがし)、若道を好けども、定(さだま)る若衆を持たざるは、彼の源次郎への心中なり。
如何(いか)程両人申されども、女色は我等嫌いなり。
ふつふつ御異(い)見無用なり。

【さっくり現代語訳】

これほどまでに女色は悪くて、男色は良いものなのです。

これまでお話ししたのは人の身の上話でしたが、このには悲しい身の上話があります。

長崎の生まれで、近くに住む梅村源次郎という少年と深く契りを交わしていました。

ある時、播磨国姫路に用事があって出かけたのですが、その隙(すき)に横山団蔵という浪人源次郎に恋をし、色々と手段を使って迫りました。

源次郎兄弟契約をしているので、団蔵の心には従いませんでした。

それを恨んで団蔵は、源次郎を人気の無いところに誘い出し、まだ力も弱い源次郎を組み伏せて、胸元にカミソリを当て、

ワシがいつも心を尽くして言い寄るのに、お前は一言の返事もしないのが恨めしい。

さあ、ワシの心に従うのか、従わないのか、今ここでに申せ!

悪い返事だったら、すぐさま刺し殺す

さあ、どうなんだ、どうなんだ!」

と脅しました。

しかし、源次郎は少しもビビらず、

には兄弟契約をした相手がいるので、あなたが何と言っても従いません。

殺したければ殺せばよい!

と毅然とした態度で言いました。

団蔵はプッツンして、かわいそうに源次郎殺されてしまいました。

そのあと、団蔵長崎から逃亡してしまいました。

とても無念に思い、あちらこちらを捜しましたが、運のいいヤツで、いまだに団蔵を見つけることができずに、怒りの炎をずっと燃やしています。

男色が好きなのにもかかわらず、特定の弟分を持たないのは、源次郎のことをずっと思い続けているからです。

お二人が何を申されても、私は女色が嫌いなのです。

きっぱり、ご意見無用です!

【解説】

やっとストーリーが進展し始める、巻6の12の末尾から原書の読解を再開です♪

ついに語られる奥村の過去

殺された弟分の源次郎のことを思い続けているから男色は否定できないなんて、泣けてくるではありませんか。

だからと言って、あそこまで女色を否定する必要もないとは思うのですが(笑)

ん?確か奥村はこのあと、山田・市川同僚になって、小姓に手を出して浪人になったんでしたよね。

あれ?源次郎のことを思い続けて相手は持たないんじゃ???

あ、そうか、小姓遊びだったのですね、遊びなら良いのですね(笑)

まあ、たぶん、単に作者が最初の方に書いた内容を忘れて、矛盾点が生じてしまっただけだと思いますけどね(笑)

次回予告とくずし字クイズ

ついにあの二人再登場です♪

二行目の二番目の文字合略仮名ですが、何て読むか覚えていますか?f:id:KihiminHamame:20181021005830j:plain

三つ目コーナー

さあ、僕のBL企画再開しなくちゃね!

その前に始末書を書いてね。

追伸

ブラタモリ見てたら、タモリさん「肛門」やら「おっぱい」とか平気で言ってるから笑っちゃっいましたw 

NHKでオッケーなんだから、「うきよのおはなし」でもその手の言葉は、自粛せずにこれからもバリバリ使っていいということで♪

    

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