TikTokの爆発的な勢いがとどまるところを知らない。私のブログでも、Tiktokの面白さを紹介する記事を7月頭に公開した。しかしわずか数ヶ月経過しただけなのに、そこからあまりに多くのことがありすぎた。
まず見逃せない動向が、トップ層のYoutuberの間で「絶対に笑ってはいけないTikTtok」という企画が大流行し、YoutuberたちのTikTok参入が一気に進んだこと。
- 2018/06/4:VINE発Youtuberもちさん「笑ってはいけないTiktok」
- 2018/07/7:過激系Youtuberワタナベマホトさん「絶対に笑ってはいけないTikTok」
- 2018/07/15:カリスマ系Youtuberヒカルさん「絶対に笑ってはいけないTikTok」
- 2018/07/17:グループYoutuberスカイピースさん「絶対に笑ってはいけないtiktok」
- 2018/07/18:理系Youtuberはなおさん「絶対に嘲笑してはいけないヒカルのTikTok【激難】」
(その他、本当に多数!!)
トップYoutuberの影響力を受ける日本のキッズから20代の大人まで、TikTokの存在が耳にタコが出来るほど知れ渡った夏だった。ちなみに私の観測範囲では、今年の6月ぐらいまでは「TikTokって何?」と聞き返されることも多かったが、最近は「なんか聞いたことある…!」という反応にまで格上げされてきた。
そもそも中国発アプリなので中国では流行っていたのだが、今年は日本でもブームを迎えただけではなく、様々な国で快進撃を続けている。しかしその伝染病的なスピードに、社会の方はまったくついていけていない。早くも社会問題がそこかしこで発生している。
例えば中国ではTikTok中毒者が続出し、スマホを手放せない子どもたちが度々報じられている。承認欲求を満たすために、露出の多いエッチな動画をアップして手っ取り早く再生数・いいね数を稼ごうとする10代(ときには10歳未満の子どもたちも)の保護者が困り果てている。インドではつい先日24歳の青年がTikTokのコメントでバカにされた事で傷つき、自殺したことが衝撃ニュースとして報道されている。さらにインドネシアでは若年層のマインドに悪影響のあるアプリと認定し、政府がTikTokを禁止するという強硬手段に出たことも今年の夏には話題になった。
しかし即座にTikTokの経営陣は、不適切なコンテンツを人力で削除するチームを組成し、インドネシア政府をわずか1週間で前言撤回に持ち込ませる凄技を見せてくれた。さらに、中毒者対応のために、ユーザーが長時間使いすぎないような工夫も導入した。自分の首を締めることになるが、批判を早期に封じ込める英断だ。若年層SNSの常識ではタブーとしか考えれないが、保護者が子供のアカウントを管理できる機能も導入したことには驚いた。コストがかかってしまっても、成長スピードが削がれても、TikTokの引力は拡大し続けるだろうという目論見なのかもしれない。TikTok叩きが起きそうになってもただちに封じ込める。「FacebookやLINEなどがたどってきた道でしょ?」ち思いがちだが、単なるテキストを投稿することと違って、自分の容姿・顔を動画で表情豊かに口パクしながらさらけ出すTikTok上の活動が、ユーザーの脳に与える影響は桁違いに大きいことを忘れてはならない。
こういう話は国内メディアではほとんど報じられないが、海外メディアでは日々、TikTokの新たなニュースが報道されている。TikTokは目まぐるしい勢いで周りの環境、ユーザー、テック業界、時には政府までをも巻き込みながら、光の速さで進化を遂げているプラットフォームだ。
ビジネス界のジェダイとして名を轟かせている孫正義が、TikTokを放っておくはずがない。Softbank Vision FundがTiktokを運営しているバイトダンスに、他社ファンドと合わせて30億ドル以上の資金調達を計画しており、なんとTikTokがUBERの評価額を越えてしまうと報じられたのもつい先日のことだ。この記事によると、
バイトダンスとフードデリバリーの「美団点評(Meituan-Dianping)」、さらに配車サービスの「滴滴出行(Didi Chuxing)」を合わせた3社はTMDと呼ばれ、中国の次世代インタネット業界を率いる新御三家として期待されている(あたまのTは今日頭条(Toutiao)のT)。これまでバイドゥ(B)、アリババ(A)、テンセント(T)のBATが中国のネットを牽引してきたが、BATの次に位置づけられるのがTMDだ。
Tiktokは中国のテックピラミッドを早くも上り詰めてしまったようである。いったいこれからどうなるのか。次は世界のテックピラミッドの頂点に向かって脇目もふらずに進んでいくのだろうか。それとも、中国やアジア圏で次々に湧き上がっているTikTokパクリアプリから、血みどろの戦いを仕掛けられ体力を消耗してしまうのか。それとも、コピーキャットの虫けらどもとはすでに一線を画す存在に脱皮しているのか。この勢いで世界で覇権を握るようなダースベーダーになるのか。
ちなみに焦るTencentはすでに12個もショートムービーアプリを投入しており、SNS王者の座を奪われまいと必死だ。
TikTok現象を真に理解するには、ニュースを読み込んでいるだけでは不十分で、その面白さの本質は見えてこない。ユーザーとしても動画をたくさんアップしたり、他のTikTokerの動画を毎日楽しんで、初めてその「すごさ」が理解できると思う。私も気が向いたら動画をアップしたり、数千名以上のファン数を獲得するぐらいにはやりこんでいる。
「ウチの動画、全部いいねして!」「なんでウチの動画いいねしてくれないの?」「お前の動画、きもーいうざーい!お前なんさいなの?」というガキどものクソリプにも真摯に対応しつつ、TikTokコミュニティに溶け込む努力をしている。といっても苦労は一切なく、毎晩、寝る前にTikTokを10〜20分観ることが至福のひとときだ。人類ってこんなにクリエイティブな人種だったんだなぁ、とカッケー動画や面白い動画、美しい動画を鑑賞しながら感動して涙が出そうになることもある。
しかしこれだけでは何かが足りない。そう、私はリアルでTikTokがどうなっているのか一切知らないのだ。アプリ内は大変盛り上がっているが、例えばファンイベントはどんな感じなんだろうか?今、全国で数多のファンイベントがトップTikTokerたちによって開催されていることはTikTokをやっているヤツの間では周知の事実。
最初は好奇心を自分で押さえつけていた。「自分みたいなおっさんが10代のTikTokerのイベントなんかに行けるわけがないだろ!」と考え直していた。今までアイドルのイベントやライブにも行ったこともない。そんな自分が、いまさらTiktokerイベントに参加?ないない!ww脳内で数ヶ月、ぐるぐるとそんなことを考えていたら、こんなにぐるぐる考えるってことは、本心では行きたくて仕方ないってことだよな、と気づいた。
行くなら、成瀬くん(成瀬 (@NaruseDaze) | Twitter)のイベントに行きたい。成瀬くんはTikTokで流行りのネタの発案者であることが多い。TikTokでは他の人が作った15秒の動画の音源だけ借りてきて、自分の口パクを乗せる事ができるのだ。彼のネタはどれも一級の芸人さん並みに面白い。とても18歳の男子高校生とは思えないギャグセンス。また美しいプロモーションビデオかのようなスタイルの完成度の動画も出していたりして、その多才っぷりには脱帽するしかない。流行の元ネタを作れるTikTokerこそ、TikTokを支えている重要クリエイターだと私は思うし尊敬している。そんな彼の握手会が、今日の午後から、某所で行われるらしい。これは行くべきか、行かぬべきか。
これで一日が潰れると思うと、面倒になってきた。脳が私に語りかけてくる。片道数時間かけるなんて馬鹿なことはするな。もっとスキルアップのための勉強に当てたほうが100倍良いぞ。それこそが理想の土日の過ごし方だ。続けて脳が私に話しかけてくる。しかもこの握手会が行われる商業施設、会社の山田役員と鈴木部長が住んでいる近くじゃないか。山田役員や鈴木部長が家族サービスとして、子供と一緒にその商業施設に訪れていることだって考えられる。万が一、高校生TikTokerとの握手会に参加しているところを目撃されてしまったら、今後の出世にも響いてしまうかもしれないじゃないか。他にどんな知り合いに目撃されるかわからないぞ。脳が血迷う私を次々に攻撃してくる。
新たなチャレンジをするというのは脳が最も嫌うため、様々な言い訳を並べてくる。それらの言い訳をなんとか払いのけ、家を出る。イベント会場に向かう。何度も電車の乗り換えを繰り返し、やっと会場についた。
商業施設に入ってから、握手会が開催されていると思われるスペースに向かって進んでいく。しばらくすると、ある長蛇の列にたどり着いた。並んでいる人を見渡すと小学生と中学生がほとんどだが、高校生もいるようだ。男女比は3:7ぐらい。大学生と思われる人はポツポツといる程度。いかにもTikTokerのような服装、そして化粧の厚み。毎晩開いているTikTokアプリ、それが現実の眼の前に広がっている。うむ、これは紛れもなくTikTokのイベントだ。直感的にそう思った。先頭を確認すると、成瀬くんが並んでいる方々と次々とツーショットを撮影している。やはりこの列で間違いない。
列の一番うしろまで移動し、並んだ。自分だけ年代が明らかに異なる。浮いているのではないか。恥ずかしい。でもここで引き返す訳にはいかない。素知らぬ顔であたりをぶらぶら見渡したり、時折ポケットからスマホを取り出して、画面を眺めるフリをした。私だってTikTokerなんだから、何もおかしいことはないはずだ。そう自分に言い聞かせ、なるべく涼しい表情を維持することに努めた。
列に並んでしばらくしたら、スタッフのお兄さんが、なぜか恐る恐る私に近づいてきた。そして「成瀬くんの握手会でよろしかったですか?」と聞かれた。「え?あ、…はい、そうです」と答えた。きっと「このおっさんは何かと勘違いして並んでしまったに違いない」と気を遣ってくれたのかもしれないが、別に間違えてない。私は成瀬くんと握手がしたいんじゃ。並んでいる他の人が数名振り返って、私の方を見ている。恥ずかしい。
会場付近では、普段TikTokで大流行しているノリノリの曲のサビが次々と流れている。「あ!あの曲じゃーん!!スタッフ、ナイス!高まるぜ!」と思って思わずリズムに合わせて体を揺らしてしまう。長蛇の列に並んでいた他のファンたちも同じように揺れ始める。周りから見たらノリノリな列だったに違いない。
そうこうして並んでいるうちに、列の前の方で「もしかして〇〇さんですか!?」「ええ、一応、そうです…(照れ)」「きゃ〜!!」という会話が聞こえてきた。どうやら、有名TikTokerと握手するために、別の有名TikTokerが並んでいるということのようだ。へえ、面白いなぁ。
さらに時間が経過し、自分の番が近づいてきた。徐々に高まる緊張感。自分の一つ前に並んでいた女子中学生の二人組もソワソワし始め、お互いにファッションチェックをし始めた。「もう少しスカートを上げたほうが良い」とか「リボンがズレてる」とか。
そしてついに自分の番が回ってきた。階段を登り、壇上にいる成瀬くんに近づいていく。目が合う。「いつも動画、観ています!頑張ってください!」そう畳み掛ける私に対して、成瀬くんは一瞬の戸惑いを見せる。それも無理はないだろう。今まで自分の年下の小中・高校生を対応していたのだから、「ウォぉ、突然年代が上がったぞ?」と思ったのかもしれない。構わず私は続けて「写真お願いします!」とお願いをし、無事ツーショットも撮ってもらった。ハッピー。
その後は他のTikToker・Youtuber2名を含む3名でのトークイベント。開始までの待ち時間で、どんどんファンが集まってくる。周りの人のスマホ画面をこっそりちら見していたら、やはりTikTokアプリをエンジョイしている人がちらほら。でも私はスマホの電池がなくなりそうだったので、TikTokは自粛…。
スタッフが「おまたせしました!それではトークイベントを開始します!」という合図を告げ、ついにトークイベントが始まった。このトーク自体は、後日出演者のYoutubeチャンネルにもアップロードされるらしい。つまり、Youtube撮影会も兼ねているのだ。成瀬くんはTikTokerのイメージが強いが、実はYoutuber発である。しかしあっという間にTikTokerとしての知名度が大きくなってしまっている。
すでに有名なYoutuberが試しにTikTokを始める例は今年の夏に相次いだが、多くの場合、試しただけで、その後の彼らのアカウントページを覗きに行っても閑古鳥が鳴いている。一方で、Youtube駆け出しだった底辺系Youtuberは、まだ確固たる地位をネットの世界で築けていない。その分、TikTokというフロンティアに全力でベットしてみよう、という人が多いのかもしれない。そうやって成瀬くんも、いま現在進行系でどんどん人気がTikTokの方で白熱している真っ最中だ。
トークイベントが始まると、どんどん人が集まってきた。そのうち、前の方が見えなくなってきてしまった。
そして周りの人たちのほとんどがスマホで動画を撮影している!!皆、目の前にいるYoutuberやTikTokerは直視せず、ずっとスマホ画面を観ている…。旧世代の人間としては滑稽に思えたが、リアルよりもデジタルに重みを置く世代の生き方を現しているような気もした。
トークも無事終わり、商業施設で買い物を楽しみ、帰宅した。なかなか、悪くない一日だった。他のTikTokerイベントにも参戦したい意欲も湧いてきた。ということで、引き続きTikTok現象を、いちTiktokerとしても、ファンイベントの参加者としても、そして中国テックというマクロな視点からもウォッチしていくぞ😜🌈