外食産業に大きな変化が起きている。外食産業全体が伸び悩む中、右肩上がりで成長してきた回転寿司店と、景気回復を追い風に売り上げを伸ばしてきた居酒屋の倒産が急増しているのだ。

 2018年1~9月の回転寿司店の倒産件数は7件。これは過去10年で年間最多だった16年の7件に並んだ。

 一方、居酒屋の倒産件数も18年4~9月の上半期で68件と、前年同期を9.6%(前年同期62件)上回っている(いずれも東京商工リサーチ調べ)。

 6000億円市場といわれる回転寿司市場は、四天王といわれる「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」「かっぱ寿司」の4社で市場の7割を占める。回転寿司店は他の飲食業に比べ、ベルトコンベヤーや注文用のタッチパネルなど、多額の初期投資が必要な先行投資産業。一定の顧客が来店しなければ成り立たず、不振回転寿司店は、回転すればするほどコストがかさむ。

 東京商工リサーチ情報本部の関雅史課長が言う。

「中小回転寿司店は、大手との競争に加え、魚価の上昇と人手不足による人件費の高騰で経営環境は厳しさを増しています。大手はラーメン、たこ焼きなど寿司に限定しないサブメニューでファミレス化し、新たな客層を開拓しています。中小はこの動きに付いていけず、大手の買収で今後は寡占化が進むでしょう」

 居酒屋の倒産増は、サラリーマンの酒の飲み方が変わってきたことが一因といえる。

「景気回復でも実質賃金の上昇が実感できず、節約志向から『家飲み』『ちょい飲み』が増えてきています。また、突然のゲリラ豪雨や想定外の台風の上陸など、天候不順から外出を手控える人が増えたことも無視できません」(前出の関課長)

 安倍首相は財政諮問会議で経済界に賃金アップを要請した。しかし、この8月の名目賃金は0.9%上昇したものの、実質賃金は0.6%のマイナス。賃金はわずかに上昇しても、物価の上昇で使えるおカネは目減りだ。そうした中でいま駅前や繁華街に増えているのが、立ち飲みの「ちょい飲み」店だ。経済評論家の平野和之氏がこう述べる。

「景気回復による実質賃金の上昇が実感できず、居酒屋も回転寿司店も、価格が高くて行けない。一方、店側も原材料の高騰と人手不足で、中小では従業員や味の管理もできない店が増えている。今後の居酒屋や回転寿司店の倒産が心配です」

 来年に予定されている消費税率アップ、残業規制で消費者の節約志向はさらに高まり、回転寿司店、居酒屋経営は、さらに厳しさが避けられない。