オーバーロード ありのままのモモンガ   作:まがお
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暗黒物質を変化させる骨

 モモンガ達が依頼という名の観光を終えて、レビューを提出し、帰った後のこと。

 皇帝ジルクニフは、ラナーが代筆したと思われる報告書を読んでいた。

 

 一枚目は、スゴイしか書いていない。

 二枚目は、まるでこちらがアピールしたい部分を、ピンポイントで知っているかのように、褒める文章だった。

 三枚目は、素朴な内容だった。

 四枚目を読み始めてから、怒りが爆発しそうになり、最後まで読むと、執務室で恨み言を吐き散らしていた。

 

 

「おのれぇぇ、あの女ぁ!! 私が勧誘するつもりなのを分かってて、やりやがったなぁ!!」

 

 

 ご丁寧に、冒険者の友人枠として敵国に来た王女。

 報告書には嫌味の様に、帝都の改良すべき点を書いている。

 あげくに帝国が誇る最強の剣闘士を、物のついでにブチのめして来たそうだ。

 観光した感想として、『こんなに素晴らしい国なら、お友達と何度でも来たいです』と締め括ってあった。

 

 この冒険者達は、既に自分の手駒であり、帝国などいつでも潰せるという、牽制に他ならない。

 実際のところ、全て皇帝の深読みによる勘違いである。

 

 このままでは王国を手に入れるどころか、帝国の未来すら危ういと、頭を掻き毟りながら今後の策を考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モモンガ達はラナーを王国に送り届けるため、一旦王城にあるラナーの私室に直接転移して戻ってきた。

 

 

「よし、影武者はバレなかった様だな」

 

 

 今回、ラナーをバレないように王城から連れ出し、一緒に帝国に行くために二重の影(ドッペルゲンガー)をアイテムで召喚し、ラナーに化けさせていた。

 ユグドラシルでは、棒立ちの分身が一人作れるだけのゴミアイテムだったが、この世界で身代わりに使うには十分だった様だ。

 

 

「細かい事は出来ないから、ベッドで寝こむ演技を続けているだけだったが、案外バレないものだな」

 

「王族が寝込めば、面会する機会とかも減って良いですね。王族って結構面倒なんで、一生使っても良い作戦ですね」

 

 

 ラナーはこの先、眠り姫でも演じる気なのだろうか……

 そんな話をしていると、部屋を慌ててノックする音がした。

 おそらくクライムが、ラナーに何かを知らせに来たのだろう。

 

 

「ラナー様、失礼します。ああっ!! 良かった、お戻りになられていたのですね!!」

 

 

 御付きのクライムまで知らないというのは、誤魔化す上で無理があったので、ラナーが影武者を使う事は知らせていた。

 

 モモンガ達と一緒に行く事に、最初は猛反対していたが、ラナーが擦り寄って耳打ちしたら、顔を真っ赤にさせて、頷いてくれた。

 ラナーが何を目指しているのかは知らないが、クライムを手玉にとる様子は、本当に楽しそうだった。

 

 ネムには絶対に真似してほしくはないが。

 

 

 

 

 

「ラナー様、実はバルブロ殿下が――」

 

 

 クライムの説明によると、馬鹿王子が自分の罪の隠蔽のために、モモンガ達を狙っているという事だった。

 

 

「ふーん、それでカルネ村まで兵を連れて出撃したと。戦士長まで連れてご苦労な事だ」

 

「ネムとモモンガ様は、何もしてないのに酷い!!」

 

「どうするんですか、モモンガ様!! このままじゃ捕まっちゃいますよ、もしかしたら村に何かあるんじゃ!!」

 

 

 ごめんな、ネム。バルブロの言ってる事って、意外と正解なんだ。

 焦り出すエンリと、怒るネムを宥めながら、次の手を考える。

 

 

「それにしても、その王子は馬鹿なのか? 私達が依頼で帝国に行ってて、村にいない事は、少し調べれば分かっただろうに……」

 

 

 馬鹿なんですと、同意するラナー。

 何にせよ、放っておく事は出来ないため、ネムとエンリをこの場に残し、モモンガが様子を見に行くことにした。

 ネムとエンリにすぐに戻ってくると言い残し、〈転移門(ゲート)〉を開きカルネ村に行った。

 

 

「モモンガ様が行ったのなら、村のことは大丈夫でしょう。さぁ、モモンガ様が戻ってくるまで、ゆっくりお茶にしましょう。まだまだお二人とはお話ししたい事が、いっぱいありますからね!!」

 

 

 モモンガの事を信頼…… いや、何かあったら面白いなと、思っているのは否めないが、今は新しい友達と紅茶を楽しもうと思う。

 

 今の自分なら、ラキュースとも、本当の友情を築けそうな気がする。

 蒼の薔薇とモモンガ達、みんなで一緒に冒険に行ったら、もっと楽しそうだ。

 

 モモンガが二人を迎えにくるまで、三人は女子会を楽しむのだった。

 

 

 








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