トルコ警察「森で遺体捜索」 サウジ記者殺害疑惑

A Turkish forensic officer waits outside the Saudi Arabian consulate in Istanbul 17 October 2018 Image copyright AFP
Image caption トルコ警察はすでにイスタンブールのサウジアラビア総領事館と総領事公邸を捜査した。写真は総領事館前に立つトルコ警察の鑑識捜査員(17日、イスタンブール)

サウジアラビア政府に批判的だった同国の著名記者が失踪し、在イスタンブールのサウジアラビア総領事館内で殺害されたのではないかと懸念されている問題で18日、トルコの捜査消息筋によると、警察は記者の遺体が周辺の森や農地に遺棄された可能性を念頭に、捜索範囲を拡大した。他方、23日に開催されるサウジアラビアの皇太子主催の投資会議に、米財務長官と英国際貿易相が欠席することが新たに明らかになった。

ジャマル・カショジ記者は10月2日に書類手続きのためイスタンブールのサウジ総領事館に入ったのを最後に、行方が分からなくなっている。トルコ警察は当初から、記者が総領事館内で殺害され、遺体は解体されて外部に運び出されたと断定した。一方のサウジ政府はこれを否定している。

トルコ警察は15日から18日にかけて、総領事館と総領事公邸を鑑識捜査。採取した資料を鑑定し、カショジ記者のDNAと一致するか調べている。トルコ警察が総領事館に入る前には、サウジ政府関係者の一団と清掃係が入る様子が目撃されている。

これとは別にトルコ政府高官は18日、米ABCニュースに対して、記者が殺害される様子の音声証拠をマイク・ポンペオ米国務長官は聞いていると話したが、ヘザー・ナウアート国務省報道官はこれを否定した。ポンペオ長官は16日にサウジアラビアの首都リヤドを、17日にはトルコ・イスタンブールを歴訪し、サウジアラビアの皇太子やトルコの大統領を始め両政府幹部と会談している。サウジアラビアもトルコも、米国に近い同盟国。

トルコ警察は疑惑発覚当初から、カショジ記者が総領事館内で殺害されたことを裏づける音声・映像証拠を得ていると述べているが、公表はしていない。しかし、トルコ政府に近い複数の地元メディアは、証拠音声を聞いたとして、残酷な詳細を報道している。それによると、記録音声には記者の悲鳴や、すでに出国したモハメド・アル・オタイビ総領事の声が含まれているという。

政府に近いイェニ・サファク紙は、オタイビ総領事がリヤドからこの日到着したばかりの工作員たちに、「外でやれ。私が面倒なことになる」と告げていると書いた。

別のトルコ紙は、カショジ記者が失踪した2日に、民間機でイスタンブール入りして同日中に出国したサウジ工作員15人を特定したと伝えた。

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総領事館に入ったまま行方不明に サウジ記者失踪のこれまで

「砂漠のダボス」に欠席相次ぐ

カショジ記者の殺害疑惑によって、主要産油国サウジアラビアと欧米各国の関係がきしんでいる。サウジ内で絶大な権力をふるうムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、大胆な改革の先導者として欧米で期待を集めたが、その強権姿勢をカショジ記者は重ねて批判していた。その記者の殺害疑惑について、皇太子の名前がさかんに取りざたされている。

ムハンマド皇太子は23日にリヤドで開かれる投資会議を主催。世界経済フォーラムが毎年1月にスイス東部ダボスで開く「ダボス会議」になぞらえて、「砂漠のダボス」と呼ばれてきたが、これまでに国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事など各国の政財界要人が欠席を表明。これまで姿勢を明示していなかった、米国のスティーブン・ムニューシン財務長官と英国のリアム・フォックス国際貿易相も18日、欠席を発表した。

皇太子が進める改革政策の宣伝を目的とした会議について、欧米ではボイコット圧力が高まる一方で、米ペプシやフランス電力、マッキンゼー、PWC、ゴールドマン・サックスなど、複数の企業は代表を送る見通し。

ドナルド・トランプ米大統領は18日、記者団に対して、カショジ記者は「どうやらおそらく」死亡したようだと述べ、「とても悲しいことだ」と付け足した。サウジ政府が記者を殺害したと証明されれば、「非常に厳しい」結果が待っているとも述べた。

トランプ氏は10日の時点でも、もしサウジ政府が記者を殺害したなら「厳罰」を与えると発言。これにサウジ側は強く反発していた。その後トランプ氏は15日には、記者は「行きずりの殺し屋」に殺されたのかもしれないと記者団に話した。トランプ大統領は、サウジ政府をかばっているのではないかという批判には、そのようなことはないと反論している。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、カショジ記者の失踪は気の毒だが、確かな事実の裏づけなしにサウジアラビアとの関係を損なうわけにはいかないと述べた。

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失踪の記者、サウジ総領事館に入る映像
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<時系列> カショジ記者の失踪

10月2日

  • 03:28―サウジ工作員の搭乗が疑われる民間機がイスタンブール国際空港に到着。2機目が同日午後に到着
  • 12:13―複数の外交車両が総領事館に到着するのを防犯カメラが撮影。サウジ工作員の一部が乗っていたとされる
  • 13:14―カショジ記者が、トルコ人婚約者との結婚用の書類を取りに総領事館に入る
  • 15:08―外交車両が総領事館を出発し、近くの総領事公邸に到着する様子を防犯カメラが撮影
  • 21:00―この時間までに民間機2機は出国

10月3日

  • トルコ政府、総領事館内に留まったとみられるカショジ氏が行方不明と発表

10月4日

  • サウジアラビア政府、カショジ記者は総領事館を出たと表明

10月7日

  • トルコ当局者がBBCに、カショジ記者は総領事館内で殺害されたようだと話す。サウジアラビアは後にこれを強硬に否定

10月13日

  • トルコ当局はBBCアラビア語に、カショジ氏殺害の音声・映像証拠を得ていると話す。録音・録画証拠の存在は地元メディアがすでに報道していた

10月15日、17日、18日

  • トルコ警察の鑑識捜査員が総領事館と総領事公邸を捜査

(英語記事 Jamal Khashoggi case: Turkish police 'search forest'

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