<img height="1" width="1" style="display:none" src="https://www.facebook.com/tr?id=2054076421511845&ev=PageView&noscript=1" />

運動後の「筋肉の分解」を防ぐ計画的糖質補給法

運動後の栄養補給の考え方(後篇)

2018.10.19(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
人が運動をする目的はさまざま。それぞれの目的に対し、どのような栄養補給の方法があるのだろうか。

「運動後の栄養補給」をテーマに、体内でのメカニズムやとるべき方法などを探っている。取材に応じてもらったのは、運動後の栄養補給の方法について研究している、立命館大学の総合科学技術研究機構で専門研究員を務める東郷将成(とうごう・まさなり)氏だ。管理栄養士としてアスリートたちの栄養補給のサポートにも取り組んできた。

 前篇では、運動後のエネルギー補給がいかに大切か聞いた。特に激しい運動などをした後、体内で利用されたエネルギー源を回復するためには、運動直後から糖質それにタンパク質や脂質を組み合わせた補給が好ましいとされる。

 後篇では、運動のさまざまな目的に照らし合わせてみて、どのように栄養を補給すべきか、引き続き東郷氏に話を聞く。

疲労回復には糖質と脂質の組み合わせを

――「運動後の効果的な疲労回復を図りたい」と考えている人は多いと思います。運動後の栄養補給の方法について心がけるべきことは、どのようなことでしょうか?

東郷将成(とうごう・まさなり)氏。立命館大学総合科学技術研究機構専門研究員。管理栄養士。博士(食品栄養科学)。酪農学園大学で管理栄養士、北海道教育大学で修士(教育学)を取得後、病院の管理栄養士として勤務し、運動選手の栄養サポートを実施。2018年、酪農学園大学大学の博士課程において「高強度運動後の早期回復を目指した栄養補給に関する研究」で博士号を取得。専門分野はスポーツ栄養学、臨床栄養学など。

東郷将成氏(以下、敬称略) 前篇でお話したことのおさらいになりますが、運動した直後から筋グリコーゲン回復のため、体格に見合った糖質を補給することが前提となります。

 また、糖質とタンパク質を同時摂取して血中のインスリン分泌量を増加させることにより、体内で減少または枯渇した「筋グリコーゲン」が回復することが明らかとなっています。

 さらに近年では、糖質と乳化した脂質を組み合わせた摂取も、インスリンの分泌量を高め、筋グリコーゲンの早期回復に有効であると報告されています。

 前篇でも言いましたように、私自身は糖質と乳化した脂質の組み合わせた食品であるアイスクリームの回復効果を追究しています。現在は、一般社団法人のJミルクより研究助成金を受けて、運動後のアイスクリーム摂取による回復効果と、それがその後の運動パフォーマンスに与える影響を調査しています。

 この研究では、アイスクリームの糖質と脂質に加えてタンパク質のバランスを調整しました。運動後の筋グリコーゲンの、より効果的な回復効果につながる結果が明らかとなれば、運動後にどのような栄養組成の食品の摂取が好ましいかを明示できる根拠となると考えられます。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。