事例)広告に付された文字標章と商標権侵害

 Xは、指定役務を「学習塾における教授」(第41類)とする「塾なのに家庭教師!!」という文字からなる登録商標(本件登録商標)を有しており、学習塾の直営及びそのフランチャイズ事業を全国展開している。

 Yも学習塾を経営しているが、生徒募集及び従業員募集等の折り込み広告及びウエブサイト上の広告に「塾なのに家庭教師」の文字標章(被告各標章)を付して配布等を行った。

 Xは、Yに対して、Xの商標権を侵害するとして、被告各標章を付した広告の配布の差し止めを求めたが、認められるか。

【解答】 認められない。

 東京地裁平成22年11月25日(確定)

 判例時報2111号 P122~138

(理由)

� 被告各標章「塾なのに家庭教師」の構成と称呼「ジュクナノニカテイキョウシ」の語が、造語であって、「塾であるにもかかわらず家庭教師」のようであることを示す語であると理解することができるが、その具体的な態様ないし内容については様々なものを想起しうるから、「塾なのに家庭教師」の語それ自体から直ちに一義的に特定の観念が生じるということはできない。

� 学習塾の業界関係者、生徒及びその保護者の間において、Yが経営する個別指導方式の学習塾の名称にかかる標章「東京個別指導学院」が著名なものとなっている。

� Yの新聞折り込み広告やウエブサイト上の広告における他の記載を含めた被告各標章の具体的な使用態様からすれば、広告に接した学習塾の需要者である生徒及び保護者において、集団塾の長所及び短所と家庭教師の長所及び短所を対比した説明文などから、学習塾であるにもかかわらず、自分で選んだ講師から家庭教師のような個別指導が受けられるなど、集団塾の長所と家庭教師の長所を組み合わせた学習指導の役務を提供していることを示した宣伝文句であると認識し、他方で、その役務の出所については、広告上の付された「東京個別指導学院」等の標章から想起し、「塾なのに家庭教師」の語から想起するものではない。

あすか法律情報 平成23年7月号-2

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— posted by infoaska at 06:47 pm  

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