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死の危険も…中国と北朝鮮の国境の街で見た「命がけ投資」の実情

日本人が知らない「中朝交易の歴史」

国境の街で中朝交易の歴史を知る

「もし、不動産投資をお考えの方がいらしたら、見晴らしの良い上層階をオススメします。100平米のマンションが10万ドルほどで買えますよ」

北朝鮮との国境沿いの街、丹東を案内してくれた事業家のカン・フンリョルさんは、ちょっと耳寄りな情報といった感じで話してくれた。

正直、中国しかも北朝鮮と絡んだ投資話に現実味を感じなかったが、投資をするしないはさておいても、そう浮ついた話でもないことを後で知ることになる。

8月22~25日、中国・瀋陽で開催された汎民族平和フォーラムに招待された。主催は韓国の民族平和統一諮問委員会。大統領府の諮問委員会で委員長は大統領、公費で運営されている組織だ。

フォーラムでは韓国はもちろん、中国全土、英国、ロシア、ドイツ、カザフスタン、米国、日本からコリア系の人々が集まり、今年4月と5月に行われた南北首脳会談の意義や、南北統一および平和のための意見や提案などがパネルディスカッション形式で話し合われた。そしてここには北朝鮮からも5人の代表が参加した。

汎民族平和フォーラム。韓国、中国、米国、英国、ドイツ、日本、そして北朝鮮からコリアンの専門家が約60人集まり、南北統一と東アジアの平和について討論した

フォーラムは当初、丹東で行われる予定だった。丹東は川を越えれば北朝鮮の新義州市がある国境の街だ。つまり、なかなか入ることのできない北朝鮮を川越しに眺めながら、南北平和について語り合おうというのが、主催団体の意図だった。

パネルディスカッションが行われる予定だった23日朝、瀋陽から約3時間バスに揺られて丹東のホテルに着くと、懐かしい顔があった。韓国全国紙の元東京特派員で現在、北京特派員を務める知人だ。

お久しぶりですねと挨拶をすると「今日、フォーラムできるの?」という。そのために日本から来たのに、何の話をしているのだろうと首をかしげていると、丹東市の公安当局が、集会許可をこの日の朝に取り消したのだという。

 

中国では一定人数以上の集会を開くには公安当局の許可が必要だ。主催団体の交渉もむなしく、フォーラムは翌日、瀋陽に場所を移して行われることになった。

国境沿いという特殊な環境にある丹東市の公安当局が、フォーラムの開催について政治的に敏感に反応したというのが主催団体の説明だった。

その日、予定の空いてしまった一行は、丹東市内の中朝交易と関連する場所を見て回ることになった。

視察を通して、中朝交易の歴史は、日本で思われているように決して平坦ではなかったことを知り、会場が使えなくなったアクシデントも、中朝の緊張関係の一端であることを後で実感することになる。