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福井

国内初の環境管理計画策定 北陸新幹線ルート・中池見湿地

北陸新幹線延伸ルートのトンネルが通る山(奥)と中池見湿地=敦賀市で

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 ラムサール条約に登録されている敦賀市樫曲(かしまがり)の「中池見湿地」を通る北陸新幹線延伸ルートのトンネル工事で、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が工事の影響を回避、低減する「環境管理計画」を策定した。湿地の適切な開発の指標となる国内初の例で、計画に基づいて今冬に着工するが、施工方法等を見直したため、工事完了は当初予定の二〇一九年十一月から、翌年夏にずれ込む。

 トンネルは、湿地帯東側にある水源となる山を南北に走る全長七百六十八メートル。うち四百二十五メートルが条約の登録範囲にかかる。環境管理計画の策定は、ラムサール条約締結国会議の決議で提唱されており、地元のNPO法人ウエットランド中池見など七団体が策定を要望していた。

 計画では(1)予防的措置の実施(2)緊急対策の事前策定(3)必要とされた環境保全措置の適切な実施-の三つの基本方針を設定。予防的措置では、トンネルが地下水を引き込まないよう、防水シートで覆われた非排水構造を採用。さらに地下水位や流量、水質といった水環境のモニタリングを継続して行う。ラムサール条約登録の理由の一つである渡り鳥のノジコなどを工事前からモニタリングするほか、湿地の生態系を特徴づける十四の動植物を指標生物として継続的に調査する。

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 緊急対策の事前策定では、湿地への水位低下といった影響が疑われるデータが取れた場合、データ解析の後に緊急対策を検討。応急的に水位を回復する措置として、代替水源の確保も記載した。また、既に実施された環境影響評価書などで必要とされた環境保全措置として、工事後の早期緑化や夜間照明の配慮など八項目を挙げた。

 ウエットランド中池見の笹木智恵子理事長は計画を策定したことを評価しながらも「工事の影響はすぐには出ないので不安。悪い前例にならないよう謙虚に進めてほしい」と注文した。

 本紙の取材に機構は「ラムサール条約登録湿地内の公共工事で環境管理計画を策定するのは今回が国内初と聞く。環境省、福井県、敦賀市、日本自然保護協会、地元NPOと議論を重ねて策定を進めてきた。計画に基づき、適切に工事を進めていく」とコメントを出した。

 機構は外部の専門家による「北陸新幹線、中池見湿地付近モニタリング調査等フォローアップ委員会」を一六年秋に設立。その時点では一般的な山岳トンネルの工事として一九年十一月の完了を予定していた。

 (大串真理)

 <中池見湿地> 絶滅の恐れのあるデンジソウなど2000種以上の動植物が見られ、2012年7月に湿地(25ヘクタール)と周辺の森林計87ヘクタールがラムサール条約に登録された。地下に堆積する泥炭層には約10万年分の気候変動の記録が残るという。

 

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