オーバーロード ありのままのモモンガ 作:まがお
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これは女の子にモテる為に、そこそこ強い冒険者が、命を賭けて暴走しただけの話である。
俺の名はルクルット・ボルブ。
エ・ランテルで活動する冒険者チーム『漆黒の剣』のメンバーの一人だ。
アンデッド大量発生の件で活躍したり、ついに金級になったりと、割と頑張っている。
自分でも冒険者としての実力が、上がってきている実感もある。
しかし、一つだけ問題がある、モテないのだ……
銀級から金級になったのに何も変わらない。顔はそこまで悪くないと思うし、こう見えて惚れたら結構一途なつもりだ。
金級の冒険者だから、収入だってこれからどんどん増える、将来的に有望株だろう。
これだけ条件が揃っているのにモテない…… 何かが、そう後一つ何かが足らないのだ。やはり、漢らしさだろうか?
こうなったら嘗て考えた、最終手段を取るときが来たのかもしれない。
真の冒険者として、男として、時には危険を犯してでも冒険しなければならない。
トブの大森林、そこにいるとされる森の賢王に会いに来た。
「某の支配領域に、ニンゲンが何の用でござるか?」
「単刀直入に言う、俺は嫁が欲しいんだ!! だから、どうか協力してくれ!!」
ルクルットは賢王と呼ばれる知力に、その魅力に賭けたのだ。自分に足りないモノを、チームで補うのは冒険者では当たり前のこと。
一人でナンパが上手くいかないのならば、仲間を用意すれば良いのだ!!
しかも、相棒が森の賢王ならば、間違っても女の子を代わりに取られる事は無いだろう。
「いい眼をしてるでござるな…… 番を手に入れるために、命をかけるとは見上げた根性でござる。某も番を欲する気持ちは分かるでござる。なので、その根性に免じて、一度だけ協力するでござるよ!!」
「ありがとう!! 森の賢王!!」
ルクルットは一回きりの条件で、森の賢王を連れて街に凱旋した。
しかし、モテたのは森の賢王のみ、ルクルットは相変わらずモテなかった…… ルクルットの魅力は雌である魔獣にすら勝てなかった……
「ルクルットっておちゃらけてますけど、時々凄い根性ありますよね」
「あの行動力は、見習う部分もあるのである」
「リーダーとしては、一言相談して欲しかったんだが…… してたら認めなかったけど」
森の賢王の隣で膝をついて、落ち込んでいるルクルットを除き、『漆黒の剣』は今日も元気である。
「モモンガ様!! あっちに凄いおっきいモフモフが歩いてますよ!!」
「なんだあれ? でかいハムスターか? この世界は本当に面白いな……」
周りの反応と、自分の反応の違いに大きく差がある。
モモンガは強さの感覚以外にも、自分の常識はこの世界とズレていることを実感するのだった。