福岡県の紅葉名所「千如寺」で、紅葉だけじゃない楽しみ方教えます
2018.10.18 更新
福岡市中心街から車で約50分、糸島の雷山(らいざん)の中腹に「雷山千如寺大悲王院(らいざんせんにょじだいひおういん)」(以下、千如寺)はあります。紅葉の名所として名高く、楓の大木が真っ赤に色づく秋には多くの参拝客で賑わう寺院ですが…いえいえ、紅葉だけではないんです!全国的に見てもとっても貴重な体験ができる千如寺の楽しみ方をご紹介します。
1000年を超える長い歴史を持つ古刹へ
寺伝によれば千如寺の開山は178(成務天皇48)年。インドから渡来した清賀(せいが)上人によって開山したと言われています。「悪を転じて善と化す。邪を転じて生と化す。…」など十転化の功徳があるとされる「サムハラ」(=お守り)のお授け所としても有名です。
▲山の中腹にあるため夏場でもひんやり涼しい
千如寺は元々、現在の雷神社横にありました。しかし明治維新の神仏分離令により、廃寺に。その後1752(宝暦2)年に福岡藩主である黒田継高(つぐたか)が建立した「大悲王院」に移されたことで、「雷山千如寺大悲王院」と名付けられました。
千如寺は元々、現在の雷神社横にありました。しかし明治維新の神仏分離令により、廃寺に。その後1752(宝暦2)年に福岡藩主である黒田継高(つぐたか)が建立した「大悲王院」に移されたことで、「雷山千如寺大悲王院」と名付けられました。
紅葉・雪景色…季節によって美しい表情を見せる前庭や境内
千如寺の中に入ると、まず目に入るのが砂紋が施された見事な和庭園。そして、中央でひと際存在感を放つのが樹齢約400年の楓の木。この楓の木は、福岡県の天然記念物に指定されています。
左右に大きく広がる枝に茂る緑葉は、紅葉時期には真っ赤に色づき、カメラを持った参拝客で賑わいます。紅葉は例年、11月上旬から下旬までが見ごろで、紅葉の散りかけの時期まで様々な姿で楽しませてくれますよ。
▲11月下中旬、燃えるような赤を身にまとう大楓の木
▲散りかけの時期も見事!まるで緋毛氈(ひもうせん)を敷いたように、地面が真っ赤に染まります
平時は入ることはできませんが、千如寺の入り口はもう一つ、京都醍醐寺仁王門の様式を参考に建立された仁王門もあります。
平時は入ることはできませんが、千如寺の入り口はもう一つ、京都醍醐寺仁王門の様式を参考に建立された仁王門もあります。
▲紅葉時の仁王門
仁王門の左右には、二体の金剛力士像が鎮座!
仁王門の左右には、二体の金剛力士像が鎮座!
▲向かって右側には開口の阿形像(あぎょうぞう)
▲左側には口を結んだ吽形像(うんぎょうぞう)
ここまでは、境内の外から眺められる「千如寺」。外からでも十分美しい前庭や厳格な雰囲気が楽しめます。が、ぜひぜひ時間を作って寺院内の拝観をしてみてください。国の重要文化財をその目で拝観することができるのは貴重ですよ。
ここまでは、境内の外から眺められる「千如寺」。外からでも十分美しい前庭や厳格な雰囲気が楽しめます。が、ぜひぜひ時間を作って寺院内の拝観をしてみてください。国の重要文化財をその目で拝観することができるのは貴重ですよ。
国重要文化財の観音様を間近で拝観できる?
歴史や前庭の景観ももちろん素晴らしいのですが、その奉安されている文化財もすごいんです!「木造千手観音立像」と「木造清賀上人座像」は国の重要文化財、「木造多聞天像」と「木造持国天像」は福岡県の指定文化財に指定。それらをすべて間近に拝見できるって、ちょっとすごいと思いませんか?しかも、僧侶の方による寺院の案内もいただけるとのこと。
寺院内の撮影は通常NG!なのですが今回は特別に許可をいただき、寺院内をリポートします。
受付で拝観料(大人400円)を支払って寺院の中へ入り、回廊を進むとその先に階段が。
寺院内の撮影は通常NG!なのですが今回は特別に許可をいただき、寺院内をリポートします。
受付で拝観料(大人400円)を支払って寺院の中へ入り、回廊を進むとその先に階段が。
山の斜面を利用して建てられているため、寺院内の通路は階段もたくさん。庭に面した階段もあり、そこから眺める景色もまた格別です。取材時は海外の方も参拝に訪れていましたよ。
階段を上りたどり着いたのは「観音堂」。ここで特別な祈願があれば記入します。
階段を上りたどり着いたのは「観音堂」。ここで特別な祈願があれば記入します。
▲家内安全、子育てなど、どれも祈願したいです…
そのほか護摩木もありました。「交通安全」「良縁祈願」「家内安全」など、祈願したい護摩木に名前を書いて奉納すると毎月17日のご縁日に護摩焚にてお焚きあげされます。
そのほか護摩木もありました。「交通安全」「良縁祈願」「家内安全」など、祈願したい護摩木に名前を書いて奉納すると毎月17日のご縁日に護摩焚にてお焚きあげされます。
▲護摩木は1枚500円
また、千如寺は安産や良縁祈願にもご利益があるそうで、御守もたくさんありました。
また、千如寺は安産や良縁祈願にもご利益があるそうで、御守もたくさんありました。
▲男女の合せ絵になる御守も。夫や彼に持ってもらうと縁が長続きしそうですね。各500円
前述したように、千如寺は「サムハラ」(=お守り)が有名。身代御守を買い求める方も多いそうですよ。
受付をして中へと進むと、木柵越しに観音様のお姿を拝観することができます。こちらのスペースは外陣と言って、参拝客の待合所になっています。
受付をして中へと進むと、木柵越しに観音様のお姿を拝観することができます。こちらのスペースは外陣と言って、参拝客の待合所になっています。
▲「外陣」スペース。椅子もありますよ
案内は、順次執り行われます。先にご案内が始まっていれば、ここで次に始まるのを待ちます。
取材時は5組ほどの参拝客がいて、10名ほどでご案内を聞くことができました。外陣のスペースで、僧侶が千如寺の歴史や見どころを説明してくださるのですが、外陣の窓から眺める庭も見どころの一つ。この庭にある池は「心」の文字を模して造られていて、斜俯瞰(斜め上)からその姿を眺めることができます。
案内は、順次執り行われます。先にご案内が始まっていれば、ここで次に始まるのを待ちます。
取材時は5組ほどの参拝客がいて、10名ほどでご案内を聞くことができました。外陣のスペースで、僧侶が千如寺の歴史や見どころを説明してくださるのですが、外陣の窓から眺める庭も見どころの一つ。この庭にある池は「心」の文字を模して造られていて、斜俯瞰(斜め上)からその姿を眺めることができます。
それから観音堂の内部「内陣」へ。入る前に、僧侶に身を清めるために灰のようなものをいただきます。ん?これは何でしょう。
▲何だか良い香り…。取材班のため特別に羽織を着させてもらっています
実はこちら、自然の香料を混ぜ合わせて作られたお香なんです。塗香(ずこう)と呼ばれるこのお香を手に馴染ませることで、身を清めるそうです。
実はこちら、自然の香料を混ぜ合わせて作られたお香なんです。塗香(ずこう)と呼ばれるこのお香を手に馴染ませることで、身を清めるそうです。
▲両手でいただき、揉みこむように手に馴染ませます
さて、いよいよ内陣に入り、観音様のお姿を拝観…!
さて、いよいよ内陣に入り、観音様のお姿を拝観…!
おお~!!
像高463.6cmのお姿は神々しいの一言。目の前で拝観するとその大きさに圧倒されますが、ずっと拝見していると何だか穏やかな気持ちになっていきます。柔和な御顔はまるで私たちに微笑んでくださっているかのよう。イライラしている普段の自分を改め、子供や旦那さんにもっと優しくしよう…。そう思えてきます…。
この観音様、正式には「木造十一面千手千眼観音立像」と言い、鎌倉時代に造られたもの。頭部に十一面、本体に四十二本の手、光背に千の手があり、千の慈眼、千の慈手を持つ、衆生済度(しゅじょうさいど=生きているものを救済し、悟りを得させる)の御姿だそう。
こちらは前述のとおり、何と国の重要文化財。明治時代までは国宝に指定されていたという有難い仏像。にもかかわらず、こんな間近に見ることができるなんて…!
そう感動していましたが、さらに驚き!!
像高463.6cmのお姿は神々しいの一言。目の前で拝観するとその大きさに圧倒されますが、ずっと拝見していると何だか穏やかな気持ちになっていきます。柔和な御顔はまるで私たちに微笑んでくださっているかのよう。イライラしている普段の自分を改め、子供や旦那さんにもっと優しくしよう…。そう思えてきます…。
この観音様、正式には「木造十一面千手千眼観音立像」と言い、鎌倉時代に造られたもの。頭部に十一面、本体に四十二本の手、光背に千の手があり、千の慈眼、千の慈手を持つ、衆生済度(しゅじょうさいど=生きているものを救済し、悟りを得させる)の御姿だそう。
こちらは前述のとおり、何と国の重要文化財。明治時代までは国宝に指定されていたという有難い仏像。にもかかわらず、こんな間近に見ることができるなんて…!
そう感動していましたが、さらに驚き!!
▲手が届く位置で観音様を拝めるなんて!(もちろん、触るのは禁止されています)
ご案内の順路が観音像の真下になっているんです!!
観音様のお足元を通れて、下から観音様を見上げるなんて、めったにできない有難い経験。こんなことができる寺院は、全国的にも珍しいそう。
観音様の足元を抜けると、「帝釈天(たいしゃくてん)」や「大梵天(だいぼんてん)」など二十八部衆の仏像がズラリと並ぶ通路へ。
ご案内の順路が観音像の真下になっているんです!!
観音様のお足元を通れて、下から観音様を見上げるなんて、めったにできない有難い経験。こんなことができる寺院は、全国的にも珍しいそう。
観音様の足元を抜けると、「帝釈天(たいしゃくてん)」や「大梵天(だいぼんてん)」など二十八部衆の仏像がズラリと並ぶ通路へ。
▲ここを通るだけで有難い気持ちになります~
合計27の仏像が並び、仏様の御顔はそれぞれ異なります。雄々しい御顔、微笑んだ御顔、怒っている御顔…。一体ずつ手を合わせたくなりますね。
観音堂を抜けると、また山手へ繋がる階段が。階段を上っていると五百羅漢像が目に入ってきます。
観音堂を抜けると、また山手へ繋がる階段が。階段を上っていると五百羅漢像が目に入ってきます。
▲壮観!ズラリと並ぶ五百羅漢像です!
斜面一面に五百羅漢像!木々の間を縫って設えられた羅漢像の御姿は迫力がありますよ。こちらは写真撮影OKなので、参拝客の多くはこちらでパシャパシャ撮影していました。
さて、階段を上った先にあるのは小さなお堂です。
中に入ると、豪華絢爛!金箔が張られた御堂の壁面や天井、柱には豊かな彩色が施されています。華やか~!!
斜面一面に五百羅漢像!木々の間を縫って設えられた羅漢像の御姿は迫力がありますよ。こちらは写真撮影OKなので、参拝客の多くはこちらでパシャパシャ撮影していました。
さて、階段を上った先にあるのは小さなお堂です。
中に入ると、豪華絢爛!金箔が張られた御堂の壁面や天井、柱には豊かな彩色が施されています。華やか~!!
▲足を踏み入れた瞬間、歓声があがります!
このお堂は、「開山堂(かいさんどう)」。正面には「木造清賀上人座像」を奉安していますが、前述のとおり、この座像も国指定の重要文化財!こちらも鎌倉時代の作品です。
このお堂は、「開山堂(かいさんどう)」。正面には「木造清賀上人座像」を奉安していますが、前述のとおり、この座像も国指定の重要文化財!こちらも鎌倉時代の作品です。
▲千如寺をはじめ、周辺の七ケ寺を建立された清賀上人の座像で、左手に経巻、右手に念珠を持っていらっしゃいます
四つの柱には四天王が、壁には八大菩薩、十二天、十六羅漢、八祖大師が描かれているんですよ。
そして欄間にも注目!
四つの柱には四天王が、壁には八大菩薩、十二天、十六羅漢、八祖大師が描かれているんですよ。
そして欄間にも注目!
▲菖蒲など春の山々の様子が描かれています
▲白い椿の花が描かれた部分も
草花で四季を表現されているんです。お堂の中をぐるりと回って、隅々まで描かれている絵を眺めるのも楽しいですよ。
草花で四季を表現されているんです。お堂の中をぐるりと回って、隅々まで描かれている絵を眺めるのも楽しいですよ。
静けさの中、写経で心落ち着かせる
開山堂内陣を拝観すれば、参拝の順路は終わり。ですが、お時間あればぜひ体験してほしいのが写経です。庭園に面した一室でゆっくり写経を体験することができるんです。
▲好きな席で写経することができますよ
実は筆者、数年前の紅葉時期に体験したことがあるのですが、写経体験の約1時間が本当に静かで、体験するだけで心がすうっと軽くなった感覚でした。ピンと張ったある程度の緊張感と、写経途中外を見やれば飛び込んでくる素晴らしい庭の景色。聞こえてくるのは、風が吹いた際に起きる葉擦れの音くらいでした。
実は筆者、数年前の紅葉時期に体験したことがあるのですが、写経体験の約1時間が本当に静かで、体験するだけで心がすうっと軽くなった感覚でした。ピンと張ったある程度の緊張感と、写経途中外を見やれば飛び込んでくる素晴らしい庭の景色。聞こえてくるのは、風が吹いた際に起きる葉擦れの音くらいでした。
▲文字をなぞることで集中できます!
写経は1巻1,000円で、書いた写経はこちらでご祈祷された後に京都府にある本山大覚寺にお納め、ご祈祷いただきます。なお、2018年は嵯峨天皇が写経をお書きになられて1200年を迎える年。嵯峨天皇が書かれた「般若心経」を開封する60年に一度の年にあたるそう。正式開封をされる有難いこの機会に写経をしてみてはいかがですか。
写経は1巻1,000円で、書いた写経はこちらでご祈祷された後に京都府にある本山大覚寺にお納め、ご祈祷いただきます。なお、2018年は嵯峨天皇が写経をお書きになられて1200年を迎える年。嵯峨天皇が書かれた「般若心経」を開封する60年に一度の年にあたるそう。正式開封をされる有難いこの機会に写経をしてみてはいかがですか。
写経の後は、のんびり庭を眺めて。ここ「千如寺」には、あとのスケジュールを立てずに訪れてください。ここではきっと、ぼんやりする時間こそが大事な過ごし方。観音様や仏様に参拝し、写経で心落ち着けて、外に広がる景色を眺める。豪華なランチもエンターテインメントもないけれど、疲れた心にちょっと贅沢な休日になりますよ。
雷山千如寺大悲王院
福岡県糸島市雷山626
[祈願・拝観受付時間] 9:00~16:30
[定休日]なし
[拝観料金]大人400円、中学生以下無料(入山料含む)
※11月は前庭・大楓の紅葉のみ見学の方も入山料100円要
092-323-3547
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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