「元気ないです、十勝川温泉」 地震で約1万泊キャンセルの観光地“自虐ポスター”に込めた思いを聞いた
まずは道内から、と始めたポスター。しかしその影響は予想以上に大きかったようです。
十勝川温泉観光協会が公開した、ある1枚のポスターが日本全国で注目を集めています。そこに書かれているのは、「元気ないです、十勝川温泉」「見回りついでに、入浴しちゃいました」「ヒマ過ぎちゃって、サービス向上」といった“自虐”の数々。これは……たくましい!
2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震は、2016年の熊本地震以来の震度7を観測しました。大規模な停電が発生するなど大きな被害も発生し、現在も各地で復興に追われています。
そしてこうした大規模な天災に見舞われた際、すぐに影響を受けるのが観光業界です。北海道全体で宿のキャンセルが相次ぐなど、大きな痛手となってしまいました。
そんななかで出てきた、今回の音更町のユニークなポスター。10月10日にデザインを公開したところ、全く間にネット上などで拡散されるほど注目を集めました。本日18日からは、実際に各所に貼り出されます。
一体どのような思いで作られたものなのか、十勝川温泉観光協会に話を聞いてみました。
同協会によると、始まりは地震の影響で発生した音更町内での大量の宿泊キャンセルによるといいます。約1万泊のキャンセルが発生し、しかも時期的に一番の稼ぎどきである秋真っ只中。そのダメージは、深刻なものでした。
特に、メインの客層であった札幌からの来客数減少が顕著で、同じ被災地であるという心情的な理由が多かったとのこと。本州や海外からの来客を呼び戻すことも必要ですが、まずは道内での来客数を戻すことが最優先となりました。
現在北海道では「元気です北海道」キャンペーンを実施しており、道内各地で「元気です〇〇町」といったようなキャッチコピーで復興をアピールしています。しかし、各地で一斉に同じコピーでアピールをしてもただ流れていくだけで、多くの人の目には止まらないのではないかという意見が協会内で上がりました。
そこで観月苑の社長でもある組合長から出た意見が、観光は非日常の提供が目的であり、現状を分かってもらいながらもくすっと笑えるようなポスターを作ろう、というものでした。
熊本地震のときに同じく被害を受けた別府温泉では、「今の別府にとって、お客様は(マジで)神様です」「別府は今日も元気だぞー!」といった明るくユニークなポスターを公開して話題になりました(関連記事)。協会では当時別府に視察に行き「こんな状況でも明るく余裕を持って行動できておりすごい」と感じた経験があり、今回のポスターのイメージはすぐに湧いてきたそうです。
現状、十勝川温泉は実際に元気のないところもあるというのは事実。しかし、すでに起きてしまった1万泊のキャンセルを取り戻すことはできないので、前を向いてキャンセル分を少しでも取り戻すことが大事とし、ピンチをチャンスとできるようにしていきたいとのことでした。
ポスターのデザインが公開されて約1週間が経過しましたが、すでにネット上では広く拡散されています。協会では、まだ全国的にはマイナーな十勝川温泉の名前が日本中で多くの人の目に触れるだけでも来てもらえる機会が増えると考えており、とてもありがたいことだと語ってくれました。
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