健康診断は受けるべき?フリーランス・個人事業主でも安く受けられる健康診断の種類

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執筆者:カトウ・マユ

健康診断は受けるべき?フリーランス・個人事業主でも安く受けられる健康診断の種類

フリーランスになってから一度も健康診断を受けていない、どこで健康診断が受けられるかわからないし、忙しいから面倒になってしまう…。皆さんにも思い当たる節はありませんか?

しかし、進行した病が見つかって長期の治療が必要となれば、フリーランスは一気に収入が不安定になってしまいます。では、フリーランスは、どこでどのくらいの費用で健康診断が受けられるのでしょうか? 自治体の制度や補助金を活用する方法もご紹介します。


POINT
  • フリーランスも健康診断を受けた方がイイ!
  • フリーランスが健康診断をお得に受けるには?
  • 健康診断と人間ドックは違う? 女性が受診すべき検査は?

フリーランスも健康診断を受けた方がイイ!でも、経費になるの?

フリーランスや個人事業主の方には、何年も健康診断を受けていないという方もいるのではないでしょうか。

会社員であれば、体調を崩して休んでも有給休暇や「傷病手当金」という制度があり、仕事も誰かが自分の代わりやサポートをしてくれます。しかし、1人で働くフリーランスの場合は、自分が体調不良になったら仕事が受けられなくなり、収入減に直結してしまいます。

また体調不良が長引けば、受けたい仕事も受けられず、すでに進めている仕事の納期に間に合わなくなることもあり得ます。どんな立場でも「健康管理も仕事のうち」ですが、自分が働かなければ収入が得られなくなるフリーランスや個人事業主は、人一倍体調管理に気をつける必要があります。

条件を満たしている従業員が受ける健康診断は、法律で定められた会社の義務なので、その費用を会社が負担します。また多くの会社では、労使間の協議によって健康診断を受ける時間は勤務時間内とし、その時間分の給与が支払われています。

個人事業主でも従業員を1人でも雇用すれば、その従業員に健康診断を受診させる義務があります。個人法人問わず「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない」と労働安全衛生法で定められます。怠ると事業者は50万円以下の罰金が科せられることになります。

受診の対象者は常時使用する労働者だけでなく、正社員の週所定労働時間の3/4以上働くパートやアルバイト労働者も該当します。一般的な健康診断の場合は、雇い入れ時の雇入時健康診断と1年以内に1回の定期健康診断を実施しなくてはなりません。

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従業員の「福利厚生費」にはどんなものがある?

このように従業員の健康診断は事業主が受診させる義務がありますが、フリーランスや個人事業主の場合は、事業者自身の受診は義務ではなく本人自身が健康確認のために受診するものです。従業員として雇用されているわけではないですし、事業の売上を上げるための経費とは言えないので、「事業主自身の健康診断費用」は経費として認められません。同様に青色事業専従者として働く家族も、健康診断や人間ドックの受診費用を事業の経費にすることはできません。ちなみに法人の場合は、社長への福利厚生費として、健康診断費用を計上することが認められます。

フリーランスが健康診断をお得に受けるには?

さて、フリーランスは健康診断をどこで受けられるのでしょうか。会社員の多くは無料で受けられるのですから、できるだけお金をかけずに受診したいものです。実は、フリーランスや個人事業主も格安に受診できる方法があります。

市区町村など自治体の一般健康診断

職場や学校などで健康診断を受診することがない個人に向けて、市町村など自治体が実施している健康診断です。住んでいる自治体によっては、無料または500円程度など格安で健康診断を受診できるところもあります。自治体によって対象年齢や条件、金額が異なります。例えば、東京都板橋区の場合は以下の通りです。

・35歳...35歳検診の対象
 ※(検査内容)1.問診 2.身体計測・血圧測定 3.診察 4.検尿 5.血液検査 6.胸部レントゲン 7.うつスクリーニング  8.食事調査 (費用)無料

・36歳~39歳...区民一般健康診査の対象
 ※(基本検査内容)1.問診・身体計測 2.血圧測定 3.身体診察 4.検尿 5.血液検査 ほか心電図等追加検査項目あり (費用)無料

特定健康診査(通称メタボ健診)

40歳~74歳の人が受けられる、主に生活習慣病を予防するための健康診断です。上記のような基本検査内容による健康診断の結果、これは国で定められたものなので、どの自治体でも実施しています。住んでいる地域の国民健康保険に加入し、年度途中にその国民健康保険の加入、脱退、転出の異動のない場合に受診できます。

特定健診の結果から、生活習慣の改善が必要と判断された場合、特定保健指導を自治体によって無料または500円、1000円程度で受けられます。対象者は腹囲やBMIが一定以上で、主に血圧、血糖値、中性脂肪またはHDLコレステロールの数値、喫煙歴によるリスクの数から選定されます。

保険組合指定の健康診断

会社を退職する際に加入していた保険組合で手続きをすれば2年間任意継続することができます。健康診断で補助される金額や条件は保険組合によって異なります。

全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、健診費用は健診機関によって異なり、年度内1人1回に限り健診費用の一部を補助します。受けることのできる健診は、一般健康診断のほかに付加検診、乳がん検診、子宮頸がん検診(20歳~38歳の偶数年齢の女性)、肝炎ウィルス検査、特定健康診査になります。

職業別の健康保険組合でも、健康診断を受けることができます。例えば、イラストレーターやWEBデザイナー、ライターといった職種の方が加入されている文芸美術国民健康保険組合(文芸美術国保)の場合、加入者は年に1回、健診専門のクリニックで基本健診まで受診できます。人間ドックや胃カメラ、がん検診は別途有料です。

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近くの病院での健康診断

30代以下で市町村の一般健診が受けられない、または保険組合の任意継続をしていない場合は、有料で健康診断を行っている近くの病院を利用しましょう。費用は数千円から1万円程度です。

あんしん財団に加入する

あんしん財団とは、ケガの補償、災害防止・福利厚生の補助金制度のサービスもある、中小企業向けの保険です。個人事業主も月額2,000円で加入することができます。

加入者には1年に1回、定期健康診断の補助金を1名につき2000円まで支給されます。人間ドック、脳ドック、PET検診を受けた際には、加入期間によって1名につき最大20000円が支給されます。

健康診断と人間ドックは違う?女性が受診すべき検査は?

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ここで、健康診断と人間ドックの違いについて確認しましょう。

健康診断
健康診断は、厚生労働省の労働安全衛生法によって職場や自治体が実施することが定められているものです。先述の通り、一般健康診断は、事業主が従業員に対して、1年に1回以上実施することが義務付けられています。

一般健康診断の検査内容は、基本健診は「A健診」「健康診断 Aコース」などと呼ばれることが多く、労働安全衛生法で事業主に義務付けられた健診事業の役割を担っています。検査項目は下記の通りです。

  • 身体計測(身長・体重)
  • 腹囲
  • 視力
  • 聴力
  • 診察
  • 血圧
  • 脂質(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール)
  • 肝機能(GOT、GPT、γ-GTP)
  • 糖代謝(空腹時血糖)
  • 痛風(尿酸)
  • 腎機能(血清クレアチニン・eGFR)(40歳以上)
  • 血液[赤血球数、血色素量]
  • 尿(蛋白、糖)
  • 胸部X線
  • 心電図
  • 保健指導(40歳以上)

40~74歳には生活習慣病の予防と早期発見を目的とした特定健康診査も追加されます。

人間ドック
人間ドックは一般健康診断と比較してより精密な検査を行うもので、原則として健康保険の適用外です。たとえば、一般健診では目の検査は視力検査のみですが、人間ドックの場合は、眼底や眼圧も検査します。また、一般健診での呼吸器の検査は胸部X線だけですが、人間ドックでは呼吸機能検査も追加されます。法廷検査項目が決まっておらず、医療機関によって検査項目が違います。

また、希望すれば、内視鏡やMRI、CTなど専門医療機器による高度な画像診断もでき、「タバコを吸うので肺がんの検査をしたい」などさまざまなプランから自分に適した検査を選べるのが人間ドックの特徴です。自分や家族に持病や既往症がある場合や、不規則でストレスが多い生活など生活習慣に不安がある方は、30代からの受診をおすすめします。

費用は基本検査の場合2万円程度から、追加検査が加わると10万円を超えることもあります。半日かけて検査するものもあれば、ホテルなどに1泊して2日がかりで行うコースもあります。あんしん財団や一部自治体が人間ドックの受診費用の一部を補助しているので、受診の際には確認しましょう。

がん検診
特定の病気を発見するための検診のうち、がんに特化した検診は、5大がん(胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がん)の早期発見を目的としています。主に地方自治体が地域住民に対して検査方法や検査場所を指定して行っています。40代になったら、1年おきにがん検診を受けましょう。

女性特有のがんである乳がん、子宮頸がんの検査は、自治体が主に30歳以上の任意の女性に対し、無料または格安の受診券を送付しています。乳がんも子宮頸がんも初期は自覚症状がないまま進行するものです。該当年齢だけの受診では不安な場合は1年おきを目安に近くの病院で検査を受けておきましょう。

健康診断はセルフメディケーション税制の対象要件。結果、医療費削減につながる?

国が企業に対して、正社員などの常時雇用者に健康診断を義務付けるようになったのは、医療費の軽減が目的です。フリーランスや個人事業主の場合も、自身の健康を管理することは医療費の削減につながります。また、2017年から始まった医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」は、健康診断や予防接種など、健康の維持増進や疾病への予防など一定の取り組みを行っている方が要件になりますので、控除のひとつとして、おぼえておきたいですね。

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フリーランスの健康診断は経費としては認められません。目先のことだけを考えるとデメリットに思えてしまいがちなフリーランスの健康診断ですが、フリーランスでも格安でお得に健康診断を受ける方法もありますし、セルフメディケーション税制の要件にもなり、結果的に医療費軽減や節税、そして自身の健康にもつながります。

スキルや能力が高くても、病気になれば仕事にも100%の力を発揮することができず、仕事を休んでも会社員のように休暇の手当てもありません。だからこそ、フリーランスは会社員よりも一層自分の身体を気遣う働き方が求められます。長く活躍するためには、自分の健康状態を把握しておきたいものです。自覚症状のない病気が健康診断で見つかった話を、知人やマスメディアを通じて誰もが一度は聞いたことがあるのではないでしょうか? 体調を崩す前に、そして病気の早期発見と早期治療のためにも毎年健康診断を受診することを習慣づけましょう。
また、健康診断でわかる疾患だけでなく、歯科検診や筋力トレーニングなども定期的に行い体のトラブルを未然に防ぐことも有効でしょう。

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photo:Getty Images

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カトウ・マユ
カトウ・マユ

1974年生まれ。大学卒業後、出版社等に勤務。出産後は個人事業主として、主にwebメディアの編集業務を行う。会社員時代に子会社の経理・決算業務に携わる機会があり、簿記3級を取得。

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