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2018年10月12日(金)

“モニタリングポスト撤去” 住民は…

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高瀬
「こちらは原発事故後、福島県内に設置された『モニタリングポスト』という機器です。
放射線量を測定して、リアルタイムで表示しています。」

和久田
「原発事故から7年余りですが、国が、このモニタリングポストを『撤去する』という方針を打ち出して、住民の間に波紋が広がっています。」

モニタリングポスト 8割が撤去へ

桜田拓弥記者(福島放送局)
「福島市の公園に来ています。
子どもたちが普段よく遊ぶ場所に設置されているのが、モニタリングポスト。
こちらの電光掲示板には、現在の放射線量が示されています」

原発事故のあと、各地に置かれたモニタリングポスト。
ほぼすべての学校のほか、公園や駅など、県内およそ3,000か所に設置されています。
このモニタリングポストをめぐって、今年(2018年)3月、国は突然、1つの方針を打ち出しました。
放射線量が低いと判断した地点で、2021年3月までに測定を終了し、8割に当たる2,400か所で撤去するとしたのです。

住民
「(モニタリングポストは)身近になってしまった。
子どもが外で遊ぶようになってからは、安全かなとか、やっぱり心配はあるので。
安全材料として、あると安心。」

住民
「まだ復興も完全に終わっていないし、完璧に安全と言えるようになるまでは置いておいたほうがいいと思う。」

撤去に踏み切る理由

なぜ国は撤去に踏み切るのか。
その理由として上げているのが、県内のほとんどの地域で、放射線量が原発事故前とほぼ同じレベルにまで下がったこと。

また、機器の維持管理にも年間6億円がかかる上、更新時期も近づき、さらなる費用がかかることをあげています。
撤去のあと、国は、分析のため行政機関の敷地の一角に設置した別の機器で観測を続けるとしています。
そこには一般の人向けのデジタル表示はありませんが、結果を10分おきにホームページで公表しているため十分だとしています。

原子力規制庁武山松次監視情報課長)。
「600台、県全域においてある可搬型ポスト(国の分析用)があります。
迅速に状況把握することができる。
リアルタイム線量測定システム(撤去予定のモニタリングポスト)について、残さないとだめだという状況ではないと考えています。」

違和感を抱く保育の現場

国の撤去の方針に強い違和感を抱いているのが、子どもたちを預かる現場の人たちです。
震災当時、福島市で保育士をしていた大橋玲子さんです。
原発事故以来、保育所では、見えない放射線との戦いを強いられました。
自ら専用の機器を手にし、散歩の前には、およそ2時間かけて放射線量を測定して周ったといいます。

保育士 大橋玲子さん
「見えないから余計怖かったです。
眼鏡をかけると放射線があるところが光って見えるとか、そういう機械が欲しいなと本当に思ったくらい。」

そうした中で設置されたモニタリングポスト。
リアルタイムで放射線量が表示され、その値も次第に低下。
健康に影響のない環境にいることが、常に確認できるようになりました。

保育士 大橋玲子さん
「目に見えない放射線がどこにあるのか、それを目に見える形で示して、日常的に確認するのが習慣化しているので、いまこの安全な状態が続いているという確認は、目で見て、自分たち一人ひとりが納得して日々過ごしていくというのは、まだ必要なのではないのかなと。」

住民説明会では…

こうした意見を受けて、国が急きょ開催している住民説明会。
見直しを求める声が相次いでいます。

住民
「7年しか経っていない!
何考えてるの。
ほとんどの人は反対ですよ。」

住民
「モニタリングポストが唯一の安心材料なんです。」

住民
「お金とか機械をかえるのが大変だとかは、絶対理由にしてはいけないと思います。」

70%を超える市町村 撤去に反対

NHKは先月(9月)、モニタリングポストの撤去対象になっている福島県内の47市町村にアンケート調査を行い、「国の撤去の方針に賛成か反対か」を尋ねました。
その結果、70%を超える33の市町村が、撤去には反対と回答したのです。
この問題について、専門家は、合意形成のプロセスがおざなりになっていると指摘しています。

立命館大学 衣笠総合研究機構 開沼博准教授
「どういうふうにすれば、安心を取り戻せるのか、不信感を解消していけるのかを聞くような作業が足りていない。
急がば回れではないが、まず丁寧に説明を尽くして、意見を聞いて、どういう答えを出していくべきなのかということを調整していって、その上で決まった決定であれば、おそらく住民も長期的に納得していく。」

丁寧な対話を重ねてほしい

和久田
「スタジオには取材にあたった福島放送局の桜田記者です。
放射線量を可視化できることが重要だと考える人が多いんですね。」

桜田記者
「モニタリングポストを残してほしいと考える住民が多い大きな理由は、福島第一原発の廃炉作業が今後も長期間続くことです。
廃炉作業はいつ終わるのか具体的な見通しはたっておらず、最大で10メートルあまりの津波が、再び福島第一原発を襲う可能性も指摘されています。
こうした中で、多くの住民や自治体の担当者が、現在の態勢に安心感を感じ、はっきりと反対の声をあげていることが印象的でした。
一方で、モニタリングポストがあると放射線量が高い地域だと受け止められるとして撤去に賛成する人もいます。
NHKが行ったアンケートでは、観測態勢は十分だ、などの理由で47の自治体のうち3つの自治体が賛成と答えました。
それでも、話を聞いた人の多くは撤去に反対でした。
あの原発事故で、見えない放射線への不安を経験した人たちにとって、現在の放射線量を知ることがどれだけ大事なのか痛感しました。」

高瀬
「不安のためではなくて安心のために残してほしいという声が印象的でしたが、こうした声を受けて、国は今後どうする方針なんでしょうか。」

桜田記者
「年内いっぱいは、住民説明会を開いたあと、住民の意見を踏まえ、方針を見直すことも含めて検討するとしています。
撤去ありきで国の理屈を押し通すのではなく、専門家の指摘通り、丁寧な対話を重ねてほしいと思います。」

※なお、国が観測を続けるとしている可搬型のモニタリングポストには、デジタル表示はありますが、地元の住民の方には馴染みの薄いμGy(マイクログレイ)/hという単位で表示されていることやデータ収集を主な目的に行政機関の敷地の一角に設置されていることなどから、一般の人向けのデジタル表示ではないという趣旨でお伝えしました。※

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