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 筆者は先日、米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)の本社があるシアトル近郊で、商品発送拠点「フルフィルメントセンター(FC)」を見学する機会を得た。噂に聞く「棚を運ぶロボット」を直に観察すると、ロボットには向く仕事と向かない仕事があることを理解できた。写真を交えて見ていこう。

 今回アマゾンが公開したのは「シアトル・タコマ国際空港」に近いワシントン州ケント市にある「BFI4」という施設だ。アメリカン・フットボールのフィールドに換算して28個分(約15万平方メートル)という巨大な建物には3000人の従業員が働いている。施設は年中無休24時間稼働だが、ピッキング作業などは1日に2時間休止する。設備やロボットのメンテナンスを実施するためだ。

アマゾンのフルフィルメントセンター「BFI4」
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 アマゾンのFCの目玉と言えばやはり、棚を運ぶロボットだ。フロアには柵で囲まれて人間が入れないスペースがあり、そこには商品を満載した黄色い布製の棚「Pod」が数百~数千台並んでいる。そしてこの棚をロボット掃除機「ルンバ」を大きくしたようなオレンジ色のロボット「Drive」が、あちらこちらへと運んでいる。Driveはアマゾンが2012年に買収したキバシステムズ(Kiva Systems)、現アマゾンロボティクス(Amazon Robotics)が開発したものだ。

柵に囲まれた棚エリア
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棚を運ぶロボット「Drive」
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 アマゾンのFCでは商品を格納する棚が動くので、人間は決められた場所にとどまって棚入れや棚出し(ピッキング)の作業をする。かつては人間が棚の間を動き回って商品をピッキングしていたが、動く主体が逆転した。棚入れや棚出しの手順を詳しく見ていこう。

指示に従い棚に商品を格納

 棚に入れる商品は黄色いプラスチック製のコンテナやメーカー製の段ボール箱に入った状態で、棚入れ作業員のところまで運ばれてくる。棚入れ作業員の仕事は、その中の商品を取り出してロボットが運んできた棚に格納することだ。

 作業員はまずコンテナや段ボール箱から商品を取り出し、そのバーコードをスキャナーで読み取る。そうすると液晶モニターに「スペース3Fに格納」などと表示されるので、作業員は指示に従って商品をスペースに格納する。商品を格納したらそのスペースの2次元バーコードをスキャナーで読み取る。こうすることで「商品Aを棚Xのスペース3Fに格納した」という情報がシステムに登録される。

棚入れ作業の様子
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