生命保険は、自分の身に万一のことがあったり、病気やけがをしたりした時に、自分や家族の暮らしを守ってくれる大切なものです。
しかし、それは分かっていても、「ではどんな保険に入ればいいのか」「今入っている保険が自分に合っているのか」というのはなかなか難しいと思います。
その要因は、わが国できちんと生命保険についての教育がなされてこなかったことや、従来の保険業界が「とにかく契約を獲得できればいい」という体質であったことにあると思います。
私は、生命保険は4つのタイプに分けてそれぞれの役割を知っておけば十分だと考えています。それだけで、自分のニーズに合ったものを正しく選ぶのに役立ちます。
そこで、この記事では、生命保険を4つのタイプに分け、それぞれの本当の役割と活用法を分かりやすくお伝えします。
他にはない説明方法で戸惑うかも知れませんが、全て嘘偽りのない本音です。ぜひ、最後までお読みになってお役立ていただけたらと思います。
1.亡くなった時に遺族の暮らしを守る保険
まず、自分の身に万一があった時に、遺族の暮らしを守る保険です。
特に、60歳くらいまでの働き盛りで家族を養っている方に必要な保険です。
以下の3種類だけ押さえておいていただければと思います。
- 低い保険料で多額の保険金が受け取れる「定期保険」
- 天国から毎月お金が振り込まれる「収入保障保険」
- 亡くなった時の整理費用を準備する「終身保険」
働き盛りのうちは亡くなる確率は低いです。しかし、逆に言えば、万一のことが起こってしまうと、残された家族は生活が苦しくなるリスクがあります。
もちろん「遺族年金」の制度はありますが、あくまで最低限しか保障されていません。
そこで足りない分をカバーするのが、上の3つの生命保険です。
1.1.低い保険料で多額の保険金が受け取れる「定期保険」
まず、定期保険です。
定期保険は、「●年」「●歳まで」というように保険期間が決まっていて、その期間中万一のことがあれば、遺族が「●千万円」などの大きなお金を受け取ることができます。
保険期間が決まっているので、保険料が割安です。しかも、非喫煙者だったり、健康診断の結果が良かったりすると、割引が受けられます。
たとえばA生命の定期保険の契約例をご覧ください。
- 35歳・男性
- 保険期間:60歳まで
- 保険金額:3,000万円
- 保険料:月5,880円(非喫煙優良体割引)
保障期間中であれば、いつ万一があっても、まとまったお金を家族に残せます。
そこで重要なのが、以下の2点です。
- 保険期間を何年後まで(何歳まで)にするか
- 保険金をいくらにするか
この2点は、家族構成や、将来家を購入するか、子どもをどのように育てたいか、等によって違います。詳しくは、「生命保険の必要保障額|無駄をなくすために確認すべき4ステップ」をご覧ください。
ただし、必要保障額は、年を追うごとに減っていくこともあります。たとえば、お子様が成長していくにつれ、お子様の教育費や、独立するまでにかかる食費の額は減っていきます。
したがって、場合によっては、次にお伝えする収入保障保険の方が向いていることもあります。
1.2.天国から毎月お金が振り込まれる「収入保障保険」
収入保障保険は、定期保険の仲間で、同じように保険期間が「●年」「●歳まで」というように決まっています。
ただし、遺族が受け取る保険金の額は、たとえば「毎月10万円」など、毎月給料のように受け取る方式になっています。
そのため、何事もなければ、保険金の総額が毎月減っていく計算になります。
たとえば、35歳男性が保険期間60歳まで、保険金月10万円で契約したとします。
加入してすぐ亡くなってしまった場合、遺族が受け取れる保険金の総額は月10万円×25年分、つまり3,000万円です。
45歳で亡くなった場合は月10万円×15年分で総額1,800万円です。
このように、保険金の総額が減っていきます。
その結果、保険料が定期保険よりもさらに安くて済むのです。もちろん非喫煙者だったり、健康診断の結果が良かったりすると、割引が受けられます。
たとえばA生命の収入保障保険の契約例をご覧ください。
- 35歳・男性
- 保険期間:60歳まで
- 保険金額:月10万円(加入時総額3,000万円)
- 保険料:月2,520円(非喫煙優良体割引)
上でお伝えした同じA生命の定期保険と比べて、加入当時の保険金総額は3,000万円で同じですが、保険料は40%くらいと、更に割安になっています。
必要な期間の間だけ、無駄なく保障を受けられる保険と言えます。ただし、裏を返せば、保険期間を何歳までにするかと、保険金の額をいくらにするかというプランニングをきっちり行う必要があります。
その結果を見て、定期保険と使い分けるか、あるいは併用することをおすすめします。
詳しくは、「定期保険とは?2つのタイプからピッタリな保険を選ぶ方法」をご覧ください。
1.3.亡くなった時の整理費用くらいしか準備できない「終身保険」
終身保険は、定期保険や収入保障保険と違って、保険期間が一生涯続きます。
貯蓄の役割もありますが、それは後でお話しするとして、ここでは純粋に保険としての役割についてお伝えします。
生命保険としての活用法は、亡くなった時の葬儀費用、お墓の費用といった整理費用を準備することです。
終身保険は、保険料の払込期間を「●歳まで」などと決めておき、それまでに一生分の保険料の全額を払い込んでしまいます。その分、保険料がきわめて割高です。
たとえば、B生命の終身保険の契約例をご覧ください。
- 35歳・男性
- 保険期間:一生涯
- 保険料払込期間:60歳まで
- 保険金額:300万円
- 保険料:月8,205円
このように保険料がきわめて割高ですので、残された遺族の生活費等をサポートすることは大変難しいでしょう。そちらの役割は定期保険や収入保障保険で備えておいて、終身保険は整理費用を準備する程度にしか使えないとお考えください。
なお、終身保険にはもう1つ、貯蓄の役割もありますが、それについては後で詳しくお伝えします。
2.働けなくなった時に暮らしを守る保険
ここまで、亡くなった時に遺族の生活を守る保険についてお伝えしてきましたが、最近、重要になってきているのが、病気やけがで働けなくなった場合の保障です。
医療が進歩して、命だけは助かることが多くなっている今、亡くなった時の保険の次に必要だといっても過言ではありません。
以下の2つについてお伝えします。
- 仕事復帰自体が困難になるとお金が受け取れる「就労不能保険・特約」
- ドクターストップだけでお金が受け取れる「所得補償保険」
2.1.仕事復帰自体が困難になるとお金が受け取れる「就労不能保険・特約」
「働けなくなった」と言っても様々な段階があります。
インフルエンザや虫垂炎で(いずれも昨年私がかかったものです…汗)1週間くらい離脱しただけならまだしも、「障害等級●級」「要介護●」などの状態になって、仕事への復帰自体が難しくなってしまったら、どうなるでしょうか。
お金を稼ぐことができない状態で、生活費と医療費の負担が重くのしかかることになります。
障害年金や介護保険等の公的制度はありますが、あくまでも最低限のものです。
そこで、障害認定されたり、要介護状態になったりした時に、毎月給料のようにお金が受け取れる「就労不能保険」というのがあります。
先ほどお伝えした「収入保障保険」に似ていますが、収入保障保険は亡くなった時に毎月保険金を受け取れるのに対し、就労不能保険は命が助かったが働けない状態になってしまった時に毎月保険金を受け取れるものです。
おすすめは収入保障保険の「就労不能特約」
就労不能保険は、単品で販売していることもありますが、収入保障保険に「就労不能特約」として付けることもできます。
たとえば、C生命の収入保障保険に、「就労不能特約」を付ける契約例を見てみましょう。
「就労不能状態」は保険会社によって基準が違いますが、C生命は、「要介護1」等になった場合に保険金を受け取れます。
イメージとしては、生活の一部について部分的に介護が必要で、トイレや食事に人の助けが必要な状態です。
- 35歳・男性
- 保険期間:60歳まで
- 死亡保険金額:月10万円(加入時総額3,000万円)
- 就労不能状態になった場合の保険金:月10万円
- 保険料:月3,263円(非喫煙優良体割引)
就労不能特約を付けなかった場合、つまり収入保障保険だけの保険料は月1,717円ですので、就労不能特約の保険料は差額の月1,546円ということになります。
このように、就労不能特約の保険料はそれほど高くありませんので、収入保障保険に加入する時に付けておく方法もあります。
2.2.ドクターストップだけでお金が受け取れる「所得補償保険」
特にフリーランスの方や企業経営者の方の場合、要介護状態等にならなくても、たとえば病気やけがで「●週間」「●ヶ月」といった期間のドクターストップがかかってしまっただけで、収入減に直結してしまうリスクがあります。
そういった場合をカバーするのが、「所得補償保険」です。
これは、仕事を休んで療養することが必要だという医師の診断書があれば、5日目から保険金を受け取れます。
就労不能保険・特約は保障を受けられる期間が「●歳まで」など長いのに対し、所得補償保険は最長でも2年くらいまでと、短くなっています。
それ以上続いてしまったケースについては、就労不能保険・特約でカバーすることができます。
つまり、自営業の方は、働けなくなった時をカバーするために所得補償保険と就労不能保険・特約の両方を備えておけば、万全だということです。
私が実際に担当したお客様でフリーランスのN様が寄稿してくださった「脱サラ41歳の後悔!入るべきだった意外な保険と今すぐ解約すべき3つの保険?」がありますので、ご覧ください。
3.病気・ケガの治療費をカバーする保険
亡くなった時の保険、働けなくなった時の保険ときて、次は、病気やケガの時の治療費をカバーする保険です。
まず、名前のイメージと違って実は優先順位が低い「医療保険」からお伝えします。
3.1.実は優先順位が一番低い「医療保険」
まず「医療保険」についてお伝えします。
医療保険は、入院と手術の保障が基本です。たとえば以下のような内容です。
- 入院給付金:1日5,000円
- 手術給付金:10万円(入院中)、2.5万円(外来)
これに、「先進医療特約」等の特約を付けることがほとんどです(先進医療特約については詳しくは「先進医療はどの保険に入れば保障される?知っておきたい基礎知識」をご覧ください)。
しかし、日本では、実際のところ、医療費の負担は大きくなりすぎないしくみになっています。
なぜなら、健康保険のきく医療については医療費は3割負担で、しかも、「高額療養費制度」があり、1か月あたりの自己負担額の上限が限られているからです。
しかも、今、入院はなかなかさせてもらえません。むしろ通院治療やリハビリ等が重要になってきていますが、その場合に医療保険からは1円も受け取れないことが多いのです。
そのことからすれば、入院と手術の保障が基本の医療保険は、他の保険と比べて優先順位が低いと考えざるを得ません(医療保険自体がダメと言っているわけではありません)。
医療保険への加入を検討する際のポイントについては「医療保険のしくみとおすすめの契約パターン3つ」をご覧ください。
3.2.入っておくに越したことはない「がん保険」
治療費が深刻な負担になりがちなのは、がんや心疾患、脳卒中といった、治療が長引きがちな病気です。
なぜなら、医療費の自己負担が限られているとは言っても、治療期間が「●ヶ月」「●年」と長期化してしまうと、負担が重くなってしまうからです。
しかも、これらの病気では、入院・手術以外にも通院治療やリハビリが重要です。
そんな時、がん保険や「三大疾病保険」が役立ちます。特に、がん保険は加入しておくに越したことはないと考えます。
がん保険について言うと、おすすめなのは、以下の2つのタイプです。
- がんと診断されたら「100万円」等が受け取れる
- 放射線・抗がん剤・ホルモン剤治療を受けるたびに「10万円」等のお金が受け取れる
この2つを組み合わせたタイプもあり、私もそれに加入しています。
詳しくは、「がん保険のおすすめの選び方2つのポイント」をご覧ください。
4.お金を貯め、増やす保険
最後に、お金を貯め、増やす保険についてお伝えします。
まずお断りしておきますと、現在、マイナス金利政策の下、このタイプの保険は以前と比べて貯蓄の効率が悪くなってしまっています。
そこで、以前にもまして、貯蓄の効率の良いものを追求することが大切になっています。
ここでは、「終身保険」「個人年金保険」についてお伝えします。
なお、「学資保険」や「養老保険」は、他の保険と比べて加入のメリットが乏しくなっています。また、私自身、おすすめした例がありませんので、省略させていただきます。
「それでも知りたい!」という方は、「必ず知っておきたい!学資保険の全情報と全知識」「利率・返戻率に釣られるな!養老保険がお勧めできない理由の全て」をご覧ください。
4.1.保険と兼ねて老後の生活費と子どもの学費を貯められる「終身保険」
まずは、生命保険で貯蓄もできる「終身保険」です。
終身保険は、「1.3.亡くなった時の整理費用くらいしか準備できない『終身保険』」でお伝えしたように、生命保険としては保険料が割高で、死亡保険金を整理費用に役立てるくらいの機能しかありません。
ただし、貯蓄の役割は大きくなっています。
たとえば、B生命の終身保険の契約例をご覧ください。保険料の払込が終わった後で解約すると、保険料総額より5.4%増えて戻ってきます。
- 35歳・男性
- 保険期間:一生涯
- 保険料払込期間:60歳まで
- 保険金額:300万円
- 保険料:月8,205円
- 保険料総額:2,461,500円
- 保険料払込完了直後の解約返戻金:2,593,830円(5.4%UP)
また、解約せずに置いておけば、さらに増えていきます。
この性質を利用して、老後の資金や、子どもの学資等を貯めるのに活用されています。
詳しくは「貯蓄型の生命保険の2つの役割と貯蓄性を高める2つの方法」をご覧ください。
4.2.定期預金よりお得な老後資金の貯蓄方法「個人年金保険」
老後の生活費を貯める方法としては「個人年金保険」もあります。
個人年金保険は「保険」という名前がありますが、実質は死亡保障の役割はほぼなく、貯蓄と考えていただいてけっこうです。
たとえば、D生命の個人年金保険の契約例をご覧ください。
30歳・女性
- 保険料払込期間:65歳まで
- 年金受取開始年齢:65歳
- 年金額:700,000円×10年
- 保険料:月々15,610円
この契約例だと、保険料総額が6,55万6,200円なのに対し、受け取れる年金の総額が700万円ですので、6.8%増えた計算になります。
定期預金で貯蓄しても、利率はせいぜい年0.1%程度でしかありませんので、個人年金保険で積立をした方がお得です。
しかも、保険料は「生命保険料控除」の対象となり、一部について所得税・住民税を免除してもらえますので、それも考えると、さらにお得です。
ただし、途中で解約すると損をしますので、払い続けられる額に設定することが必要です。
まとめ
生命保険の活用法・向き不向きについて、生命保険業界で働く私の本音をお伝えしてきました。
生命保険はいろいろありますが、「亡くなった時に遺族の暮らしを守る保険」「働けなくなった時に暮らしを守る保険」「病気・ケガの治療費をカバーする保険」「お金を貯め、増やす保険」の4つに分けて考えると、自分に合った保険を無駄なく選ぶのに役立ちます。
この記事が、読者の皆さまの保険選びのお役に立つことを心から願っています。