9月4日の台風21号の影響で大阪府守口市では市立小学校の体育倉庫の屋根が飛ばされ、近くの住宅が半壊となるなど大きな被害が出ました。守口市は当初、補修にかかる費用は負担すると住民たちに話していたのですが、そのあと急にやっぱり負担はできないと通告してきました。住民たちは手のひらを返すかのような対応に怒りをあらわにしています。
9月4日の台風21号の影響で、大阪府守口市では市立小学校の体育倉庫の屋根が飛ばされ、近くの住宅が半壊となるなど大きな被害が出ました。守口市は当初、補修にかかる費用は負担すると住民たちに話していたのですが、そのあと急に「やっぱり負担はできない」と通告してきました。住民たちは手のひらを返すかのような対応に怒りをあらわにしています。
電柱が自宅直撃 原因は“体育倉庫の屋根”
9月4日、近畿を直撃した台風21号。猛烈な風が各地で大きな被害をもたらしました。大阪府内では8人が死亡、485人が重軽傷を負い、5万軒近くの建物に被害が出ました。大阪府守口市の南曲光幸さん(75)。長年、妻と苦楽を共に過ごしてきた自宅が、無残な姿になってしまいました。
「(窓ガラスが)全部破れて、部屋の中に屋根のかけらが入って、ぽっと出たら雨漏りしているから、あれと思ったら、電柱が倒れていて、えらいこっちゃって」(南曲光幸さん)
被害をもたらしたのは、道路を挟んで向かい側にあった市立小学校の体育倉庫でした。住民が撮影した台風直後の写真に写っているのは赤茶色の体育倉庫の屋根。風で吹き飛ばされてボール避けのネットなどに引っかかったため、電柱が倒れて南曲さんの自宅2階を直撃したのです。結果、自宅は「半壊」という判定を受けました。自宅横の駐車場に止めてあった自家用車も被害を受けました。
南曲さんの東隣に住む川下美也子さんの自宅も同様の被害を受けましたが、市の担当者は市の所有物である体育倉庫が原因で被害が出たことから、住民らに対して「補修にかかる費用は市が負担する」と話したといいます。
「罹災証明をすぐに取ってもらうようにして、(家の修理費の)見積もりも取ってもらって、どれくらいの金額が下りるかは今は言えないけどと」(川下美也子さん)
「車の方は(市の担当者が)直接立ち会って写真を撮られて、写真を撮り終わったら『市の方で全部負担しますから修理に出してください』と」(南曲光幸さん)
「修理費用は全額出す」と市が言ったのに…
南曲さんは早速、親戚の車修理業者に修理を依頼しました。依頼を受けた太良好宏さんは「修理費用は全額市が面倒をみる」という話が本当かどうか確認するため、市に電話をかけました。
(太良さん)「太良です、お世話になってます。車を預からせてもらいましたが、これは保険扱いになるんですか、それとも実費になるんですか」
(担当者)「実費で考えているんです」
(太良さん)「そうなんですか。大変ですね、実費やったらね。うちだけじゃなくてあっちもこっちもですもんね。大丈夫なんですかね。直しました、結局満額出ませんとか。これ以上、南曲さんにも負担もかけさせられないし」
(担当者)「それはしない、それはしない」
(太良さん)「そうですか。良かった、良かったです」
市の担当者はきっぱりと「費用は全額実費で負担する」と話しました。
「それやったら間違いないなということで、(修理を)受けたんですよ」(南曲さんの親戚 太良好宏さん)
市の言葉に安心した太良さんは正規の自動車販売店から修理の見積もりを取り、「総額で約140万円かかる」と市に伝えました。ところが…
(担当者)「損害賠償金としてお支払いできないということで、市の方で決定されてるんですね」
(太良さん)「出るか出ないかという話を最初の段階でしていて、(修理費用を)出すと言って写真もあんだけバチバチ撮っているし、(市が)出すと言っていたのに、というのがみんなの意見なんですね」
(担当者)「本当に申し訳ございません」
(太良さん)「申し訳ないで済まないです。これはお金が関わってきてますので」
なんと、市の担当者が急に手のひらを返して「やっぱり補償はできない」と話したのです。前言撤回の連絡はお隣に住む川下さんにも…
「最初は(面倒を)みますというような形だったのに、(補償の)割合は別として。言っていたことが手のひらを返したように言われるので」(川下さん)
体育倉庫の管理は適切だったのか?
そもそも、問題の発端となった体育倉庫は屋根の板に打たれていた釘が錆びていたり壁の中も老朽化が進むなど、住民たちからは「市がきちんとメンテナンスしていなかったから屋根が吹き飛んだのではないか」という声も上がっています。では、いったいなぜ市は方針を180度転換してしまったのでしょうか。
「台風による被災が生じた直後においては、現場もかなり混乱していたこともあり、市民に期待を持たせてしまうような主旨で取られかねない発言を職員がしてしまっている。(ただ)自然災害による損害については、過失がない場合は支給されないという取り扱い」(守口市学校管理課 林慶課長)
担当者は「修理費用を負担すると話したのは職員の早とちりだった」としたうえで、台風という自然災害による被害なので市が責任を負うことはできないと話しました。では、体育倉庫の保守管理に問題はなかったのでしょうか。
「過去に補修歴もありますし、メンテナンスをしながら使っていた。大変心苦しいですが、我々の予想をはるかに超える突風が生じたのが主な原因」(林慶課長)
市の対応「無責任すぎる」
市は倉庫の管理はきちんと行っていたと話しますが、災害に関するトラブルに詳しい木口充弁護士は、「倉庫の保守管理に落ち度があったなら、損害賠償を請求できる可能性がある」と話します。
「(市に)設置保存上の瑕疵(=欠陥)がある、もうちょっとちゃんと手入れして点検しておけばこの事故は防げたじゃないか、周りの家は瓦なんか飛んでない、この体育倉庫だけじゃないのと追及していくべき」(かがやき総合法律事務所 木口充弁護士)
南曲さんは、今回の市の対応について「お粗末だ」と今も怒りが収まりません。
「もう市の対応は無責任すぎる。原因が本当にわからない場合はやむを得ないと思いますけど、はっきり(体育倉庫が原因という)ことがわかっているんやから、何とか対応をしてもらわないと。風害やから何の責任もないといったことでは、済まされる問題ではない」(南曲光幸さん)
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