性能検査記録データが改ざんされた疑いのある免震装置が使われた石川県立中央病院=金沢市鞍月東2丁目
油圧機器メーカーKYBによる免震・制振装置のデータ改ざん問題で、石川県内では県立中央病院(金沢市)とNHK金沢放送局の新放送会館(同)でKYBの免震装置を使用していることが17日、分かった。同病院の装置は油の粘性を利用して建物の揺れを少なくするオイルダンパー12基で、今年1月に開院した病院本館地下の免震層に設置された。県は同日、病院を建設した大成建設(東京)に対し、早急に調査し、不適合な装置があれば直ちに交換するよう申し入れた。
県によると、16日に国土交通省から県に通知があり、調査の結果、使用が確認された。現時点で病院建物に異常はない。
問題のオイルダンパーはKYBと子会社が基準の範囲内に収まるようデータを改ざんしていた。地震の際に設計通りの性能が発揮できず、建物への影響が想定より大きくなる恐れがある。KYBは不正の疑いを含めて全国の986件の建物に装置を納入しており、納入先への連絡を急ぐとともに、交換や補償を求められた場合の検討に入った。
県立中央病院に関しては、使用されたオイルダンパー12基全てに不正の疑いがあり、県は、国の基準を満たしているかどうかメーカー側が調査中とした。
KYBは不正な製品は全て取り換える方針を表明している。県によると、同病院の免震装置の設備は、もともと交換を前提に設計されており、取り換えが必要な場合も病院の運営に影響はない。また、災害拠点病院のため通常より高い耐震性能を備えており、健康福祉部の担当者は「設計会社からは、使用されているのが不適合の装置だとしても耐震性に問題はないと聞いている」と話した。
NHK金沢放送局の新放送会館は9日に金沢市広岡3丁目でオープンした。同局の担当者は17日、「KYBのオイルダンパーを使用していることは間違いないが、不適合品かどうかは確認できていない」とコメントした。
北陸電力によると、志賀原発にも地震の揺れを抑えるオイルダンパーが設置されているが、KYBや同社の子会社製ではなかった。
谷本正憲知事は17日、石川県立中央病院に性能検査記録データが改ざんされた疑いのある免震装置が使われていることについて、「病院は県民の安全安心の最後のとりで。万が一でもその根幹が揺らぐとすれば大問題だ。原因を究明した上で、どういった対策を講じてもらえるのか施工業者に問いたい」と述べた。滞在中のニュージーランドで記者団の質問に答えた。
構造上の安全性に関しては「業者は問題ないと言っているが、100%信用していいか分からない。基準に適合しているのかどうか。国土交通省の判断を待ちたい」と述べた。