ワークプレイスの変革が世界同時多発的に進んでいる。今年2月に東京・六本木に日本第1号を開設したアメリカ発のワーキングスペースWeWorkは、オフィスにネットワーキングやシェアリングカルチャーを融合させ、オフィスの定義を変えた。
2017年6月、フランス・パリに「世界最大のスタートアップキャンパス」と銘打った「Station F」がオープンした。アジア各国でもイノベーション創出の「場」づくりが過熱する。マレーシアや台湾を筆頭に政府主導のイノベーションハブ開設が活発な一方、巨大企業による動きも目立つ。
フェイスブックは18年7月、中国で子会社を設立し、現地の新興企業や開発者向けのイノベーションハブを浙江省に設立する計画があると発表した。中国でのアクセスが制限されているため、中国市場への再参入を目指す。フランスやブラジル、インド、韓国でも同様の施設を設けている。
グーグルはイギリス、ドイツ、韓国などにコワーキングスペース「Google Campus」を設けている。メンバー登録をすれば各国のCampusのどこでも使えるようになっている点が特徴で、グローバルに活躍するイノベーターたちをサポートする。
フリーランスを選ぶ働き手が増えていることも、イノベーションハブが盛り上がっている理由の一つだ。アメリカでは約1億6000万人の労働力人口の3分の1を占める約5730万人がフリーランス。27年には過半数に達すると予測される(Freelancing in America: 2017)。日本では18年現在、全労働力人口のおよそ6分の1にあたる約1119万人がフリーランスで、経済規模は20.1兆円(ランサーズ「フリーランス実態調査2018年版」)。
企業のイノベーション創出や国内外スタートアップの育成を支援するアドライト代表取締役の木村忠昭は、イノベーションハブの醍醐味の一つとして「セレンディピティ」を挙げる。「箱を作るだけではイノベーションは生まれない。利用するメンバーたちの多様性を重視し、時間をかけてコミュニティを醸成することで、想像もしないようなアイデアや偶然のコラボレーションが生まれることがある」。
米国は大企業がドミナント戦略を取り、独占を目指すことが多い。一方でイノベーション大国を目指すフランスをはじめ、欧州は大手企業とスタートアップの「共存共栄」を重視しているため、日本にとっても参考になるのではないかと見る。
「あのサービスはあのコミュニティから生まれた」。オープンイノベーションは今後、そのアウトプットで語られる時代になるのではないのだろうか。
レベル39/LONDON_UNITED KINGDOM
──サンドボックス化を推進する金融街のイノベーション起点
世界のスタートアップエコシステムランキングにおいてシリコンバレー、ニューヨークに次ぐ第3位に位置するロンドン(スタートアップゲノム2017年)。ロンドンはいま、政府主導で規制緩和を進めるなど、FinTechを盛り上げていく機運が高まっている。
その都市において、重要なアクセラレーターの役割を果たすのがLevel39だ。「カナリーワーフ」という古くから金融街として栄えた街の中心部に位置し、近隣には約30の金融系企業がある。そのため、スタートアップはもちろんのこと大企業や政府関係者も頻繁に出入りしている。まさに官民一体となって、新たなイノベーションの種を育て、花を咲かせる作業を行っているのだ。
この記事は「Forbes JAPAN 2018年10月号」に掲載されています。定期購読はこちら >>