オーバーロード ありのままのモモンガ 作:まがお
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エ・ランテルの冒険者組合では、組合長プルトン・アインザックがある冒険者を待っていた。
やって来たのは、飛び級で銅からミスリルとなった、冒険者チーム『黒い疾風』の二人。
疾風の天使と呼ばれる冒険者ネム、そして彼女の使役する骸骨の戦士、デスナイトだ。
使役する魔獣扱いのアンデッドを、チームの人数に数えて良いのかは謎である。
実際のところ、冒険中に走っているのはモモンガだし、デスナイトと呼ばれているけど、種族は
間違いだらけだが、面倒なのでモモンガも特に何も言ってない。
チーム名にしても、いつのまにか勝手に付けられていただけで、本人達が名乗った事は一度もなかった。
普段はほとんど採取系のクエストしか受けていないチームだが、その実力はこの街にいるものなら誰もが知っている。
いつもの様に冒険者組合に入る二人。
ランクの飛び級時に一度呼び出されて、以来久々となる呼び出しに、モモンガとネムは何の用だろうと思っていた。
「わざわざ来て貰ってすまない。早速で悪いが緊急の依頼が来ている」
飛び級の際に一度話しているため、アインザックは基本的にモモンガに話しかける。細かい仕事の対応などは、モモンガがしている事を知っているからだ。
「実を言うと以前からあったものなんだが、竜王国からの依頼なんだ。彼らの国は長年ビーストマンの侵攻に脅かされていてな。兵がとてもじゃないが足りていない状況なんだ。そこで各国の冒険者に依頼を出しているようなんだが――」
(竜王国、ビーストマン…… もしかして、俺がこの世界に来て最初にいた場所か?)
「――大量のビーストマンを相手に出来る冒険者など滅多にいない。アンデッドの大群を打ち倒した君達なら、と白羽の矢が立ったわけだ。どうか受けてもらえないだろうか?」
モモンガとしては、この世界に来て、すぐにやらかした事に、罪悪感もあり、助けに行ってもいいかと思っている。
しかし、エンリとの約束もあるため簡単にハイとは言えない。
「お姉ちゃんとの約束があるから、夜遅くなるのは受けれないの……」
「申し訳ないが彼女の姉と、危険な仕事はしない、と約束してしまっているので……」
他の冒険者がこんな事を言えば殴り倒している。
門限がある? 危険なことはしない? なんで冒険者やってるんだと突っ込んだことだろう。
しかし、ネムはどう見ても子供、アインザックも強くは言えない。
「そこをどうにかお願い出来ないだろうか。このままでは竜王国は、滅びてしまうかもしれないのだ……」
「ふむ、取り敢えずネムの姉と相談して来ます。返事は後日と言うことで」
なるべく早く頼む―― アインザックはそれだけをお願いし、なんとか受けてくれる事を祈っていた。
「と、言うわけで、ネムの姉と一緒に行く事になりました」
「お泊まりするかもしれない、遅い時間のお仕事は初めてですね!!」
何が、と、言うわけなのか、サッパリ分からない……
どんな話し合いがあったか知らないが、目の前の二人はワクワクしているようだ。
戦争中のビーストマンがいる国に、一緒に行こうとするなんて、どんな女性なんだ!!
見たことも無いネムの姉を想像し、アインザックは恐怖に震えていた……