オーバーロード ありのままのモモンガ 作:まがお
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リ・エスティーゼ王国の王都、そこにある冒険者組合で、五人の冒険者が集まっていた。
蒼の薔薇と呼ばれる冒険者チームである。
メンバー全員が女性で、最高位のアダマンタイト級冒険者であることから有名なチームだ。
「ねえ、エ・ランテルに、新しいミスリル級冒険者が誕生したそうだけど、知ってる?」
「ん? ミスリル級なら、前からエ・ランテルにも数組いただろ? そんなに注目するもんなのか?」
男勝りな女性、ガガーランは全く知らないようだった。
これから話すことにきっと驚いてくれる、蒼の薔薇のリーダー、ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラは楽しそうに話し出した。
「その冒険者はね、なんと一週間足らずで銅からミスリルになったのよ‼」
「はぁ?! なんだそりゃ!! いったい何やったらそんな事になんだよ?」
「エ・ランテルで起きた、アンデッド大量発生の件は知ってるわよね? あれをたった一人で解決したそうよ」
確かにそれはミスリル級だ、ガガーランは納得する。いや、ズーラノーンが関わっていたという情報もある。それでも不足かもしれない。
「凄腕の
「大柄の男性、興味ない」
「早計、ガガーランを見るべき。女性かもしれない。でも大柄、興味ない」
露出の高い忍者のような服装の双子、ティアとティナは相変わらずの平常運転だ。
「ふんっ、噂など当てにならんさ。どれほどの強者かは知らんが、あのババアよりは格下だろう」
口を開いたのは仮面を着け、赤いローブを纏った小柄な女性、イビルアイだ。
こんな見た目だが、蒼の薔薇で最強である。
イビルアイの言うババアとは、かつてこの世界の脅威だった魔神達を倒した英雄、十三英雄の一人である。
確かにリグリットの婆さんよりは下だろうなと、ガガーランも同意する。
「なんでも、街ではその冒険者に見下ろされると、誰もが思わず供物を捧げる程の人物らしいわ」
その噂は流石にないだろうと、仲間達は苦笑するが、ラキュースは止まらない。
まだ見ぬ謎の冒険者に、ラキュースは妄想を膨らませるのだった。
バハルス帝国の皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスは、新たな人材の発見を、一人の人物と話していた。
「爺よ、エ・ランテルに凄腕の
「なんと、
爺と呼ばれたこの老人。フールーダ・パラダインは、第6位階魔法を使用できる、この世界で逸脱者と呼ばれる
「さらにだ、驚くことにその冒険者が使役するアンデッドは、デスナイト、などと呼ばれているようだぞ?」
「今すぐにでも会いに行きましょう!!
まぁ待て、ただの噂だと、笑いながらフールーダを宥めるジルクニフ。
「噂が本当だとしたら、是非とも手に入れたい人材だ……」
情報の精査に、その人物の調査、どうやってこちらに引き入れるか、帝国の更なる繁栄のため、ジルクニフは頭を働かせるのだった。
「おじさん、ありがとう!!」
「ありがとうございます。ネム、良かったな」
「いいってことよ!! ネムちゃんにはこの街のみんなが感謝してるからな」
モモンガに肩車されたネムを見上げ、店主は笑う。
エ・ランテルにある屋台の一つ、そこの店主に串焼きを貰ったネムは、嬉しそうに頬張っていた。
アンデッドであるモモンガが、街を歩きまわるのはいつもの事だが、最初にこの姿に慣れ始めたのは商売人達だった。商魂逞しいとはこのことだろう。
私も食べることが出来たらいいんですけどね、そんな事を言いながらモモンガ達はどこかへ歩いていく。
街の人達に時々貰い物をしながら、骨と子供は今日も冒険に出かけていくのだった。