次回、次々回位でカルネ村編終了かな?
村長からの報告を聞き再び〈
先ほどの騎士達は完全に統一した重装備であったが、この騎兵達は各自バラバラの装備をしている。全身鎧は共通であるが、一部だけ皮鎧だったり、鉄の装甲板を外し鎖帷子を露出させたりと個性が窺える。
(さっきのやつらとは違うみたいだな)
少なくとも野盗ではないだろう。村長達も不安そうにしつつもまた襲われるとは考えていないようだ。
「えっと、村を襲った騎士とは違うみたいなので話を聞こうと思うんですけど。・・・その、村長さん一緒にきてもらえないでしょうか?」
「わ、わかりました。ただ、その・・・申し訳ないのですが、サトル様は体を隠した方がよろしいかと」
「体?」
なんでも通常アンデッドは生者を憎み襲う存在らしい。さらにアンデッドが集まるとより強力なアンデッドが生まれるため、発見次第討伐するのが基本であり、悟がそのまま出向くと無用な混乱を招く恐れがある。
と何度も頭を下げながら村長に説明され、変装するための装備を探す。
とりあえずローブの前を閉めて肋骨が見えないようにし、手にはガントレットをはめる。顔をどう隠すか悩んだた末、泣いているような、怒っているような形容しがたい外見をした”嫉妬マスク”をかぶる。他に顔を隠せそうなアイテムが無かったので仕方ないが、複雑な気分だ。
〈
護衛の
それは屈強な体躯の男であり、力強さに満ちている。年齢は悟より少し上、三十前後だろう。歴戦の戦士を思わせる顔は引き締まっている。
(かっこいい)
映画やドラマでも同じような男を見た事があるが、比べ物にならないほどの迫力を感じる。彼らはあくまで俳優であり画面の中の存在であった。それに対して目の前の男は今を生きる本物の”漢”なのだろう。
男の視線は村長を軽く流し、
さっきの騎士達とは比べ物にならないその眼力は圧力すら感じられ、そんな視線に射抜かれて悟は指一本動かせなくなる。目を逸らしたくても逸らせない。もし人間のままだったら漏らしていたかもしれない。悟がアンデッドの体に感謝している間も男の視線はまっすぐこちらを見据えている。
「私は、リ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ。この近隣を荒らしまわっている帝国の騎士達を退治するために王の御命を受け、村々を回っているものである」
見た目に違わぬ重々しい声が響く。
「王国戦士長・・・」
「し、知り合いですか?」
村長の声で金縛りが解けた悟は、声が震えないように精一杯努力しながら村長にささやく。
「話でしか聞いたことが無いのですが、王国の御前試合に勝利した最も腕の立つ人間であり、王国の王直属の精鋭兵士達を指揮する人物だとか」
そんな会話が聞こえたのかガゼフの視線が逸れ、村長に向かう。
「あなたが村長だな、そして横にいる者は一体誰か教えてもらいたい」
「は、はい。私がカルネ村の村長です。こちらはスズキサトル様。村が騎士に襲われていた所を助けていただいた・・その・・・
ちらりと村長がこちらを窺う。ガゼフの視線が再びこちらに向くのを見て、慌てて自己紹介する。
「た、ただいま紹介に預かりました鈴木悟です。お会いできて光栄です。今後ともよろしくお願いします」
緊張のあまり営業職時代の話し方が出てしまったが、幸い不審には思われなかったようだ。ガゼフはそれを聞くと馬から飛び降り、重々しく頭を下げた。
「村を救っていただき感謝の言葉も無い」
「え、あ、いえ!とんでもありません。当たり前の事をしただけですから。あ、頭をお上げください!」
思ってもいなかった事態に混乱する。詳しくは知らないが王国戦士長という、おそらく高い地位にある人間がただの一般市民である自分に頭を下げたのだ。周囲の空気からそれがどれほど重大な事なのかが伝わってくる。しかもガゼフは酸いも甘いも味わったような年季を感じる”漢”なのだ。小市民でしかない悟としては恐縮するしかない。
「感謝する。・・・すまないが今二つほど質問させてもらってもいいだろうか?」
「は、はい。何なりと」
頭を上げたガゼフの視線が隙無く構えている
「あれは?」
「あ、あれは私が召喚した天使です」
「ほう」
鋭い視線が悟の全身を観察するように動く。
「ではその仮面は」
「え!?・・・あー、その、えっと・・・
「仮面を外してもらえるか?」
「はい」カパッ
「アンデッド!?」
(・・・あ)
悟の素顔をみたガゼフが素早く距離をとると剣を抜き放つ。同時に後ろの兵士達も一斉に武器を構え警戒態勢に移る。それを見た
(バカ!『はい』じゃねーよ『はい』じゃ!?村長さんが忠告してくれてたじゃないか。
あう・・・ど、どうしよう)
ガゼフ達はこちらを警戒しているのかすぐに攻撃してくる気配は無い。だがきっかけがあればすぐにでも戦闘が始まってしまうだろう。どうにかしなければいけないのは分かっているのだが、頭の中は真っ白でフリーズしている。
「お待ちください!!」
一触即発の中、村長が
「隠し事をして申し訳ありません。確かにサトル様はアンデッドです。しかし、村を救っていただいたのは事実なのです!私の首を取っていただいて構いません。だから何卒悟様にはご容赦ください」
村長の声を聞き、様子を見ていた村人たちも前に出てきて村長に続く。
「お願いします」「サトル様は村を救ってくれたんです」「騎士を倒してくださったんです」
「お父さんとお母さんを救ってくれたんです」「サトル様はとってもやさしいの」
ガゼフはそんな村人たちをしばらく見ていたが、やがて剣を収めた。
「全員武器をしまえ」
「戦士長!?」
ガゼフの言葉に兵士達が次々と反論するが、ガゼフはそれを一喝する。
「サトル殿が村を救ってくれた事は事実のようだ。ならば俺たちに出来なかった事。・・・弱き者を助けていただいたのだ。ならばたとえアンッデッドだろうと問題ではない。
―――それに」
ガゼフが
「この天使を見ろ。こんな雄々しくも神々しい天使を従える者が邪悪なわけがない」
(ごめんなさい!これ
「申し訳ないサトル殿。外見に惑わされた俺が未熟であった」
「と、とんでもございません」
そもそも悟が仮面を外さなければこんな問題は起きなかったのだ。
「そう言っていただけるとありがたい。重ねて礼を言わせてもらう。村を救っていただき本当にありがとう」
(ひと悶着あったけど、無事終わったな)
半分は自業自得であったが、危機を乗り越え安堵のため息を吐いていると、兵士の一人が緊迫した様子で駆け込んでくる。
「戦士長!村を囲むように複数の人影が接近しています!」
(・・・え?)
意外とガゼフにかかってしまいやりたかった事が次回にずれてしまいました。
まあ、バレバレだと思いますけど。