「自由診療に誘導するケースは珍しくありません。『自由診療』ということは、料金は基本的に自由に設定できるということです。そこで、患者との会話の中で、当初は高めに伝えておいて、『特別に値引きしますよ』などとお得感を演出する。すると、患者もついダマされてしまうんです。これは最近の歯医者の常套手段です。
また、一度で済む治療に何度も通わせて稼ぐパターンもありますね。そもそも、削れば削るほど歯は悪くなり、何度も歯医者に通うことになる。長期的に考えれば、自由診療ではありますが最新の『削らない治療』を受ける方が、結果としてコストが安く済むこともあります。たとえば、自由診療だけれど安価な『3Mix-MP法』はおすすめですね」
歯医者だらけの時代に必要なのは、患者自身が「よい歯医者」を見抜く目を養うことだ。前出の岡田医師は、選ぶ際のポイントとして「診断」を挙げる。
「患者さんはまず治療の上手・下手に目がいくけれど、その前の『診断』が大切なのです。診断の根拠や治療法をわかりやすく説明してくれる歯医者は、ある程度は信頼できると言える。診断で納得がいかなかったら、治療を受けずにセカンドオピニオンに行ってほしいですね。そもそも歯を削ったり、神経を抜くといった治療を受けるのなら、患者さん自身が、まず『この先生に歯の命を預けていいかどうか』を考えてほしいのです」
自分の歯が今どんな状態なのかをしっかり「診断」し、なぜこの治療法をとるのかを話してくれる医師を選ぶということだ。
「われわれ医師としては、虫歯を削り、そこから再発した虫歯をまた治療し、次には神経を抜き、最終的には抜歯するという悪化のサイクルを、少しでも遅らせたい。どうしても悪くなったら、最後に神経を抜けばいいわけで、その前にワンステップ踏む余地があるなら、そのワンステップを踏むべきなのです」
「抜く」や「削る」一点張りの歯医者は、この「ワンステップを踏む」意識が乏しい。ろくに説明もしないで治療にかかろうとする医師は要注意だ。
東京医科歯科大学歯学部附属病院教授・水口俊介医師も、こうアドバイスする。
「歯の治療には限界があります。その部分をきちんと説明せず、いいことばかり言う医者は信用できない。また、病院スタッフへの教育がなっていないように感じられる歯医者も気をつける必要があるでしょう」
しかし、説明がうまいだけでは技量があるとは断定できない。症例件数ではなく、成功率をきちんと教えてくれるか、治療の導入部である麻酔が痛くないか、といったポイントで腕を見極めるといいだろう。