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ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。 |
2018-10-17 医師国家試験を解いてみよう。「がん検診の有効性を示す根拠はどれ?
■[医学]医師国家試験を解いてみよう。「がん検診の有効性を示す根拠はどれ?」


がん検診にまつわる誤解は根深く、医師でもけっこう間違えている人がいます。ただ、医師国家試験にがん検診が有効である根拠を問う問題が出題され、若い世代の医師はがん検診の疫学をより正確に理解しているものと思われます。
厚生労働省のサイトに過去問がありましたので、ここで引用・紹介します。さて解けますか?このブログの読者は、その辺の平均的な医師と比べると、ずっと正答率が高いのではないかと思います。
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第106回医師国家試験問題より。
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集団に対してある癌の検診を行った。
検診後に観察された変化の中で、検診が有効であったことを示す根拠はどれか。
a 検診で発見されたその癌の患者数の増加
b 検診で発見されたその癌の患者の生存率の上昇
c 集団全体におけるその癌の死亡率の低下
d 集団全体におけるその癌の罹患率の低下
e 検診に用いられた検査の陽性反応適中率の上昇
答えは下のほうに。
正解c. 検診後に集団全体におけるそのがんの死亡率の低下が観察されれば、がん検診の有効性を示す根拠になりうる。細かいことを言えば、検診前後で検診とは無関係な別の要因でがんの死亡率が下がっただけかもしれないけれども、他の選択肢を考慮すればcしかない。より厳密には、前後比較ではなくランダム化比較試験で、検診群と対照群を比較して、検診群でがん死亡率が小さければ検診に利益があることが示される。
a 検診で発見されたそのがんの患者数の増加は、がん検診の有効性の根拠にならない。
がんの中には一生涯症状を来たしたり死亡の原因になったりしないがん(過剰診断)がある。過剰診断分を発見することでがんの患者数は増加するが、がん検診の利益ではない。むしろ害である。将来発症するがんを前倒しで診断すれば、たとえ予後を改善しなくても、がん患者数は一時的に増加する。福島県の甲状腺がん検診の議論をしていると、「手術が必要ながんが発見されているのだから、検診を縮小するなんてとんでもない」といった主張がみられるが誤りだ。
b 検診で発見されたそのがんの患者の生存率の上昇は、がん検診の有効性の根拠にならない。
過剰診断が含まれると、検診に利益がまったくなくても生存率は上昇する。また、過剰診断がなくても、検診ががんの診断を前倒しすることで見かけ上生存期間が延びる(リードタイムバイアス)。また、検診では成長が緩徐で予後のよいがんほど発見されやすい(レンクスバイアス)。検診に利益がまったくなくても、リードタイムバイアスやレンクスバイアスで生存率は上昇する。
d 集団全体におけるその癌の罹患率の低下は、一般的にはがん検診の有効性の根拠にならない。
がんを早期発見するタイプの検診ではがんの罹患率を下げることはできない。むしろ、有効な検診でもがんの罹患率は増える。ただし、大腸がん検診や子宮頸がん検診といった前がん病変を発見するタイプのがん検診では、がんの罹患率で有効性を評価することもある。悪問と言えなくもないが、がん検診の有効性の評価をがん死亡率で評価することは明らかなので、回答は迷わない。
e 検診に用いられた検査の陽性反応適中率の上昇は、がん検診の有効性の根拠にならない。
がん検診でいう陽性反応的中率は、一次検査で陽性であった人のうち精密検査でがんであった人の割合である。陽性反応的中率は一次検査の感度、特異度、およびがんの有病割合に影響を受けるが、がん検診の有効性とは直接的には関係しない。仮に陽性反応適中率が100%の検査があったとしても、がん検診が有効でないことはいくらでもありうる。
さて、ガッテンしていただけましたでしょうか。いまいち納得できない人もたくさんいらっしゃるでしょう。医師でもよく理解できていない人がいくらでもいるぐらいですから。より詳しく理解したい方は疫学の教科書を読むことをお勧めしますが、以下のリンク先を読んでくださってもかまいません。
■検診における、「生存率が○○倍に」という表現の罠――ためしてガッテンと尾道方式 - Interdisciplinary
■検診で発見されたがんの予後が良くても、検診が有効だとは言えない - NATROMの日記
がん検診は害も伴います。みなさまが想定しているよりもずっと大きな害があります。「がんを早期発見できた」「生存率が改善した」というだけでがん検診を推進すると、利益よりも害が大きい検診を多くの人が受けてしまうことになりかねません。韓国の甲状腺がん検診や、日本の神経芽腫マスクリーニングがそうでした。「手術を要する癌が見つかってよかったのではないか」などと仰る人もいますがとんでもないことです。害のほうが大きかった検診から得られた教訓をご存じないのでしょう。
研究目的で、利益がまだ明確ではない検診を行うこともあるでしょう。その場合は、あくまでも研究目的であること、想定される害、そして「利益はまだ明確ではない」ことについて十分な説明と同意の上で施行されなければなりません。「早期発見できます」「生存率が上がります」といった、がん検診の有効性について誤認させる説明だけで、有効性が明確ではない検診が行われてはなりません。