貧困ビジネスの例・種類・問題点|地商土木/生活保護/NPO
貧困ビジネス
「貧困ビジネス」は社会活動家の湯浅誠氏が提唱したもので、日雇い労働者やホームレスなど一般的に経済的に困窮した社会的弱者と呼ばれている人たちを対象にしたビジネスをいいます。
実際のやり方は、このような人たちに生活保護を受給させた上で、大方をピンハネし利益を得ている場合が多いです。
貧困ビジネスの業種
貧困ビジネスと呼ばれている業種とは、どのようなものをいうのでしょうか。社会的弱者といわれる人たちをターゲットにしている業種を紹介します。
ネットカフェ
ネットカフェ(インターネットカフェ)とは、料金を払ってパソコンを利用しインターネットにアクセスすることのできる施設のことです。
オールナイトで営業しているところが多く、他の宿泊施設を利用するより低額のため、日雇い労働者(ネットカフェ難民といわれています)などが定住状態で利用していることが多いです。
そのため、貧困ビジネスの一つといわれています。
住み込み派遣
住み込み派遣とは、派遣会社の求人で応募した人に対して、旅費や支度金などを支給してくれるので、入社するのに経済的な負担はほとんどありません。
派遣会社から紹介された派遣先に住み込みで働くことになりますが、派遣社員に対する福利厚生は不備な会社が多く、家賃、電気代、冷蔵庫などの備品代、制服代など給料から差し引かれる金額が予想以上である場合が多いです。
また、多く稼いだ分、社会保険料が高くなり、負担が増えます。結果的に、手元に残るお金は僅かになり、貧困になる場合もあります。貧困ビジネスとよばれるのはこのためです。
仕事が合わずに辞める場合は、住むところもなくなりますから、注意が必要です。
ゼロゼロ物件
ゼロゼロ物件とは、住居の賃貸契約をする際に敷金・礼金がいらないという物件のことで、初期費用を必要としないため、低所得者層に人気があります。
しかし、解約時に原状回復費用を請求したり、家賃が滞ると鍵を交換して高額の鍵の取替費用を請求したりとトラブルもあります。
また、借り手が家賃を滞納したまま行方がしれなくなった場合に、相殺する預り金などがないため、あらゆる名目でそれに充当する金額を請求する業者もおり、問題を抱えています。
これらの手法から、低所得者層をターゲットにした貧困ビジネスといわれています。
無料低額宿泊所
無料低額宿泊所は、都道府県知事への届け出のみで開設できる福祉的居住施設のことをいいます。入居者のほとんどが生活保護受給者です。
本来の目的は、生活保護受給者などの困窮者の生活を支援するためのものですが、月額約12万円の生活保護費から、10万円前後を家賃、食費、その他の名目で徴収するケースも多く、貧困ビジネスの温床になっています。
また、ホームレスに生活保護を申請させて入所させ、生活保護費を搾取する団体も存在しており、入所者が逃げないようにしているケースもあります。
このような状況を行政側も把握していながら、生活保護受給者に対応するケースワーカーも不足しており黙認している場合もあり、問題提起がされています。
消費者金融・ヤミ金融
貧困ビジネスのもっともいい例が、消費者金融やヤミ金融です。一般の金融機関のカードローンなどを利用することが困難な生活困窮者は、消費者金融やヤミ金融から借金をします。
現在は、法定金利の遵守が厳しくなってなっていますが、それでも消費者金融やヤミ金融では高金利で融資しています。利息を返すのも大変で、元金を返済できず借金地獄に陥る人が多いです。
借金の取り立ても厳しく、日常生活をおくる上でも精神的ダメージが大きく苦労することになります。
貧困ビジネスの例
貧困ビジネスの対象となるのは主に、生活保護受給者です。毎月約12万円が確実に支給されますから、ターゲットにされます。
実際の貧困ビジネスの例としてはどのようなものがあるのでしょう。
NPOのSSS(エス・エス・エス)
NPO(特定非営利活動法人)の組織形態自体が、非営利をうたいながら実際には利益を追求しているケースも多いです。
NPO法人SSSの運営も貧困ビジネスといわれています。役所から生活保護受給者に対してNPO法人SSSを紹介されるケースも多く報告されています。
活動としては、生活保護受給者に宿泊施設を提供します。男性寮と女性寮に分け、女性の入所者へは個室が提供されますが、男性の場合は、6畳の部屋に2段ベッドが2つ、4人が詰め込まれれているという体験報告がされています。
女性寮の快適さを広告塔にして実態を隠しているといわれています。
NPO法人ふるさとの会
ふるさとの会のことを一部では、元祖貧困ビジネスという表現がされていますが、厚生労働省も推奨しているNPO法人です。
社会的弱者といわれている人を対象に支援事業を展開しています。このふるさとの会に関しては、体験者からの情報提供もなく、実態が把握できないです。
貧困ビジネスの過去の事件
貧困ビジネスの業者は、違法行為になる一歩手前のシステムをつくりうまく利用していますから、ほとんど事件にならない場合が多いです。
地商土木
地商土木は建設業界専門の人材派遣業の会社ですが、地商グループとしていくつかのNPO法人(NPO共生協会、NPOやすらぎの会、NPOあけぼのの会)を立ち上げています。
地域を元気にしたいといい、生活困窮者や高齢で働けない人などを支援したいとうたっていますが、実際には貧困ビジネスといわれる、生活保護受給者を対象にした宿泊施設をつくり、他と同じように生活保護費を搾取しています。
また、生活保護受給者をグループの施設で働かせたりして、NPO法人をうまく利用して、有料老人ホームなどもつくり、かなりの利益をあげています。
NPO(特定非営利活動法人)
NPO(特定非営利活動法人)とはどのような団体なのでしょう。非営利となっていますから、利益を追求する団体ではありませんが、利益を得てもいいことになっています。
営利団体でいう利益のことをNPOでは、余剰金といいます。この余剰金は次の事業のために使い、営利団体のように利益を分配することはありません。
NPOが団体を解散する際に残ったお金(残余財産)を分配することは認められていません。しかし、NPOで働いている人(役員・職員)は給料を取ることはできます。
貧困ビジネスの実態・種類
貧困ビジネスがなくならないのは、社会的弱者といわれる人たちの弱みを利用、または弱みにつけ込み確実に利益を得るシステムを合法的に行っているからです。
その実態や種類を見ていきましょう。
生活保護
無料低額宿泊所の入所者のほとんどは、生活保護受給者です。生活保護受給者は役所から紹介されて入所する場合も多くあります。
ホームレスなどに声をかけて、生活保護の申請をさせて入所させるケースも多く、貧困ビジネスの温床にもなっています。
タコ部屋(タコ部屋労働)
タコ部屋とは、労働時間以外は一箇所(部屋)に拘束され、自由に外出はおろか逃げることもできません。男性は、土木作業などの肉体労働、女性は風俗などで働かされます。
自らの意思でタコ部屋に入ることはほとんどなく、多くはヤミ金融などへの借金返済が滞り、強制的に連れて行かれるケースが多いです。
男女ともに、労働はきつく、なんだかんだと理由をつけて給料から天引されますから、ほとんど手元に残りません。ヤミ金融の利息も増えていきますからいつまで続くか先は見えません。
外部への連絡もできませんから深刻な事態になり、なんとか脱出する以外に解決方法はないでしょう。ヤミ金融業者と土建業者が組んだ貧困ビジネスといえます。
不動産業界
不動産業者が貧困ビジネスに関わっているケースが増えています。生活保護受給者が賃貸住宅を借りる場合は、家賃の上限額が決められています。その額を超える物件の場合には、入居自体が認められず礼金や仲介手数料などが支給されません。
不動産業者の中には、自社の賃貸物件に入居させるために虚偽の申請書類を提出させ、住宅扶助費をだまし取っていました。このような業者を「囲い屋」といいます。
「囲い屋」は、公園などにいるホームレスなどに定期的に炊き出しを行い、親しくなるようにして時期を見計らって生活保護の話をもちかけ、生活保護受給者にして、自社の賃貸物件に入居させるようにします。
生活保護受給者からは、確実に家賃収入が得られるのと、長期入居が見込めますから貧困ビジネスとして利益の確保ができます。
貧困ビジネスの問題点
貧困ビジネスの問題点についてみていきます。貧困ビジネスがなくならない理由の一つは、かなり悪質でない限り違法行為にはならないという点です。
無料低額宿泊所にしても、生活保護受給者に、住居を提供し、食事、風呂など生活する上で必要な条件を満たした上で、生活保護費の中から徴収するというシステムをとっていますから違法性はないということです。
理由の二つ目は、行政側が貧困ビジネスといわれる業者に依存している部分が大きいです。本来は生活保護受給者に対してケースワーカーを派遣して、相談にのったり自立の方向への指導を行う必要があります。
生活保護を開始した後のことを貧困ビジネスといわれながらも、一応NPO法人のところを紹介すれば、アフターフォローの手間が省けます。行政側と貧困ビジネス業者の利害が一致しています。
貧困ビジネスに感謝している人もいる
路上生活を続けていた人が、生活保護受給者になり、貧困ビジネスの無料低額宿泊所に入所しました。それまでは、食べることにも困る日もあり安心して暮らせる状態ではありませんでした。
生活保護費のほとんどを搾取されても、少しばかりの小遣いもあり、路上生活に比べるとずっと恵まれた暮らしになったといいます。
そして、今の生活を与えてくれた業者に感謝しているといいますから、需要と供給の関係も感じられ貧困ビジネス問題の根の深さがみてとれます。
NPOの肩書を利用した貧困ビジネス
NPO(特定非営利活動法人)というと、非営利活動をしているから良心的と捉える人が多いでしょう。もちろん良心的な活動のNPOも多くあります。
無料低額宿泊所などを運営している団体の多くは、NPOの肩書がついています。生活保護は半永久的に受給できる権利ではないでしょう。
事情により、働けず生活が立ち行かなくなった人が、国(国民の税金)からの生活の保護を受ける制度です。働けるようになったら生活保護は打ち切るべきです。
貧困ビジネスを行っている人たちにとって生活保護受給者は、貴重な収入源になっているため自立への指導は決して行いません。社会的弱者の救済をスローガンにしたNPOでも情報をしっかり集めて検討するようにしましょう。
社会的弱者を食いものにする人たちを決して許さないよう法整備をし安心して生活できる社会になるといいです。
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