毎年ほぼ恒例となっている、9月のiPhone新機種の発売。今年も9月21日にiPhone XSが発売されましたが、例年とは別の側面が話題となりました。
今年は、分割払いの審査が通らず、買えない人が出ているということがインターネット上で話題になったのです。なぜ、今年に限ってそんなことが起きているのでしょうか。
キャリアはクレジット会社でもある
まずは、ユーザーがスマートフォンを手に取るまでの仕組みをひも解いてみましょう。下図は、通信キャリアから分割払いで購入した場合の流れです。キャリアとは、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクのことを指します。
実はキャリアには、通信会社としての顔以外にもう1つ、クレジット会社としての顔があります。ユーザーがiPhoneの端末代金を一括払いする場合、端末はアップル→キャリア→販売代理店→ユーザーへと渡り、代金はその逆の流れになるだけですから、キャリアのクレジット部門とは基本的にかかわりません。
しかし、分割払いになった途端、かかわってきます。キャリアは先に販売代理店に、ユーザーの代わりに代金を立替払いし、その後2年間に渡ってユーザーから分割で回収します。当然、2年間払い続けられるかどうか、審査します。
この審査が通れば、販売代理店はユーザーに端末を売り、キャリアに立替払いしてもらった代金を、キャリアからの仕入れ代金の支払いに充てるわけです。
キャリアとクレジット会社の違い
キャリアのクレジット部門は、オリコやNICOSといったいわゆるクレジットカード会社と少しだけやっていることが違います。
いわゆる普通のクレジットカードには、ショッピング機能とキャッシング機能が付いています。どちらもあらかじめ利用できる枠が決まっていて、その範囲内なら、滞納などしていない限り、審査なしでいつでも何度でも繰り返し使えます。
お店でカード払いしようとすると、カード会社と通信しているので、審査されているように思う人もいるかもしれません。あれはカードが止まっていないかどうか確認しているだけで、審査しているわけではありません。
このように、枠を決めてその範囲内であれば繰り返し利用できる契約形態のことを「包括方式」の信用購入あっせん契約と言います。クレジットカード会社がお店に対し、「後日、私があなたに一括払いしますから、この人に今すぐモノを売ってください」と薦める契約なので「信用購入あっせん」なのです。
これに対し、買い物のたびに審査をするのが「個別方式」です。包括方式と個別方式では、別々に業者登録をする必要があり、いわゆるクレジットカード会社は包括方式であるのに対し、キャリアは個別方式で業者登録をしています。
携帯端末の分割払いは、ユーザーがキャリアとの間で個別方式の信用購入あっせん契約を締結することなのです。
今年はほとんどの人が審査対象に
端末代金の支払い方法には、キャリアとの分割払い契約以外に、現金、クレジットカードの一括払いがありますが、クレジットカードのリボ払いは認められていません。なぜかというと、キャリアは分割払いを使ってユーザーが他の通信会社に乗り換えてしまうことを防いでいるからなのです。
通常、クレジットカードのリボ払いを使うと、その分の金利をとられます。これを「分割手数料」と呼んでいるのですが、キャリアは分割手数料を取りません。この点はユーザーにとって大変お得ではあるのですが、その一方で、分割払いが終わるまでの2年間、他のキャリアに乗り換えることができなくなります。
販売代理店に販売報奨金を支払い、分割払い手数料も免除してもなお、通信料を長期間採り続けるほうがキャリアは儲かる、ということなのでしょう。
ここからが本題です。なぜ今年に限って「審査でハネられた」と言っている人が増えたのでしょうか。答えは単純で、昨年は審査の対象になる人がほとんどいなかったのに対し、今年はほとんどの人が審査対象になったからです。
(写真:ロイター/アフロ)