政府が、コンテンツを違法掲載している「漫画村」などの海賊版サイトを名指しで実施した「サイトブロッキング」。
その漫画村が利用していた、現代の配信プラットフォームビジネスを支える「CloudFlare」とは、いったい何なのか。4月23日放送の『小飼弾の論弾』で、プログラマーの小飼弾氏と山路達也氏が、安易なサイトブロッキングがもたらす危険性もふくめ、解説しました。
配信プラットフォームの生命線“CloudFlare”とは?
山路:
漫画村のことで話題になったのが、いわゆるブロッキングということに関して、「CloudFlare」という名前が出てきましたね。
小飼:
ああ、CDN【※】ね。ちなみにCDNって何ですか?
※CDN
コンテンツデリバリネットワーク。ウェブコンテンツをインターネット経由で配信するために最適化されたネットワークのこと。
山路:
コンテンツを一時的にためておいて、要求があった時に、もとの配信サーバーに行くんじゃなくて、そのCDNのサーバーからユーザーに配信することによって、トラフィックの負担を下げるキャッシュサービスということですよね?
小飼:
基本的にそうですね。運送会社に例えると、宅配の事務所って実は近所にあるじゃないですか。皆さんも荷物とか待ちきれなくなったり、あるいは自分で荷物を出す時にそういう集配所に行ったりしませんでしたか? その集配所を別のサービスとして運営しているのがCDNだと考えればいい。
山路:
なるほど。いちいち、そんな遠くのデカイ集配所までいかなくても、地元のところに行きますもんね。
小飼:
そうそう、CDNというのは、地元にあることに意味があるんです。だから、例えば違法コンテンツのオリジナルサイトが、日本の法が及ばない国に置いてあったとしても、漫画村とかの規模になれば、トラフィックが絶対に捌ききれないわけですよね。
山路:
サービスはCDNを使うことになる。
小飼:
そういうことです。そのCDNのサーバーというのは、どこにあるかといったら、日本なわけですよね?
山路:
じゃあ、そのCDNに圧力をかけるということ自体は正しいんですか?
小飼:
ものすごい正しいですし、日本の著作権法をみると、確かにキャッシュサーバー、もともと自分のデータでないものというのを、そこに置いておいて再配信するというのは、それだけでは著作権法には触れないんですよね。
ちゃんと今の著作権法ではそういう例外事項も設けています。そうでないとブラウザーのキャッシュまでダメだっていうことになりかねませんから。けれども、CDNの業者というのは、無差別にキャッシュをしてるんじゃないんですよね? コンテンツを配りたい人から、お金を取っているんですよ。
山路:
そうか、では、代金をもらっている時点で、手を貸しているということが明らかなんですね?
正しいサイトブロッキングをしないと大変なことに
小飼:
そうなんです。幇助(ほうじょ)罪で挙げようと思ったら、挙げられます。複数の弁護士さんがそう言っていますね。ただ、取り締まる時に気をつけなければいけないのは、CDNの業者というのは、あくまでも料金を払った業者のコンテンツはキャッシュするので、例えば、漫画村のIPアドレスを見てみると、実際には日本ではCloudFlareなんですけれども、そこに他のコンテントもキャッシュされてたりするんですよね。
だから、それだけ消せと言わなければいけない。ブロッキングのひとつの問題というのは、ブロッキングにはいくつかの段階があるんですけども、一番根本的なのは、違法コンテンツが発信されているIPアドレスを突き止めて、そのIPアドレスをブロックすることです。
IPアドレスブロッキングがヤバイというのも、違法でないCloudFlareがまともな業者から、まともにお金をもらってやっているサイトまでブロックしちゃう。
山路:
じゃあ、きちんとこのCloudFlareに、然るべきところ、この場合は政府や業界団体だったりするのかもしれないけども、違法サイトに関して止めろというふうに、ピンポイントで指示を出すようにしろと。
小飼:
だからDMCA Takedownとかの場合はURL単位になっちゃうんだけども、そうじゃなくてバーチャルホスト単位で要求を出さないといけない。そこは、ちょっと気をつけなければいけないところで、だから政府が言っているようなものはお話にならない。
山路:
単純なブロッキングではすべて、ざっくり対策が大雑把すぎるにもほどがあるだろうみたいな感じですね。
小飼:
もう、バカかと。大雑把で、技術的にも全然イケてないし、わかってないし。だからおよそCTOという役職が付く人で、あの政府を支持している人というのは、モグリですよ。はっきり言っときます、モグリです。どこの川上さんか知らないけど、モグリです。
山路:
言ってる言ってる(笑)。
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