韓国政府は南北対話の雰囲気を維持するため、北朝鮮が嫌うことは自ら控えているが、これは北朝鮮のご機嫌伺いどころか、その機嫌を警護していると言っても過言ではない。今年の初めに北朝鮮三池淵管弦楽団の玄松月(ヒョン・ソンウォル)団長が来韓した際には「(玄松月氏が)気を使う」との理由で韓国メディアによる取材を妨害したが、今度は脱北者出身記者の取材そのものを不許可とした。このように政府自ら言論の自由と職業選択の自由を制限し、北朝鮮の気分に合わせ続けているようでは、結果的に北朝鮮に間違ったメッセージを送り、北朝鮮の人権じゅうりんに一種の免罪符を与えてしまうだろう。今後北朝鮮は自分たちを擁護する韓国メディアと記者だけにしか取材を認めないと言い出す可能性も高いが、韓国の今の政権はそのような要求もおそらく素直に受け入れるだろう。
米国のペンス副大統領が今年2月に平昌冬季オリンピック開会式に出席するため来韓した際、北朝鮮政府高官との会談が予想されていた。ところがペンス副大統領は北朝鮮に抑留されその後死亡した米国人大学生ワームビアさんの父親と同行し、北朝鮮の関係者ではなく韓国に住む脱北者と面会した。そのためこの時はペンス副大統領と北朝鮮関係者との会談は行われなかったが、後に米朝首脳会談を先に提案したのは北朝鮮だった。北朝鮮は自分たちの必要に応じて動くにすぎず、相手が自分たちの意向に合わせたからといってたやすく対話に応じるようなことはしない。北朝鮮のような体制では、相手が対話を求めて善意を示せば、それを相手の弱点と考え際限なく譲歩を求めてくるものだ。そのため南北関係が健全な形で発展することを望むのであれば、なおのことしっかりと原則を守らねばならない。