韓国外交部(省に相当、以下同じ)の康京和(カン・ギョンファ)長官は10日に国会で行われた国政監査で、北朝鮮が韓国の哨戒艦「天安」を爆沈させたことへの対抗措置として行われている「5・24制裁」の解除を巡り「関係部処(省庁)と検討中」と証言した。さらに康長官は金剛山観光の再開についても前向きな考えを示した。韓国政府として5・24措置の解除に直接言及したのはこれが初めてだ。康長官は5・24制裁の解除を検討しているとする自らの発言で波紋が広がると「本格的に検討されているわけではない。言葉だけが先走って申し訳ない」と一歩退いた。しかしこの質疑は与党・共に民主党のイ・ヘチャン代表による誘導的な質問から始まったもので、事前に約束でもしたかのようなやりとりだった。
この質疑で「北朝鮮の観光はそれ自体が国連制裁か」との質問に康長官は「それは違う」と否定し「観光客による物品の購入や飲食店の利用は制裁にならない」と自信を持って説明した。観光は国連制裁の直接の対象ではないとする解釈を提示し、これを5・24措置の解除につなげ、金剛山観光を再開する道筋をつけたい考えのようだ。
5・24措置は2010年、北朝鮮が哨戒艦「天安」を爆沈させ、韓国軍兵士46人が犠牲となったことに対抗し、韓国政府として取ることのできる最低限の経済制裁だった。5・24制裁に基づいて韓国政府は開城工業団地を除く南北間の商取引や貿易を禁止し、年間で最大3億ドル(現在のレートで約340億円、以下同じ)が北朝鮮に流れるのを阻止した。そのためもし5・24措置の解除を検討するのであれば、当然のことながら北朝鮮がまず哨戒艦を攻撃した事実を認め、謝罪や再発防止に向けた約束など最低限の措置が取られなければならない。しかし北朝鮮は謝罪どころか「南側の謀略自作劇」などと今も主張しており、また攻撃を指揮した金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長は4月に訪朝した韓国メディア関係者らに対し「私が爆沈の主犯と言われている人物」と言ってのけた。