【9事例】なぜタレントマネジメントを導入したのか?
2017.12.05 Tue
人事
目次
記事の著者:編集長 紺野祐樹
なぜタレントマネジメントを導入したのか、9社の人事マネージャーらに話を伺いました。
「そろそろ顔もわからない社員が出てきた」となる従業員数100名規模以上で、「人事情報のエクセルが点在、時には散逸」という状況を改善するためにタレントマネジメントシステムが使われだしています。また、人事情報の集約・蓄積だけでなく「人事評価の材料を増やす!」、「埋もれた人材を発見する!」などといった目的にも使われています。
グローバル企業では、経営方針で「現地人材に任せる」と表明しながらも、「じゃあ、誰に任せよう、誰がいるかもわからない」という解消に使われるのが最初の一歩のようです。
事例1 中堅企業:人事評価の公正化と育成指導の強化
情報通信業 従業員数:500~1,000名
導入システム:カオナビ
- 人材育成と評価に力を入れているので、「あなたのことを見ている」と伝えたかった。一つの部署に複数のマネージャーがいるケースもあるので、「あの人は見てくれているが、あの人は見てくれない」という情報の偏りは避けたかった。
- 上司と部下の1 on 1を実施しているので、指導に活かすためにも対話の記録の仕組みを必要としていた。
事例2 中堅企業:人材把握と人材流出の防止
広告代理店業 従業員数:1,000名以上
導入システム:カオナビ
- 規模の拡大に伴い全社MVPを表彰する際に、役員会で「これは誰だ?」という声が出てきた。社内人事情報もエクセル表が散逸していたので集約・蓄積して管理する必要性を感じていた。
- また、退職率の低減・優秀人材の流出防止が課題なので、従業員満足度調査による改善点の拾い上げや、転職の可能性がある人材の発見を効率的に行いたいと考えていた。
事例3 中堅企業:人材抜てきや育成のための人材分析
情報通信業 従業員数:100~500名
導入システム:タレントパレット(Talent Palette)
- 人材抜擢や今後の採用に活かすためにも「パフォーマンスが高い人はどのような人か」を分析したいと考えていた。
- 人材抜擢や異動検討の際には、誰をどう動かすのか、人件費変動を踏まえながら何パターンも試行していたので、検討作業を効率化したかった。
事例4 大企業:人事評価の公正化
金融業 従業員数:1,000名~10,000名
導入システム:COMPANY
- 適正な人事評価が行えるよう、蓄積する人事情報を拡充したかった。それまでは、各人の活躍の情報が人事部に共有されてもその場限りであったし、人事評価はどうしても頭の中にある情報で判断するなど客観性が十分でなかった。
- 人事異動でも、各人の得意・不得意や上司部下の相性などもより加味した判断を行えるようにしたかった。
事例5 大企業:グローバル人材の把握・抜てき
金融業 従業員数:10,000名以上
導入システム:SAP SuccessFactors
- 適正な人事評価や、隠れた人材発掘のためにも人事情報を蓄積したかった。
- グローバル化が進んでいるので、海外拠点の人材把握と、外国人抜擢にも備えたかった。
- 離職率低減が課題の一つなので、社員の経歴、実績やキャリアプラン等の情報を拡充できれば、人事異動の際のミスマッチが減り、人材の活躍を後押しできると考えている。
事例6 大企業:グローバル人材の把握・抜擢
製薬 従業員数:1,000名~10,000名未満
導入システム:SAP SuccessFactors
- 海外拠点が拡大している中、もはや国内の本社では人材を把握しきれていない状況。グローバルでの人材抜擢・人事異動の検討の基となる人事情報を必要としていた。
- 人材活用において、日本人が海外に行くのではなく、現地で採用し現地の方に管理職を担っていただく現地化が目標。そのため、現地でも人事情報を使いこなせる環境にしたかった。
事例7 大企業:グローバル人材の把握・抜てき
小売業 従業員数:10,000名以上
導入システム:Workday(ワークデイ)
- 急成長に伴い整備が追い付かず国内外で人事情報が点在する状態だったため、海外拠点も含めグローバルに活躍できる人材が何人、どんな人がいるか把握したかった。
- 人材抜擢・人事異動をグローバルで考えることも重視していた。どのようなキャリアを歩んでおり、昇格スピードはどうだったか、将来何をしたいのか、などを踏まえて抜擢したかった。
事例8 大企業:グローバル人材の把握・抜てき
自動車部品製造業 従業員数:10,000名以上
導入システム:SilkRoad Performance
- 海外拠点の経営幹部はこれまで日本人が多かったが、今後は外国人の幹部比率を高めていきたい方針であった。しかし、国内の本社ではどのような人材がいるかわからないという問題があった。
- そこで、国内外全ての人事情報を一元管理し、人材抜擢・人事異動に使えるようにした。
事例9 中堅企業:人材の育成指導の強化
不動産業 従業員数:1,000名未満
導入システム:SilkRoad Performance
- 人材育成重視と言いながらも育成状況が把握できていなかった。そこで社員の中期人材育成計画をシステムで管理できるようにし、目標設定や面談のフィードバック等を蓄積していった。社員は人事評価時だけでなく、日々の振り返りにも使っている。
- 蓄積した人事情報は、人材抜擢にも活用している。
所感
タレントマネジメントは、以上のように人材抜てきのためのスキル人材の把握、離職率抑制と意欲醸成のための人事評価の公正化、人材育成のための指導強化が見込まれます。会社規模が大きくなり人材を把握しきれない、人材の育成を丁寧にやりたい場合は活躍が見込まれます。
一方で、タレントマネジメントを入れただけで課題が解決されることはなく、解決したい課題への対応策を円滑に進めるための基盤としての位置づけでしょうから、対応策としては、組織の人材活用方針の磨き込み、人事制度の見直し・充実化が先にあってからになると思います。
また、タレントマネジメントシステムの活用においては、人事だけでなく現場部門も含めて情報をしっかり蓄積していくことが大前提となる中、どのように情報を蓄積していくか、特に「現場が持つ情報をどう蓄積していくか」は今後の検討課題であるとの声が多く聞かれました。短期的には、現場にとって入力する手間が増えた、効果が実感できない、と思われる可能性がありますので、中長期的な視点での導入メリットの浸透は大事なようです。
タレントマネジメントシステムは、情報の蓄積と利用の方法を見越しておけば役立つシステムです。各システムの利用場面の詳細は以下でご案内していますので、ぜひご参考にしてください。
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