『新潮45』事変を能町みね子・サムソン高橋が斬る「小川榮太郎クンはセクシー」!?
「新潮45事変」。そう名付けたくなるような今回の騒動。同誌8月号の杉田水脈衆議院議員の寄稿と、彼女を擁護する「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」という10月号の特集は、LGBT当事者のみならず、いま、日本で暮らす多くの人々に、大きな衝撃を与えました。
そのインパクトの強さゆえなのかメディアでは非当事者の声が大きく、LGBT当事者の声が聞き取りづらくなっているような気もします。
LGBT当事者でもある、ゲイライターのサムソン高橋さんと、出生時の性を男性から変えた女性のマンガ家・エッセイストの能町みね子さん。契約結婚を前提に夫婦(仮)として生活中のおふたりは、今回の騒動についてどんなふうに感じているのでしょうか。
清濁併せ呑みながら燦然(さんぜん)と輝くおふたりの毒舌もそのままに、3回にわたりお届けします。
――大きな批判を受けての休刊によって、いちおう収束したかのように見える、いわゆる「新潮45事変」ですが、おふたりでは今回の件について、どんなふうにお話しされました?
能町みね子(以下、能町):話してないよね。
――えっ!? 意外です。
サムソン高橋(以下、サムソン):そうね。もともと、今回の取材依頼をいただくまでは、杉田すいみゃく……「みお」じゃなくて「すいみゃく」で通すんだけど(笑)、その文章を読んでもいない。
能町:私は、コラムで取り上げるために、わざわざ雑誌を買ってやって読みましたね。でも、8月号の杉田氏の記事は、ことさらに問題だとして取り沙汰されている「LGBTには生産性がない」と書かれている部分は、私としてはたいした話だと感じなくて、むしろ全体のほうがやばかったという結論ですね。具体的なやばさは、あとで添削しますけど(次回記事)。
サムソン:私も、今回のことでみね子から借りて初めて読んだのね。もともと、この件についてはTwitterとかでLGBTの人たちを中心に騒ぎになっているのを見て、「何が起こったのかしら?」と思って、まず杉田水脈のTwitterのページを見てみたんですよ。そうしたら、いきなりヘッダーがはすみとしこのイラスト。
能町:そうなんですよ!
サムソン:私はもうその時点で、「あ、この人やばい人だ」と思って、実はそれから触れないようにしました。正直、「ばっちいし、わざわざ汚いものを見たくない」といった感じなんです。実際に読んでみると、大前提として、思った以上にひどい。文章がどこもかしこも頭が悪い。お話にならない。なんでしょう、どこが駄目っていうんじゃなくて、「とんでもない言説をまともに文章にしてみましょう選手権」があったとすると、その佳作ぐらいの感じよね。
能町:そう、冒頭からおかしい。特集が「日本を不幸にする『朝日新聞』」なもんで、朝日新聞をバッシングするために、「朝日にはLGBTの記事が多すぎる」ことを証明しようと各新聞ごとにどれだけLGBTについて記事にしているかの統計をとったら、なんと毎日新聞の記事が一番多く、朝日新聞は2位でした……じゃあ朝日は別にいいじゃん、ってなるよね(笑)。
サムソン:とはいえ、「日本を不幸にする毎日新聞」だとちょっと弱いから……(笑)。
能町:そう、朝日新聞を叩かないとパンチがない。でも、実際には2位だったので序盤でつまずいて、そこから無理やり立て直そうとするから、朝日新聞の話はあんまり出てこなくなっちゃうんですよね。
サムソン:書くほうも辛かったんじゃないかな。
能町:無理やり感はあるよね。締切までにどうにか体裁を整えたらこういうことになったんでしょうけど。
サムソン:LGBT当事者の人たちは、水脈の書いたものを読んで「怒りに震えた」とか「悲しみに打ちひしがれた」とか言ってたじゃないですか。でも、こんなものを見てショック受けたりするの? なんてナイーブ!と思ってさ。
能町:私はね、何がショックかというと、「新潮ともあろうものが杉田水脈の文章載せんなよ!」ここですよ。
サムソン:そう。たとえば、これが「月刊Hanada」とか「WiLL」だったらスルーされてたと思う。
能町:そう、「あ、いつものアレね」でスルーですよね。ところが、今回は「新潮45」という雑誌で、かつ、小川榮太郎にKAZUYAですよ。
サムソン:カズヤって誰? あ、X JAPANの人が……。
能町:ToshIが洗脳された人じゃないよ?
サムソン:あれは誰だっけ。
――MASAYAですね。
サムソン:そうだった。だから、杉田水脈が書いている時点で、すごくレベルが低くて、相手にするのもおかしいんじゃない。
能町:そういう感じだよね。でも、「新潮45」に載っちゃった以上、仕方ないから、みんながんばって相手にしてあげているんだよ。
サムソン:流れとしては、「新潮45」もどんどん部数が減っていくなかで、なんとか起死回生しようとこういう特集を組んだと。で、水脈の記事も、そもそもは表紙にも出ていない、扱いの大きくない記事だったんですよね。でも、それが一部で反響を呼び、編集部としては「おっ、この路線はいける!」と思ったと。
能町:「売れ線でいってみよう!」と突き進んだら、思ったより「燃えて」しまった。……YouTuberが火薬を使って面白い配信をしてやろうとしたら、はからずも焼身自殺してしまった。そんな趣がありますよね。
サムソン:そういえば、ふたりで少し前にも「焼身自殺だね」って話してたよね。そんなこと言ってたら、数か月後に本当に休刊になってしまった。
能町:YouTuberは火を使っちゃいけないってことですね。
サムソン:「ガソリンに火つけちゃいけないっていうけど、どのくらい燃えるかやってみよう!」で、実際にやってみたら、どわーっと炎上してしまって。
能町:そしてYouTuberのなかでは伝説となった……(笑)。
そのインパクトの強さゆえなのかメディアでは非当事者の声が大きく、LGBT当事者の声が聞き取りづらくなっているような気もします。
LGBT当事者でもある、ゲイライターのサムソン高橋さんと、出生時の性を男性から変えた女性のマンガ家・エッセイストの能町みね子さん。契約結婚を前提に夫婦(仮)として生活中のおふたりは、今回の騒動についてどんなふうに感じているのでしょうか。
清濁併せ呑みながら燦然(さんぜん)と輝くおふたりの毒舌もそのままに、3回にわたりお届けします。
「生産性」より文章全体がやばい
――大きな批判を受けての休刊によって、いちおう収束したかのように見える、いわゆる「新潮45事変」ですが、おふたりでは今回の件について、どんなふうにお話しされました?
能町みね子(以下、能町):話してないよね。
――えっ!? 意外です。
サムソン高橋(以下、サムソン):そうね。もともと、今回の取材依頼をいただくまでは、杉田すいみゃく……「みお」じゃなくて「すいみゃく」で通すんだけど(笑)、その文章を読んでもいない。
能町:私は、コラムで取り上げるために、わざわざ雑誌を買ってやって読みましたね。でも、8月号の杉田氏の記事は、ことさらに問題だとして取り沙汰されている「LGBTには生産性がない」と書かれている部分は、私としてはたいした話だと感じなくて、むしろ全体のほうがやばかったという結論ですね。具体的なやばさは、あとで添削しますけど(次回記事)。
サムソン:私も、今回のことでみね子から借りて初めて読んだのね。もともと、この件についてはTwitterとかでLGBTの人たちを中心に騒ぎになっているのを見て、「何が起こったのかしら?」と思って、まず杉田水脈のTwitterのページを見てみたんですよ。そうしたら、いきなりヘッダーがはすみとしこのイラスト。
能町:そうなんですよ!
サムソン:私はもうその時点で、「あ、この人やばい人だ」と思って、実はそれから触れないようにしました。正直、「ばっちいし、わざわざ汚いものを見たくない」といった感じなんです。実際に読んでみると、大前提として、思った以上にひどい。文章がどこもかしこも頭が悪い。お話にならない。なんでしょう、どこが駄目っていうんじゃなくて、「とんでもない言説をまともに文章にしてみましょう選手権」があったとすると、その佳作ぐらいの感じよね。
能町:そう、冒頭からおかしい。特集が「日本を不幸にする『朝日新聞』」なもんで、朝日新聞をバッシングするために、「朝日にはLGBTの記事が多すぎる」ことを証明しようと各新聞ごとにどれだけLGBTについて記事にしているかの統計をとったら、なんと毎日新聞の記事が一番多く、朝日新聞は2位でした……じゃあ朝日は別にいいじゃん、ってなるよね(笑)。
サムソン:とはいえ、「日本を不幸にする毎日新聞」だとちょっと弱いから……(笑)。
能町:そう、朝日新聞を叩かないとパンチがない。でも、実際には2位だったので序盤でつまずいて、そこから無理やり立て直そうとするから、朝日新聞の話はあんまり出てこなくなっちゃうんですよね。
サムソン:書くほうも辛かったんじゃないかな。
能町:無理やり感はあるよね。締切までにどうにか体裁を整えたらこういうことになったんでしょうけど。
相手にしないという選択肢もある
サムソン:LGBT当事者の人たちは、水脈の書いたものを読んで「怒りに震えた」とか「悲しみに打ちひしがれた」とか言ってたじゃないですか。でも、こんなものを見てショック受けたりするの? なんてナイーブ!と思ってさ。
能町:私はね、何がショックかというと、「新潮ともあろうものが杉田水脈の文章載せんなよ!」ここですよ。
サムソン:そう。たとえば、これが「月刊Hanada」とか「WiLL」だったらスルーされてたと思う。
能町:そう、「あ、いつものアレね」でスルーですよね。ところが、今回は「新潮45」という雑誌で、かつ、小川榮太郎にKAZUYAですよ。
サムソン:カズヤって誰? あ、X JAPANの人が……。
能町:ToshIが洗脳された人じゃないよ?
サムソン:あれは誰だっけ。
――MASAYAですね。
サムソン:そうだった。だから、杉田水脈が書いている時点で、すごくレベルが低くて、相手にするのもおかしいんじゃない。
能町:そういう感じだよね。でも、「新潮45」に載っちゃった以上、仕方ないから、みんながんばって相手にしてあげているんだよ。
サムソン:流れとしては、「新潮45」もどんどん部数が減っていくなかで、なんとか起死回生しようとこういう特集を組んだと。で、水脈の記事も、そもそもは表紙にも出ていない、扱いの大きくない記事だったんですよね。でも、それが一部で反響を呼び、編集部としては「おっ、この路線はいける!」と思ったと。
能町:「売れ線でいってみよう!」と突き進んだら、思ったより「燃えて」しまった。……YouTuberが火薬を使って面白い配信をしてやろうとしたら、はからずも焼身自殺してしまった。そんな趣がありますよね。
サムソン:そういえば、ふたりで少し前にも「焼身自殺だね」って話してたよね。そんなこと言ってたら、数か月後に本当に休刊になってしまった。
能町:YouTuberは火を使っちゃいけないってことですね。
サムソン:「ガソリンに火つけちゃいけないっていうけど、どのくらい燃えるかやってみよう!」で、実際にやってみたら、どわーっと炎上してしまって。
能町:そしてYouTuberのなかでは伝説となった……(笑)。
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●Campy!bar ASOBi
女装パフォーマー/ライターのブルボンヌ氏がプロデュースするミックスバー。
日替わりキャストとしてサムソン高橋氏も店に立つ。(現在は月曜担当。変更の可能性あり)
新宿区新宿2-10-7 TOMビルB1FA
TEL:03-3354-6066
詳細はtwitterアカウント @Campy_bar
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