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大乱闘コールオブデューティーブラザーズ
想像以上に面白い。
筆者はメジャーどころの「バトロワタイトル」、『PUBG』や『Fortnite』等はある程度触ってきたものの、この作品は単なる二番煎じというより、独自の「カジュアルバトロワ」というジャンルを確立していると思う。
無論、簡単なバトロワを作ろうというアイディア自体は新鮮でも何でもない。
元々、「バトロワ」は人気の割に硬派なジャンルだ。『PUBG』は『ARMA』シリーズに端を発する高いリアリティにより、射撃や移動にはかなりの癖がある。『Fortnite』は建築要素を悪用利用したムーブにより、初心者は上級者に位置エネルギー差で負けるという、大きな壁があった。
なら無論、誰でも参加できてドン勝(1位になること)を狙えるカジュアルなバトロワが増えるのは必定。
Cliff Bが手がけた『Radical Heights』や、ハイスピードな戦闘をウリとする『Islands of Nyne: Battle Royale』等が発売されはしたものの、これらはハッキリ言って失敗作だった。
何故か。カジュアルであると同時に、オリジナリティを見いだせていないからだ。既に『PUBG』や『Fortnite』で腕を磨いた猛者が、その貴重なスキルをかなぐり捨ててでも遊びたくなる、独自の魅力に欠いていたのだ。
では、『CoD:BO4』の「Blackout」における”独自の魅力”とは何か。これは要するに、過去の『CoD』シリーズで築いた莫大な遺産をそのままブチ込むという、チートめいた物量作戦によって実現している。
例えば戦闘を考えた場合、確かにこの作品は『PUBG』のリアルな狙撃戦も、『Fortnite』の空中戦もない。ひたすら地べたを走り回って撃ち合うだけだ。技術も戦略も大して問わないが、些か単調といえるだろう。
それでも楽しいと思えるのは、『CoD』が大体受け継いできた秘伝のタレとでも呼ぶべき、絶妙な銃の挙動やバランスによるものだ。「ダダダダ、ブシュッ、カチャカチャ コキッ(リロード)」この快感がたまらない。
彼らはどの程度の銃声、アクション、バランスに調整すれば、毎日飽きもせず単調極まる撃ち合いを10年以上続けてくれる程楽しめるのか、それを理解しているのである。(恐ろしい事に!)
マップに関しても、既に『PUBG』が構築した個性的かつバランスの取れたマップを超える事は極めて困難だった。
だが「Blackout」はこともあろうに、『CoD』シリーズ(『Black Ops』シリーズ)から名マップをぶっこ抜いて移植するという、清々しいまでのゴリ押しをやってのけた。
『BO』シリーズの名マップ「Nuketown」は無論のこと、「Firering Range」「Estate」「Hydro Dam」「Asylum」(最後ゾンビじゃねえか!)、これまたファンがアヘアヘ言いながら何百回と血を流した戦場が、時空を捻じ曲げて点在し、一つのマップに融合している。
これらは単にファンサービスなだけでない。それぞれのマップは、何百回何千回と遊んでも飽きないよう、徹底した調整が施され、リリースされたものだ。その中で更に評価の高いものが厳選され、今ここに選ばれている。
何も考えず建物や遮蔽物を配置しただけのマップとは訳が違う、最高の戦場であると言えよう。
このように、この作品はカジュアルバトロワとして設計する上で、これまで『CoD』シリーズで培われたテクノロジーとリソースを惜しみなく投入するという、大人気なさすぎる戦略により高いクオリティを発揮している。
そもそも、カジュアルながら熱狂してもらうタイトルを作るのは、実際は本当に難しい事かもしれない。難しくすれば初心者が逃げ、簡単にすれば上級者が飽きる、このギリギリの綱渡りを成し遂げねばならないからだ。
そして、事実として本作は「成し遂げた」と言って良いだろう。過去10年間培われたコンテンツを新たな競技の中にぶちまける、そうこれは、言うならば大乱闘コールオブデューティーブラザーズなのである。
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遊ぶほどに感じる新鮮さ
無論、本作は何の考えもなしに、2つの既存のアイディアを繋げたわけではない。そこには「CoD x バトロワ」を成し遂げる上で、徹底した下準備と調整が施されている。
まず、とにかくこのゲームはテンポが早い。『Fortnite』も早いタイトルではあるが、「Blackout」はそれよりもっと早い。サッと集まって、サッと殺し合って、サッと次の試合に行く。ドン勝演出すら早い。
その理由はいくつかあるが、まず序盤に湧く銃が高性能というのもある。この作品は所謂「ファーム*1」の必要性が殆ど無い。ピストルならともかく、長物の銃さえ見つかれば大抵の場面でまず戦える。
これによって序盤の運ゲー感が減るだけでなく、最初からバンバン殺し合って装備を奪えるようになる。アグレッシヴな展開だ。
その代り、パークやアタッチメントというカスタマイズ要素がある。これらは銃ほど致命的な影響がないものの、あれば間違いなく戦闘を有利に運べるアイテムたちだ。最終的には、やはりキルを持っている人間が勝ちやすくなるよう設計されているので、上級者は当然有利になる。
更に細かい点を見ても、例えば足音が比較的大きいのは上手く機能している。この作品はそこまで索敵の必要性がなく、走っている限り近づいたらお互いの位置がすぐわかるようになる。
また、UIも良く考えたものだと関心する。PC版前提だったバトロワタイトルと異なり、CS版(=パッド)がメインとなる作品で、どうやってリソース管理をするのか不思議だったが、それなりに違和感なく遊べている。
このように、本作は単にアイディアをくっつけるだけでなく、その上で施した調整が本当に絶妙だ。
真の魅力はパーティプレイ
ここまで魅力を並べても、やはり普通に遊ぶだけでは『PUBG』の戦略性や駆け引きになれたプレイヤーにとっては、些か淡白すぎると感じるだろう。
だが本作の真の魅力は、友達と一緒にDuo(2人)やSquad(4人)を組んで楽しむパーティプレイにある。と言うか恐らく、複数人で遊ぶ事に寄せたのではないか、と感じるバランスなのだ。
まずなんと言っても、本作は『PUBG』のFPPモードのように、一人称視点固定のバトロワである。本来バトロワは広大なマップで散発的に戦う上、一人称の視野の狭さでは死角から襲われる事が増える。
これは一人で遊ぶ限りは、まぁカジュアルに遊ぶ調整なのかなと思うのだが、パーティプレイにした途端、お互いがお互いの不足した視野を補い、連携するための高度な戦略要素へと変化するのだ。
そもそも『PUBG』の大会等でもFPPモードは積極的に取り入れられている。これはTPPモードにはない、部隊での連携したプレイがesportsとしての面白さになるからだ。
また、一人ではやや供給過多に思える物資量も、パーティプレイでは誰に何をもたせるかという戦略に繋がる。
仮にこれが『PUBG』程に供給量が少ないと、リソースの配分がかなり困難になっていただろう。「Blackout」は最悪、オートマチックの銃と弾薬があれば仕事が出来るので、仲間同士で取り合う必要がない。
戦闘においても『CoD』らしい、サクッと倒せる反射神経重視の撃ち合いも、仲間といれば連携という戦略が問われるようになる。自分が誰をフォーカスして、どこをカバーし合うか、ここでも連携が問われるのだ。
更に、最初述べた『スマブラ』のようなパーティ要素、例えば懐かしいマップや、あちこちに出現するトラックやヘリコプターのようなビークル、そして一定箇所で湧くゾンビ等、こうした要素も一人では「フフッ」と寂しく笑うだけだが、皆で遊んでいれば、あんな発見があったこんな発見があったと盛り上がる。
仲間で遊ぶ対人ゲームはどうしてもギスギスしやすいので、こうした息抜きできるカジュアルさは本当に良い。コミュニケーションも円滑になる。
元々、『CoD』はガッチガチのゲーミングチェアで、一人座りながら没頭するというよりは、特に海外では大きなリビングでテレビにつなぎながら、子供が学校の友達とワイワイ盛り上がりながら遊ぶスタンスが主流だ。
実際、マルチプレーではパーティ参加者が本当に多かった。彼らにとって、我々の想像以上に『CoD』は身近なゲームなのだろう。日本においても、10代の若者に未だ人気なのは『CoD』である。
そんなプレイヤー層を見越してか、本作はパーティプレイで遊ぶ事でさらなる魅力を発揮する。
無論一人で遊んでも楽しいし、単にカジュアルなだけでもない。だがVCで連携を取りながら、かつ初心者から上級者まで幅広い層と一緒に遊べるバトロワは、本作ぐらいのものだ。
……さて、ここまで褒めてきたが、これにはいくつか背景がある。
まずバトロワタイトルがとんでもない玉石混交の市場ということ。流行りのジャンルではよくあることだが(5年前のDayZクローンのように)、ゲームの9割は地雷だった。
かといって玉座にいる『PUBG』や『Fortnite』だけでは発掘しきれないポテンシャルのあるジャンルだと思っていたので、本作のような希少な「玉」はありがたい。
もう一つが、『CoD』として珍しくマルチプレーが楽しかったこと。正直ここ5年の『CoD』は完全に過去のクローンを量産するだけで、ファンとしても残念だった。「Blackout」は本当に良いトライだったと思う。
そんなわけで、欠点がないわけでもない。まずマップは過去作ぶっこ抜きなので既視感が凄いし、そもそもこの作品が『PUBG』並に遊び続けられる作品かどうかは、1年2年経たないとわからない。
何よりキャンペーンなしは、初代からプレイしてきたファンとしては本当に残念。『BO2』も『BO3』も個人的に微妙だったから消した気持ちはわからなくもないが。あとPC版はBattle.netが正直面倒。Steamで遊べる例の2本より若干遠のく。
何にせよ、バトロワを求めるならトライする価値はある良作。彼らなりの「翻訳」に驚くこと請け合い。
*1:戦闘せず装備を揃えること