趣旨文
中世から近世にかけて、日本人は絵巻や浮世絵で日常のなかの目に見えるもの、あるいは形なきものを視覚化してきました。日常の「表と裏」、「この世とあの世」。そこには今以上に境目があいまいな世界が広がっています。
本展覧会では、国際日本文化研究センターが現在所蔵する妖怪画・春画のコレクションより精選された約150点を通して、「笑い」と「怖い」という一見相反するテーマのもと、恐怖と笑いが地続きで繋がる前近代の豊かな日常をみていきます。
昨年創立30周年を迎え、日文研の名で親しまれている国際日本文化研究センターは、1987年日本文化に関する国際的・学術的な総合研究と世界の日本研究者に対する研究協力・支援を行うことを目的に設置されました。
展覧会のみどころ
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初のコレクション公開!
本展では、創立初期より収集・保存をされている春画と妖怪画のコレクション750余点より精選された150点をご覧いただける初の機会となります。
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世界初公開作品「俳諧女夫まねへもん」が登場!
浮世草子・浮世絵の題材・画題として描かれてきた「豆男もの」の一つである本組物は、仙薬などによって体の小さくなった男女が、様々な閨房(寝室)をのぞいて色道修行をする趣向で描かれた鈴木春信「風流艶色真似ゑもん」の続編です。伝存数が少なく、全24図のうち、図版掲載されたものが15図、所在が明らかなものはわずか8図。本展では今回、所在が明らかになった3図を含む4図を展示。そのうちの2図は研究書にも図版掲載がなく、初公開となります。
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日文研の妖怪画の魅力
怪異・妖怪の造形図像は、日本文化の歴史において重要な役割を果たしてきました。しかし、これらの資料は長らく学術的な場から見すごされてきました。日文研では他の研究機関にはあまり収蔵されていない妖怪画を日本文化研究の基礎資料として積極的に集めてきました。描かれた妖怪はこわくもあり、ユーモラスなものでもあります。
展示構成
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イントロダクション
「春画」といえば、あるいは「妖怪画」といえば、どのようなイメージが浮かぶでしょうか。人の性を描くもの、異形や怪異を描くもの。一見、この二つは全く異なるものとみなされるかもしれません。しかし、春画や妖怪画をながめていると「わらい」と「こわい」という言葉が浮かび上がってきます。
性を誇張して描き出す春画には思わず笑みをこぼしてしまうこともあります。また時に春画は人の死をためらいなく描き、見ている者に「性」とは「死」とは何かを突きつけます。
それは妖怪画についてもいえるでしょう。人々を怖がらせる鬼や幽霊も、人と同じように振る舞って笑いを誘う妖怪も多様な「妖怪画」の登場人物たちです。
「わらい」と「こわい」は相反するもののように思えますが、それらは表裏というよりは隣り合わせに存在するようにも思われます。人は自分の理解、知識、常識の範疇から大きく外れたものに出会った時、思わずわらってしまったり、あるいは恐怖を覚えたりするのではないでしょうか。
地続きに広がっている春画と妖怪画の世界をどうぞお楽しみください。
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生・性・死
人はどのように生まれ、生き、死んでいくのか。人生の様々な側面を、人間、動物、幽霊などとの交わりからみていきます。
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復讐する幽霊/退治される妖怪
幽霊・妖怪は日常に潜むもの。一方で、猛々しい武者たちによって劇的に退治される存在でもあります。そしてときに妖怪退治の絵は、春画にも題材を提供していました。
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不思議な生き物
/おかしな生き物
妖怪画、春画には空想を含め多様な生き物が描かれています。その愛らしい、あるいは奇妙な姿をながめていきます。
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おおらかな信仰
古来、日本における性と信仰の結びつきは強い。また、病や災い、あるいは地獄といった見えないものを視覚化した絵画も多く描かれました。ここでは様々な信仰の様相が垣間見える表現を紹介します。
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戯れ
現代の私たちにとって意外かもしれませんが、日本の春画には「笑い」があふれています。性にまつわる滑稽な人間のやりとり、誇張された性器、古典や現代文化を題材にしたパロディ。読者を笑わせる方法はバラエティに富んでいます。ここでは、妖怪画にみられる笑いも紹介します。
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おもちゃ絵―妖怪で遊ぶ、性で遊ぶ
幕末になると子ども向けに様々な玩具絵が作られ、その中で妖怪は人気のモチーフの一つでした。さらに、そのフォーマットを応用して、大人向けの玩具絵も登場します
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春画復刻プロジェクト
日文研では、江戸時代の春画を現代の職人達が復刻するプロジェクトも進行中です。ここでは、春画を切り口にして伝統と現代を結ぶ日文研の活動を紹介します。
※すべて国際日本文化研究センター所蔵
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京都国立近代美術館・細見美術館 相互優待のご案内
京都国立近代美術館の観覧券をご提示頂けますと、団体料金にてご入館頂けます。
また、細見美術館の入館シールまたは友の会メンバーズカードを京都国立近代美術館にてご提示頂ければ、京都国立近代美術館で開催中の展覧会を割引料金にてご観覧頂けます。
※ 展覧会によっては、優待が適用されない場合がございます。詳しくは各窓口までお問合せ下さい。
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京都市美術館・細見美術館 相互優待のご案内
京都市美術館の観覧券をご提示頂けますと、団体料金にてご入館頂けます。
また、細見美術館の入館シールまたは友の会メンバーズカードを京都市美術館にてご提示頂ければ、京都市美術館で開催中の展覧会を割引料金にてご観覧頂けます。
※ 展覧会によっては、優待が適用されない場合がございます。詳しくは各窓口までお問合せ下さい。
※ 2017年4月から京都市美術館本館は休館となり、別館のみ開館しています。