霞が関から見た永田町

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加計孝太郎理事長があらためて記者会見を行った理由から考える

 

 

 

なぜ加計孝太郎理事長はあらためて会見を行ったのか

 

 加計学園が新設した獣医学部の現在の状況について先日書いた。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 

 ところで、そのエントリの導入で言及した加計学園の加計孝太郎理事長の記者会見。この記者会見が開かれた直接の理由については、あまり重要性をもって扱われていない。


 しかし、その理由はこの加計学園問題を読み解く上では重要な鍵となる。

 

 会見が開かれたのは、新設獣医学部が立地する愛媛県側からの求めがあったからである。この問題に向かい合ってきた中村時広知事、さらには県議会も加計理事長に説明を求めたのである。


 愛媛県議会に至っては、2018年6月定例会において、「学校法人加計学園のコンプライアンスとガバナンスの確立等を求める決議」を決議している。

 

愛媛県庁/学校法人加計学園のコンプライアンスとガバナンスの確立等を求める決議

 

 その会見のやり方自体、批判はあったものの、加計理事長はこの問題に関して既に記者会見を行っている。一度行ったのだから、もうやらないと突っぱねることも出来たように思うが、実際にはそうならずに記者会見を行ったのには、もちろん理由がある。

 

 それは、加計学園は愛媛県から様々な支援を受けることが予定されているからである。端的に言えば、「お金を出してもらうところの意向は無視できない」ということだ。

 

 

どうしても補助金が必要

 

 加計学園への主な支援は補助金である。

 

www.ehime-np.co.jp

 

 既に約14億円が3月の県議会での補正予算可決を経て、5月には加計学園側に渡っている。この約14億円については、学園への不信感から、支出前に凍結を検討したとの報道もあった。

 

mainichi.jp

 

 

 補助金を支出する最低条件として加計理事長の説明がいるのかという記者からの質問に対して、中村知事は、「というか、先ほど申し上げましたコンプライアンスの問題とガバナンスの問題というのは、最高責任者の範疇(はんちゅう)に入ってまいりますので、これはしっかりと説明して、問題ないということを言っていただけたらいいのではないのかなあというふうに思っています。」と答えている。

 

愛媛県庁/愛媛県職員と加計学園関係者との面会に関する知事共同取材(6月4日)の要旨について

 

 

 先日の会見の中で、通り一遍な回答に終始する加計理事長に対して、記者から説明をするつもりもないのに何故会見を行っているのか質問された。それに対する加計理事長の応答は、まさに上記の中村知事の発言をなぞるもので、「コンプライアンスの問題とガバナンスの問題」に応えるためと発言している。

 

 加計学園に、愛媛県は約31億円の補助を予定している。これは元をただすと、今治市が総事業費の約半分にあたる約93億円を補助することを決めており、愛媛県はその3分の1を補助するということによる。この約93億円の補助というのは、自治体が大学や学部などの開設時に行う補助の額とは最大規模のものである。

 

www.asahi.com

 

 

 この多額の補助金を加計学園は当てにしているのだ。だからこそ、愛媛県側から説明を求められれば、不十分なものであっても、加計学園側はその要請に応えざるを得ない。

 

 

厳しい大学経営の中での獣医学部新設

 

 これは加計学園に限ったことではないが、特に地方の私立大学の経営は楽ではない。一番の理由は少子化により入学学生の確保が年々困難になっていることによる。入学者が減れば、それは収入減となり、経営を厳しくする。

 

 さらに、大学間の学生獲得競争も激しい。資格が取得出来て就職に直結するような学部や最新のテーマを扱い注目を集めそうな学部を新設したりと、学生の関心を引くための取り組みをどの大学も行っている。

 

 厳しい経営と学生獲得。この二つの課題を同時に解く方法が公的支援を受けた獣医学部新設である。


 加計学園問題が話題になったときに強調されたように、ここ何十年と獣医学部の新設は封印されてきた。獣医学部は一定の人気があり、新設されるとなれば学生が全国から集まることなる。さらに、医療系の学部は他の学部と比べると偏差値が高く、より優秀な学生を集めるという意味でも、大学の中にそのような学部を置く意味は大きい。


 新たに獣医学部を開設することが出来れば、それは大学の経営にも資するところが大きいと判断した。これが加計学園が何年も獣医学部新設に動いてきた理由のひとつであろう。

 

 ただし、獣医学部の新設には費用を要する。他の学部とは違って、新たな施設の建設も必要となり、用地の確保も必要とされる。そこで、自治体から補助金という支援を引き出すことが試みられるのである。よく知られているように、加計学園は今治市から用地の提供も受けている。


 大きな補助が得られれば、それで負担は軽減され、経営をより厳しくするようなことがない。学生を獲得しつつ、費用は安く抑えられる。加計学園の経営ということを考えたときに、それは願ったり叶ったりである。

 

 

資金の流れに注目せよ

 

 加計理事長が大学における教育もさることながら、学園の経営について考えていることは、今回の県の要請に基づいて記者会見を行ったことからも明らかであろう。その経営判断から、これまで何が行われてきたのか。そういう観点から見ると、加計理事長の行動の一端も見えてくるというものである。


 安倍総理との親密な関係もあって、かえって加計理事長の言動は読み解きにくくなっているが、いわば「金儲けをいかにするのか」というところに注目すれば、見えてくることがあるのだ。


 この問題の核心に迫るためには、資金の流れの部分に焦点を当てることが有効であると言えよう。

 

 この加計学園問題は手続に疑念があるだけではなく、愛媛県や今治市が行う補助と深く関係しており、決して有耶無耶にして良い問題ではないのだ。貴重な税金が投入される事案につき、その顛末について等閑にしてはならない。